10
腰を落とし、半身になる。
電磁警棒――あるいはスタンバトンとも呼ばれるそれを構えたのが合図だった。敵は身体をばねの様に縮めると、一足飛びで距離を詰めた。質量の存在を忘れさせるほどの、凄まじい初速。見て考えるのでは遅かった。山葉は敵の初動と同時に動いた。
直線に繰り出されたナイフの横っ腹にスタンバトンの放電部分――レールがぶつかり、銀の食器を床に叩きつけたような反響音が空気を震わせた。そうして軌道をずらされ、敵の微細振動ナイフが宙を切る。山葉は返す刀で頚部を狙い、斜め下から切り上げた。敵は即座に反応し、首を反らす。シールドにレールの端がかすり、さながら擦り付けたマッチ棒のように雷撃の火花が散った。直後、山葉は反撃の空気を感じて重心を後ろに引く。
だが、それは悪手だった。敵は身長差を活かして懐にもぐりこむと、腹をめがけてブレードを薙ぐ。
山葉は間一髪でレールを合わせ、反撃に移ろうとする。だが弾かれた勢いのまま、敵は体を捻っていた。そのまま、裏拳の要領で頸部を狙う。もう一度防ごうとするが、二つの金属が触れる寸前、軌道が一気に変化する。
(しまっ……)
上体を逸らそうとするも、間に合わない。左胸から右腰骨にかけて、レインコートごと、一線に切り裂かれる。ばちん、と音が鳴る。選択止血層が強化服の損傷を感知し、止血帯を張ったのだ。
「ぐぅっ」
衝撃に山葉の動きが一瞬止まる。その隙をついて、敵は姿勢も低く飛び込んでくる。
引いたら潰される。そう直感すると、山葉は振り下ろされた一撃を真っ向から受け止めた。ふっ、と腹筋に気合を込める。そして、全身の力を使って押し返す。微細振動によってごりごりとレールは削れ、電光の絡んだスパークが爆ぜ散った。金属が焼ける臭いがエアフィルター越しにさえ感じられるようだ。
しかし――動かない。体格で遥かに勝っているというのに、押し返すどころか、完全に力負けしている。まるで、石柱を相手に組み合っているようだ。
山葉の顔が歪む。今頃になってその理由に気付いたのだ。敵は間違いなく体組織の大部分を人工物と換装している。炭素繊維を利用した人工筋肉に、それに耐えうる金属骨格、そして重要な臓器をカバーするプレート群――それらは実在する技術だ。民間軍事会社である《タブラ・ラサ》でさえ、負傷兵の治療のため、そういった膨大なノウハウを持っている。
どうすればいい……。
こめかみに汗が滲む。
敵の微細振動型ナイフなら、強化服の防護層などあってないようなものだ。十分な速度と重さを乗せればたった今、身をもって思い知ったように、防刃、防弾、耐熱、耐衝撃層の全てを溶けたバターのように切り裂いてしまう。
時間にすれば一瞬――しかし気の迷いを敵は見逃さなかった。力の方向を変えて刃を滑らすと、無防備に揺らいだ山葉の上体めがけ、回し蹴りを放った。ブレードだけに注意を集中させていた山葉は、あっけなく側頭部に直撃をもらう。低い衝撃音が直接鼓膜に伝わり、きぃん、と耳が鳴る。視界が二重にぶれる。頚部のアブソーバーでも衝撃を吸収しきれなかったのだ。頭の芯がくらくらと揺れて、急に腕が重くなる。そこに休む間もなく、敵の追撃が繰り出される。狙いは心臓だった。
かわせない――そう悟った山葉は、反射的に腰を落とした。
鎖骨下に刃が深々と刺さる。
肉が、骨が、神経が、微細振動で削り取られていく。
視界が暗転するほどの激痛。自分の口から漏れ出る絶叫は、まるで他人のもののようだった。思考は働いていなかった。ただ反射的に敵の腕を掴みながら、山葉は電磁警棒を振り上げた。それは偶然、腋下――強化服の防護層が薄い位置に当たった。同時にレールが青の閃光を放つ。派手な炸裂音が響き、一瞬、敵の動きが硬直する。唸るような雄叫びを上げながら、山葉は渾身の前蹴りを放った。ブーツの先端がみぞおちに直撃する。ずるりとナイフが抜け、敵は背後の窓に激突した。フェイスシールドがガラスにひびを作る。
「はぁっ、はぁ、はぁ……」
HMDの表示に目をやる。気付けばバッテリーの残り時間が六〇秒を切っていた。敵はうつ伏せになって倒れている。だが追撃しようにも、足に力が入らない。微細振動が食い荒らした傷口から生温かい液体が溢れている。選択止血帯がまるで意味をなしてないらしい。ちかちかと視界は明滅し、がくがくと膝は震えている。
意識の鏡片に一瞬、絶望の文字が浮かんだ。駄目だ、とても勝てる敵じゃない。ちくしょう、いったいどうすれば――
(どうすれば、だって?)
そこでこみ上げたのは、発作のような笑いだった。低音の、冷ややかな、愚か過ぎる自分への笑い。
お前は馬鹿なのか。勝ち目がないなんて、そんなの最初からわかっていたはずだ。わかっていて突っ込んだのだ。そのくせ、自分の命が危機にさらされると前言撤回、めそめそと後悔し始めるのか。つまりお前はなんだ、やっぱりあの場で逃げていればよかったと思うのか。
俺は見捨てない? 見捨てたくない? 大変結構。だったらほら、そこのダブルベッドの脇を覗いてみろよ。クライアントが腹に風穴空けて、死に掛けているぞ。あれじゃあ今から治療を始めたって、助かるかどうか、怪しいもんだ。それでどうなんだ、無視していればよかったのか。灰は灰に、塵は塵に、怪我人は死に――そういうことなのか。それに見てみろよ、HMDの隅。弱ったな、もう、時間がないじゃないか……。
《残り五〇秒》
トリガーがみしみしと軋むくらい、スタンバトンを強く握り締める。駄目だ、まだ諦めるな。考えろ。考え続けろ。普通に戦っても勝てないのだ、せめてあのナイフをどうにかしなければ。
だが効果的な案はなにも思い浮かばない。そうして焦燥感だけが募っていく。胸の傷を押さえる右手の指には力がこもり、自然と歪な鉤を描く。
ふと、山葉は気付いた。鉤はなにかに引っ掛かっていた。それは腋下のD字型リングから吊るされたナイロンタイだった。先の戦闘で、気絶させた襲撃者を拘束するのに使ったものだ。
一本むしりとる。右手にナイロンの結束バンド、左手にハンドガード付きの電磁警棒。なんとも奇妙な組み合わせ……。
そして次に山葉の目は、自分のレインコートに向けられた。切り裂かれた部分が細長い帯のように裾から垂れ下がっている。
《残り四〇秒》
敵が腹這いのまま、ゆっくりと床に手を当てる。
山葉には思いついたことがあった。おそらくは苦し紛れで終わる、絶望的な思いつき。しかし他に方法がないのなら、やってみるしかなかった。
決断すると、彼は速かった。
《残り三〇秒》
敵は膝立ちになった。手にはナイフが握られたまま、毒蜂の羽音を響かせている。
山葉が走りだしたのはそのタイミングだった。逃げるわけでもなく、敵に一直線、左手には電磁警棒。なにも変わっていないように見える。傍目には自殺志願の特攻のように見える。対して、蜂は羽虫を恐れない。立ち上がると、悠々とそれを迎え受け――
だがどういうわけか、まだ距離を数メートル残した位置で、山葉は攻撃のモーションに入った。加速を乗せ、床が振動するほど右足を強く踏み込むと、ぎゅっと腰を捻り、水平方向、真横から薙ぐように左腕を振った。すると、彼の手元から白の帯が伸び、ぴん、と弧を描いて敵に襲いかかった。
それは帯状に切り取られたレインコートだった。先端にくくりつけられているのは電磁警棒。トリガーが結束バンドで絞られ、青い火花が絶えず、毒液のように迸っている。それは今、鞭のように振り回されていて、遠心力をたらふく抱え込み、唸り声を上げ、狙いたがわず敵の手首に噛み付いた。
雷撃の火を吹き、ナイフを部屋の端まで弾き飛ばす。敵が怯む。山葉は攻撃の手を緩めない。手首のスナップを利かせて手繰り寄せると、もう一度振り回した。次は右膝に直撃し、敵が片膝を着く。更にもう一度。今度はバックハンドで振る。左肩に命中し、炸裂音。
《残り二〇秒》
頭が痛い。出血で視界に黒い霧がかかり始めている。ハンドガードにくくりつけた部分が、千切れかけている。山葉はスタンバトンを手繰り寄せると、直接握り締めた。敵は膝立ちで、電撃のショックに眩んだのか、がっくりとうな垂れている。山葉は傷を押さえながらふらつく足取りで近付き、警棒を振り上げた。狙うはうなじ、強化服とフルフェイスシールドの接合点。
しかし、叩きつけようとしたまさにその瞬間、敵が顔を上げた。腹に蹴りが叩き込まれる。吹っ飛ばされた山葉は警棒を取り落とし、その顔には
《残り十五秒》
隠しきれない焦りが浮かぶ。警棒は敵の足元だ。拾えない。そのとき彼は、自分がウォークイン・クローゼットの近くにいて、その間にいた敵――障害物がなくなっていることに気付いた。そしてクローゼットの前にはESGが落ちていた。敵の装備している強化服越しで効果を望めるかはわからない。それでも藁にもすがる思いで、彼は斜め後方へ走り出す。視界の隅、《残り十秒》という赤い表示が恐ろしくくっきりと見える。前方へ跳んで転がる、同時に敵の方へ反転しながら、床に手を伸ばす。
左手。
掴んだ。
助走の勢いを殺しきれず、クローゼットの中に背中から突っ込んでいく。衝撃を予期し、怪我をかばおうとする。だが彼を受け止めたのは、痛みにはほど遠い、柔らかな感触だった。
(え……?)
山葉の目が、驚愕に見開かれる。
強化服越しでもわかった、それは衣類ではない。熱い体温。
振り返る。
山葉に押し潰されるようにして、気を失っている子供がいた。
長い黒髪の少女。
それを認めた瞬間、迫り来る時間も、敵の存在も、山葉の意識から消え去った。三ヶ月前、山葉の脳の片隅で、細胞は両手掬いの黄金を抱えたまま溺れてしまった、手にした物の価値さえ知らず。そして今、溺れた細胞の一片が息を吹き返したのだった。
先ほど見たデジャヴ――その続きが、よりはっきりした感覚で蘇る。
霧の中、追われるように走る二人。寒さにかじかんだ小さな手を引く山葉。やがて手の主はつまずき、山葉は足を止めて振り返り、顔を泥と埃で汚した、やせっぽっちの少女を抱き起こす。難民の彼女の胸にはつぎはぎだらけのぬいぐるみ、息を切らし、喉をからし、疲れた人々を突き飛ばし、目指す先は風穴洞。時間がなかった。空爆が迫っていた。なのに対空レーダーは眠たい無反応、空は赤霧の鱗にさえぎられ、崖を螺旋状に掘り抜く古の天空回廊には伸び切った難民の列、単調な歩みが緩慢な死の上で“くだ”を巻く。だが少女は知っていた。これからなにが起きるのか、彼女は
(未来を)
知っていた。
敵が床を蹴る音が響いたのはそのときだった。我に帰った山葉は前方を振り返る。ESGを構え、照準を合わせようとする。しかし遅すぎた。
ピーーーー。
警告音。バッテリー切れ。
同時に光量補正がなくなり、視界が黒一色に潰れる。急激な明度の変化に視力が追いつかない。ほとんどノイズだけになっていたクーリロワからの通信も、ぶつりと切れる。頭部に重い衝撃が走る。骨が砕けるかと思うほどの力で足首が掴まれ、クローゼットから投げ出された。床を転がり、腹這いに倒れる。
「ぐ……うぅ……」
袈裟切りでつけられた傷はそれほどひどくない。しかし胸をざっくりと抉る刺傷からは、血が流れ続けている。今や出血は、無視できない量まで達していた。闇に閉ざされた視界で、山葉は四つん這いのまま移動する。呻き声を漏らしながら、敵から距離を取ろうとする。
だが、数歩離れたところで別の襲撃者の死体にぶつかり、重なるようにして転んだ。その無様な様子を尻目に、敵は部屋の隅に転がった微細振動ナイフを拾う。次の一撃は山葉に致命傷を与えるだろう。
山葉はぜいぜいと荒い息を吐きながら移動する。手探りで窓際まで這い進むとカーテンを掴み、身を起こす。同時に、窓からかすかな月明かりが入ってきた。振り返れば、敵が近付いてくるのがはっきりと見える。
山葉はESGを手放していなかった。銃口を向け、連射した。やはり電撃のダメージが蓄積しているのだ、数発が敵の腹と脚に命中する。しかしその歩みは止まらない。ESG弾の針程度では強化服を貫通できないのだ。
マガジンにまだ数発残っているにもかかわらず、まるで観念したかのように山葉は銃を下げた。そしてカーテンを掴み、もたれかかったまま動きを止めた。その眼前に敵が立つ。ナイフが月光にきらめく。腰だめに構え、人工筋肉に溜めた力を一閃、水平に解き放つ。
山葉はかわさない。かわさず、ただ握っていたカーテンの裾を離した。支えを失った身体が、ずるっと下がる。首を狙ったナイフは目標を外れ、爆発するような凄まじい音を立てながらフルフェイスシールドに命中した。文字通り山葉の目と鼻の先、ナイフの先端がHMDを真横に引き裂いた。目元に咲く満開の火花で、視界はほとんどきかない。だが、もう見る必要はなかった。ナイフが刺さっているのなら、それを持つ手の位置は決まっていた。
歯を食いしばると、右手に隠し持っていたダガーナイフを敵の手首に突き立てる。転んだとき、襲撃者の死体からくすね取ったものだ。防刃層のせいで深くは刺さらないが、皮膚をうっすら突き破った感触があった。そのまま逆の手でESGを構える。反射的に、敵が顔を背けようとする。
山葉の狙いは違った。ESGを向けたのは、ダガーナイフに対してだった。
ブレードに銃口を押し当て、残った弾を撃ち込む。電撃が刀身を通り、直接皮膚へ、皮膚から金属骨へ、そして金属骨から全身へと伝わった。それは不随意の痙攣を敵の四肢に引き起こす。
敵の身体から力が抜けた。ただの強化樹脂となったHMDを焦がすスパークが薄れ、ナイフが外れる。倒れる、と思った。倒れてくれ、と思った。だがそんな予想を裏切って、敵は踏みとどまった。山葉は背筋がぞっとするのを感じた。いったいなんだ、この執念は……。
たじろぐと同時、敵がナイフを切り上げる。咄嗟にESGのバレル部分で受け止める。金属が噛み合い、不協和音が鳴り響く。敵に最初のような力強さはない。しかし微細振動は銃身を少しずつ削り、山葉の胸元へ向けて、着々と距離を詰めていく。
まずい。刃先を逸らせない。
振動がバレルに切れ込みを作っているのだ。閃光が咲き乱れ、真昼の太陽が眼前に浮いているようだった。目が痛い、呼吸が苦しい。腕と脚の筋肉が震え、膂力で負け始める。胸の出血は亀裂を伝う雨水だった。ブーツの底に血溜りを作っていく。視界の四隅には、黒い虫が蠢き始めている。《死の虫》だ、と山葉は直感した。それは多数の節を持つ唇脚類のようにざわざわと這い寄り、わずかとなった視界を食い散らかす。
(もう、これ以上は……)
絶望の中、救いを求めるように視線を動かしたときだった。割れたHMD越し、火花の明かりに照らされ、一瞬、敵と目が合ったような気がした。どういうわけかその瞬間、相手の力が弱まった。理由はわからない。が、これが最後のチャンスだと彼は悟った。
薄れ掛けた意識に鞭を打つ。すると《死の虫》が一瞬、気勢を弱める。
肉体は最後の命令を忠実に実行した。銃のグリップを、右手も添えて、思い切りひねる。水晶を砕くとこんな音が鳴るのだろう――そんな衝撃が鼓膜を震わせ、バレルが弾け飛ぶ。力の対象を失い、敵のナイフが宙を泳ぐ。山葉はその腕を巻き込むように反転した。
奥歯を噛み締める。震える足で、床を蹴る。
背負い投げの要領で、敵の体が宙に――二階の窓の外に投げ出された。
ひび割れたガラスが砕ける音。遅れて、重い落下音が聞こえた。
続いて、静寂。
長い静寂。
「はぁ、はぁっ、はぁっ…………」
山葉はずるずるとその場に座り込んだ。フルフェイスシールドを脱ぎ捨てる。これ以上は戦えない、そう思った。失血がひどい。気を抜けば視界が螺旋を描いた。
しかしまだ失神するわけにはいかなかった。
男性クライアントが息絶えたことを知った後、山葉はウォークイン・クローゼットに歩み寄った。そして墨のような闇の中から、そっと少女の身体を抱き起こした。白のキュロットスカートに薄手の長袖、黒っぽいカーディガン――身なりは違うが顔立ちは同じだ。間違いない、と思った。この子なのだ。空爆を予知し、自分の命を救ったのは。
抱いた感触はあのときと同じように軽かった。そっとベッドに横たえ、怪我の有無を確認する。外傷はないようだった。寝息は安定している。だがやがて、なにか奇妙だと気付く。
彼女の髪が触れたベッドのシーツに、染みがついていた。暗がりの中、よく目を凝らす。それは大量の血だった。おかしい、と思った。調べた限り、目立った怪我はないはずなのだ。
少女の髪に手櫛を通すと、硬い欠片が指先に付着した。
白っぽく濡れ光っている。
(骨の、欠片……?)
心臓が激しく鳴っていた。心のどこかでは、理解していた。ただ、認めたくないだけだった。真っ青な顔でクローゼット内を調べる。閉まっていたもう片方のドアを開ける。
ああ、と呻き声が漏れる。
死体があった。
胸の膨らみが性別を教えた。顔はなかった。首から上が、そっくり消えていた。切断されたのではない、PBAで吹き飛ばされたのだ。
「そんな、嘘だ」
最初の射撃――それは狙いを外れ、クローゼットに命中した。
膝が震え出す。絶望的な気持ちでクローゼットのドアを見やる。
「嘘だ、こんなのは俺じゃない。俺のわけが」
ドアに空いた穴は、彼が撃った一発だけだった。
(ちがう、絶対ちがう……こんなのは、俺じゃ……)
膝から力が抜ける。吐き気がして、彼はその場で数度えずいた。
またいつかのように、山葉と少女を囲むのは死体だけだった。四つの死体。血塗れの部屋。にもかかわらず、鼻の奥で香るのは血ではなく、なにか懐かしい匂い。
姉の匂い。
甘く、古びた、麻薬の匂い。
ほどなくして、救援隊が到着した。




