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【3章】残された想いを

(1)――――

 どんな場所でも熟睡することだけが特技と思っていた私が、珍しく夜中に目を覚ました。

月の高さから見て……いや、よく分からないや。

 ただ外の暗さから考えても、夜が明けるにはまだ時間がかかりそうである。

 …まいったな…目が冴えちゃった。

 ランプを付けて起きていようにも、恐いくらい静かな暗闇が広がっている。

 このまま起き続けるのも、微妙な感じがする。

「…ん…?」

 突然、廊下からガチャンと物音が聞こえてきた。

「ひっ!」

 私は恐怖におののく。まるで時期を読んで私の心を見透かされたみたいで、気持ち悪い。

「なに…」

 誰かいるのだろか?

 私は布団から起き上がり様子を窺う。

 しばらく耳を澄ませていたが、何か起きる様子は――

「――!」

 今度は壁をドンドンと叩く音が響いてきた。

 泥棒?

 ……すこし寒気を感じつつ、私は音を立てぬよう扉を開いた。

 隙間から辺りを窺うも、灯り一つ無い廊下の様子はよく分からない。

 ようやく目が慣れてきたか……月明かりに照らされた廊下に、微かに小さな影がうずくまっているのを確認できる。

 やはり、誰かそこにいる。

「あ…の…」

 勇気を振り絞って私はそれに近付いた。と、

「ひぃぃぃ!」

 影は突然私の足を掴む。私は反射的に飛び上がった。

「……って…」

 むくりと起き上がった影は、よく見るとウィヅさんに…よく似ている。

「どうしたんですか、脅かさないでください!」

 私は息を整えながらウィヅさん声を掛けてみる。

 反応がないので、部屋からランプを持ってきて照らし出すと、そこにはあられもない姿が映し出された。

「ウィヅさん…あの」

 彼女自慢の長い髪は乱れていて、寝間着のボタンが外れていてる。もう少しで胸が直接見えそうなくらいである。

「うう…気持ち悪い」

 床に倒れたウィヅさんは私が見えていないのか、花瓶に向かってなにやら呟いていた。

 肩を叩こうと、さらに近付くと今度はお酒の臭いが漂ってくる。

「ウィヅさん…酔ってますか?」

 …まあこの様子だと聞くまでもなさそうだが、私はとりあえず尋ねてみた。

「そうです…酔っぱらいが酔っぱらって何が悪いんですか」

「……」

 こりゃまた…理解出来そうで出来ない返答が返ってくる。

なるほど…さっきの音はこの人が花瓶をひっくり返した音だったのか……私はようやく納得がいった。

「…とりあえず部屋に帰りましょうよ」

「嫌です。ここが私の部屋です」

 あの…意味が分からないんですけど…どうしよう、この人…

 困った。昔、正餐のワインで同じように泥酔した修道女は…仲間三人で担ぎ上げたことを覚えている。

 そして目の前の光景は、私では、とても手に負えそうになかった。

「とりあえず立ってください」

「ひどい、私が冷たい態度をとるから恨んでるのね!」

今度は太ももに抱きつかれた。ウィヅさんがわざとらしく泣き真似をしている。

 身動きが取れずに私は閉口してしまった。

「…どうしたの?」

 とうとう騒動を聞きつけてグリフさんが二階から降りてきてしまった。

「あっ……これは」

 ウィヅの姿を見るとグリフさんは慌てて目をそらしていた。

「…いや、目に毒です」

 私は慌ててウィヅさんの寝間着のボタンを締めた。

 いつもの彼女からは想像できない低いうなり声を上げ、子供のように服を着せられるとウィヅさんはうなだれる。

「だから……飲み過ぎだって忠告したんだよ…僕は…」

「えっ…」

 眠そうに目をこすりながらグリフさんは大きくため息をつく。意外な答えが返ってきた。

「うるさいです、一人で飲むのが寂しいって私を部屋に呼んだのはどこの誰ですか」

 ウィヅさんはがばっと立ち上がると、今度はよろめきながらグリフさんに詰め寄った。

「どこの公爵様ですかって聞いてるんです!」

 彼女は人差し指でグリフさんの胸板を突く。

 ついにこの酔っぱらいは自分の雇い主にまで絡み始めるようだ。

「ああそうだね、確かに僕が悪い」

 グリフさんはウィヅさんの両肩を掴み、くるりとその身体を回した。

「ということでジゼル、後始末よろしく」

「ふぇ?」

 まぬけな声を上げる私。

 軽く突き飛ばされたウィヅさんは千鳥足で私に飛び込んできた。

「ちょ…逃げる気ですか!」

「はは、そうさせてもらうよ」

 グリフさんは笑いながら階段を上がって自分の部屋に向かってしまった。

 おいおい…私にどうしろと?

「…はぁ」

 私は大きなため息をついて、ウィヅさんの耳元に口を近づけた。

「ウィヅさんも寝ましょうね」

「……はぃ」

 今度は彼女はぐったりと疲れたように私の腕にしがみつく。

 私は自分で歩く気のない彼女を引きずるように抱えて部屋へと連れて行った。

「入ります…」

「たらいまー」

 部屋の扉を開けると、そこもやはりお酒の香りがした。

 シーツや掛け布団がずり落ちていて、床にウイスキーの瓶が落ちている。お酒くさいのはこれが原因らしい。

 片手で布団を直すと、ウィヅさんをベッドに寝かしつける。

 眼鏡は机に置いて、瓶を拾おうと――

「…っ…」

 突然ウィヅさんが私の腕を掴んだ。

「もう…今度は何ですか?」

「…ぉ…ム?」

 ウィヅさんがぼんやりと私を見ている。と、私の頬が手の平で押さえつけられた。

「…ちがう…あなた…だれ」

 鼻と鼻が当たりそうな距離で酒臭い息をかけられながら、ウィズさんが目を細める。 

 酔っぱらいは私の服をくんくんと嗅ぎながら、また「ちがう」と呟いた。

「……ジゼル…ですけど…」

「うそよ……」

 いや…嘘って言われても…

 戸惑う私にかまわず彼女はかぶりを振る。

「あぁー!」

 今度はわけもわからず抱きつかれると、私はベッドに引きずりこまれた。 

「あれ…」

 ウィヅさん…泣いてる……?

「何で……何で…いないの」

「…?」

「どうしてここにいないの…」

 私はどうしていいか分からず固まってしまった。ウィヅさんはすすり泣きながら私を離さない。

いつの間にか足までがっちりと絡められて身動きが取れなくなってしまった。

「……うう…」

 こうなったら仕方がない。解放されるのを待つしかないようだ。

「何でこんな目に…」

 服越しに暑苦しさを感じる。私は彼女の酔いをすこし覚まそうと、手を伸ばしてベッド越しにカーテンを開いた。

 部屋に新鮮な空気と月明かりが流れ込んできた。

「…?」

 すこし明るくなった部屋の全景が望めるようになった。

 服は椅子にかけられているが、ゴミも下着もタオルも関係なく床に散乱している。

 机にはさっきのウイスキーだけでなく酒瓶が無造作に転がっていた。

 すべての光景を総括して一つの言葉が浮かんでくる。

「酒乱……」

 …彼女の……見てはいけない一面を見た気がした。


(2)――――

 まばゆい光に目を覚ますと、私はすこし混乱した。いつもと違う天井が視界に飛び込んできたからだ。 

「……ああ」

 どうやらベッドから抜け出せず、結局そのまま寝ていたらしい。

 首をぐるりと回すととうのウィヅさんはエプロンドレスに着替えていた。

「おはようございます」

 昨夜の騒動が嘘かのように、きりっとした表情で彼女が答える。

 寝ぼけ眼で辺りを窺うと、ちらかっていたゴミは片付けられていた。

「…あの…昨日は見苦しい姿を見せてすいません」

 ウィズさんは表情一つ変えず一礼すると、たぶん部屋から持ってきてくれたと思う私の服を差し出してくれた。

 こういう気の使い方は普段彼女らしい。

「すこし飲み過ぎたようです」

「すこし…ですか…」

 さも当然のようにのたまうその言葉に、私は呆れてものが言えなかった。

 自分が何したのか覚えてるのかな……

 私はお酒飲んだことが無いからよく分からない…

 ただ、たぶん何事もなかったように振る舞っているのだと信じたい。

 私もとりあえずそれに合わせることに決めた。

「髪、どうしたんですか」

「これは…エリゼさんが」

 私は髪を押さえながら答えた。

「そう…」

 すこし顔をしかめると彼女は部屋を出て行った。


(3)――――

「…」

 自分の部屋に戻り着替えると、庭いじりの道具を戸棚から出す。鏡に映る自分に戸惑いながらも今日も仕事が始める。

 ただし…庭の手入れといっても限界がある。

 それに注文した物が届くまでは、買ってきた種にも限りがある。

 今日は珍しくこの館にお客さんが来て……なんか恐そうなお爺さんが私の姿を見て怪訝そうにしてたけど…その人の案内をする仕事があったが、時間はそんなにつぶれなかった。

 あっという間に買ってきた種は無くなってしまった。

私は作業をほどほどに切り上げると、手持ちぶさたに仕事を探しに館内をうろついた。

 そう、やろうと思ったことはある。ただ、ちょっと不安である。

 台所にいるエリゼさんに私の思い付きを話すと、

「それは助かります」

 と、あっさり許可をくれた。

 書斎に入り私は床に積まれた本を拾い始める。

皿洗いに掃除洗濯と、二人がやらせてくれない仕事に比べれば、本を並べるだけの簡単な作業である。

 まあ公爵が仕事をするために欠かせない部屋だから…うっかり本棚でも倒した日にはまた怒られるだろうが……

「ふぅ……」

 こういう地味な仕事は好きだ。気分がすっきりする気がしてくる。

 本は棚ごとに種類が分かれているようで、所々抜けている場所がある。

書斎で仕事をしてそのまま寝る人……たぶんグリフさんのために、小さなベッドも用意されていた。

「年度ごとに…っと」

 昨日の手伝いで、どこに何の本があるかは大まかに把握していたので、整理自体はテキパキと進んだ。

 さすがに農業とワイン生産で栄えている地域なだけあって、公国の財務記録の他は、ブドウやワインの生産量の記録に関する物が多い。

 他にも…街の人の氏名や家族構成などが分かる本もある。

 それらの本の重厚な装丁を見て、昨日今日入った私が、ここにいていいのかという気分にも少し襲われた。

 仕事とはいえ、整理するために中身をパラパラめくることに、軽い罪悪感もある。

「……あれ」

 ふと一冊の本に目が留まった。その棚には「寄付目録:教会」と書かれた本が横積みされている。そして…最近埃を払った跡がある。

 これはつまり……最近使ったということだ。

「私のために…」

 お金で免罪符が買えることは知っている。でもその額は到底自分に払えると思ってはいなかったので、興味はなかった。

 だから悪いと思いつつ興味本位で「自分の額」を見てみることにした。

「う……ぁ…」

 額面を見て絶句した。

 エリゼさんは骨董品一つといったが、そんなものではない。昨日エリゼさんと一緒に見た本に書かれていた会計目録の数字…たしかそれと比べても…平均税収のざっと二割は占めている。

「……なんで」

 それで自分がやってることって……ただの庭の手入れだけだ。どう考えても値するような話ではない。

「いや…でも…」

 頭をもたげる疑問が湧いてきた。

 今まで考えないようにしていたこと……そう…この家に迎え入れられたのは別の目的があるように思えて仕方がないこと――

 何やら恐くなって私は本を元に戻した。

「…何か変」

 私はかぶりを振ってもたげた考えを捨てる。

 心のどこかに嫌な気持ちを抱えながらも、棚の整理を続けていく。

 隣の棚には物語が置かれていた。これも…最近埃を払った跡がある。

「借りても……いいよね…」

 私はその本をテーブルの上に静かに置いた。

 そこには、どこにしまっていいか分からない誰かの日記が一緒に置かれている。

 後でエリゼさんにどうするか聞くことと、頭の中にメモ書きして、私は作業に集中した。


(4)――――

 切りのいいところまで整理がついて、食堂に行くと、夕飯までにはまだ時間があった。

 エリゼさんは好きにしていいと言う。

 毎日の仕事自体は何かを必ずしなくてはならないということでなく、まして他の二人が優秀なのでこうやって暇を持て余すことも、出来てしまう。

 今は休んでいいと言われたので、邪魔にならないように休憩をとる最適な場所に移ることにした。

 そこは自分の数少ない居場所である。

 裏庭のベンチで本を読む……うん、何か高貴な身分になったみたい。

 そんなちょっとした自己陶酔に浸ってみる私。

「ジゼル?」

 ギクっ

 私の身体がビクリとはねた。

「あっ……」

 声の主はグリフさんだった。

「何、読んでるんだい?」

 彼から見れば、今の私はさぼっているようにしか見えない。

「いや、その……これは、エリゼさんが休憩取っていいといわれたんで」

 グリフさんは笑いながらに私の隣りに座る。

「いいんだよ、君は無理に仕事はしなくても」

 屈託のない笑顔を私に向けるグリフさん。でもその言葉にはすこし引っかかった。

「……」

「…いや……」

 近い…し…

 それに私の胸に腕が当たってるし……

 これじゃあ昨日のウィヅさんと一緒だ…

 いや、使用人としてはこちらから距離を空けるのも失礼……だし?

「どうしたの、汗かいてるよ」

 グリフさんはハンカチを取り出して私の額を拭いた。見る限り、何か下心がありそうという感じにも見えない。

 私は無理矢理意識を本に向ける。

 確か……病気の女の子が寝ているところ……まで読んだ…

 いや……頭にそんなものは入らない。

 どうしたんだろう…私は異変に気がついた。

「あっ…」

 そう、グリフさんと話すことが辛くなってきたのだ。

「グ……グリフさん……」

「なんだい」

「この本はお読みになったことは?」

 本の頁を開いて渡すときに私は体勢を強引に変えた。

「ああ…ここに来たときに暇つぶしに読んだよ……どこにあったんだい、こんな本」

 グリフさんは私から本をひょいと奪い取り、頁をめくる。 

「そんなによくできた話じゃなかったよ」

「そうですか」

 グリフさんははっと、表情を変える。

「ごめん……これから読む楽しみ…減らしちゃったね」 

 大きく肩を落とすグリフさん。

 いや…そんなに落ち込まれても……

「相変わらず僕はだめだな」

「い…いえ、そんなこと無いですよ、ほら…むしろ無駄な時間を与えない優しさ?」

 突然、何だか知らないが酷く沈み込む彼に、声をうわずらせながら私は取り繕う。

「そう言ってくれると嬉しいよ」

 今度はぱっと明るくなって、グリフさんが笑った。

 あれ……そういえば、ここに来た時って言った?

 また言葉の一つに引っかかりが出来た。

「それはそうと、今夜は暇かい?」

 グリフさんは私の本をぱたりと閉じる。

「へっ?」

「用がないなら、今夜、僕の部屋に来ない?」

 ……ちょっ…

 とっさに目を合わせる。グリフさんは真剣に私を見つめている。

 私の顔面が紅潮していくのを感じた。

「そ…その…こ、困ります」

「えっ」

 グリフ、不思議そうに私の様子を眺めていた。

「いけないのかな…そろそろ覚えた方がいいと思うんだけど」

 私は小さく悲鳴を上げながら、後ずさる。

「いや…でも…私…男の人に喜ばれるような…その…」

「あっ…ごめん…そういうことじゃなくて」

 グリフさんは突然視線をそらして、気まずそうに頭を掻く。

「ウィヅの変わりに、君に夕食を給仕してもらおうかと思っただけだよ」

「あ……ああ、そういうことですよね」

 引きつりながら笑顔を作る私。

「はは、何か誤解していたかな」

 追い打ちをかけるようにグリフさんは私の頭をぽんと叩き、

「恐れ多くて…修道女を襲おうなんて度胸は僕にはないよ」

 と、私をからかった。

 

(5)――――

 日も暮れる頃、エリゼさんから厨房で給仕の注意点を聞かされる。

 そのこと自体は教会でやっていたことと変わりはない。

 上級の司祭や寄付者の貴族をもてなすために、修道女が食事を運び給仕する経験は私にもある。

 そういった意味では、慣れている仕事とも言える。

 もちろん、あまり笑えない失敗談も伴うが…

 食事を出す順番と片付ける順番を書いたメモをエプロンに忍び込ませると、私は大きく息を吸った。

 他の人と違い、出が貧しい私は前菜と主菜の区別があまりよく分からないので、このメモが重要なのだ。

「まあ正餐ではないから、堅苦しくなくていいですよ」

 エリゼさんは配膳台に皿を並べながら優しく声をかけてくれた。

 これを持っていって、グリフさんが食べる見守り、順に片付けていく。

 うん、簡単な仕事である。

 もちろん手が滑らなければの話だが……って、相変わらず失敗前提だなぁ、私…

「グリフさんの好きなワインは……今日はお肉だから…っと」

 エリゼさんはぶつぶつ呟きながらワイン棚を物色している。  

 後ではウィヅさんが鼻歌交じりにサラダを作っていた。

 朝から顔を合わせていなかったが今日は少し機嫌が良さそうである。

「それにしても急にジゼルに給仕させるなんて…どうしたのかしらね」

 エリゼさんにはこの話は寝耳に水だったようだ。

「さ…さあ…私にはよく分かりません」

 私はウィヅさんをちらっと見て口ごもった。

 たぶん昨日の醜態はグリフさんも覚えているのだろう…

 本来、使用人と主人は食をともにすることはない。ましてや一緒に飲むことなんて、お堅い貴族が聞けば卒倒するような話だと聞いたことがある。

 まあグリフさんはそこら辺の戒律やら規則には緩いし、当人も認めるとおり一人で飲むのも寂しいからとウィヅさんに付き合わせるのは問題ないのだろう。

 でも…昨日のあれを許容するのは…さすがのグリフさんでも、緩すぎると思ったらしい。

 だから私にお呼びがかかったのだろうか?

「……?」

 エリゼさんも私と同じ方向を見ながら首をかしげていた。

「ウィヅは何か心当たりあるの?」

「いえ」

 彼女はあっさりと否定して、振り返らなかった。

 その姿にエリゼさんは苦笑いしていた。

 もしかしたら…エリゼさん…知ってる?

 ウィヅさんがなぜ平然としていられるのか不思議に思いつつ、私は自分の仕事に戻る。

 戸棚からコルク抜きを取り出すとグラスを一つ置いた。

「一応いつも通り用意したけど…

 グリフさんからお酒を勧められても、あなたはうまく断りなさいね」

 そう言いながらエリゼさんは配膳台にワインの瓶を置く。

「はい」

 私は表情が強ばらないよう、笑顔を作るのが精一杯だった。

「まあ…この家は使用人との関係がすこし雑ですけど…節度を守らなきゃお仕置きですよ」

 にこにこと曇りのない笑みを浮かべるエリゼさん。


挿絵(By みてみん)


「使用人が主人とお酒を酌み交わして、あまつさえ主人に半裸で絡むなんて下品なこと、あなたは勘弁してくださいね」

 引きつる私とは対照的に、ウィヅさんは笑顔でレタスを切り刻んでいた。

 いろいろな意味で恐ろしい人である。


(6)――――

「失礼します」

 配膳台を押しながら、初めてグリフさんの部屋に入る。

 グリフさんは机で何かを書きながら仕事をしているようだ。

 その部屋は長く窓が開けられていないかのように、少し空気がよどんでいる。

「ああ……そんな時間か」

 胸ポケットから懐中時計を取り出すと、グリフさんはそれに目を落とす。日はとうに沈んでいたが部屋は机のランプだけが灯っていた。

「よろしく頼むね」

 グリフさんは立ち上がると食卓へ移動する。

 私は手際よく壁に掛かるランプに火を付けると、椅子を引きグリフさんを座らせた。

 テーブルクロスを引いて、食事を……って

「……」

 前菜の皿が二つある。蓋をかぶせる前は一つしかないかったのに……

 混乱した私の動き止まる。

「向かいにもう一人分用意して…君も座って」

 グリフさんが助け船を出してくれた。配膳台の下の段にもう一組のナプキンとテーブルクロスがしまってある。

「…あの……」

「いつものことだから」

 まじまじと私は見つめられながら、前菜をテーブルに置く。

「いつもウィヅと一緒にご飯を食べて、その後飲むんだ」

「でも…主人と使用人は…」

 戸惑いながらも二つの皿を私は並べた。

 ウィヅさんがいつも一緒に食事をしていることは知っているはずなのに、何で私はそんなに困っているのだろうか……

 建前を前面に押し出して、何とか給仕に逃げ込もうとしている私に、この時私はまだ気付けていなかった。

「大丈夫、気にしなくていいよ」

 向かいにグラスを置くとグリフさんは自分でワインのコルクを抜いた。

「楽にして、僕も手伝うから」

「こ、困ります」

 今度は配膳台から自分で皿を取ろうとするグリフさん。 

 慌てて私はその手を止めた。

「私の仕事です」

 あまりに勢いよく手を握ったために、言葉も少し強い口調になってしまった。

 グリフさんは押し黙り、俯く。

「……」

 どうしよう…空気が重い…

 自分がいけないことは分かっている。

 いや、でも使用人と主人の関係はけじめ付けろってエリゼさんに言われているから、この態度もおかしくない。

 そもそも私が言われていたのは給仕の仕事である。

 取り乱して震える手を押さえつけて皿を取ると、何とか私は二人分の食事の配膳を完了させた。

 私の仕事が終わったの見ると、グリフさんは大きく深呼吸した。

「すっ、すいません」

 とっさに怒られると思って 深く頭を下げる私。

 何を謝っていいのか分からないが、グリフさんの気分を害しているのは間違いない。

「…違うね…僕が悪いんだ」

 グリフさんはそっと私の手を押さえた。

「…君の仕事を奪おうとした僕が悪いよ」

「……」

 彼はぐるりとテーブルの方に向き直り食事に手を付ける。

「まずはワインをもらえるかな?」

「……」

 私は何も答えられず、グリフさんの空けたワインをグラスに注ぐ。  

 グリフさんは行儀悪くそれを一気に飲み干した。

「君は何をそんなに怯えてるんだい?」

 肩がびくんと跳ね上がる。

「……そんなこと…ありません」

 自分でも嘘と分かるぐらい声まで震えてきた。

「…エリゼから守れといわれた手順が守れないのがそんなに恐いのかい」

 その手にはいつの間にか食堂でもらったメモが握られている。

 エプロンから抜き取られていたようだ。

「あっ…」

「それとも僕と一緒に食事をするのがそんなに嫌なのかな」

 そう言うとグリフさんは向かいの椅子を指した。

 少しその眉がつり上がっている。怒っていないようには見せているが、明らかに私に対して苛立っているようだ。

「……」

 泣きたくなるような気分で、私はグリフさんの向かいに座る。

 俯きながらも上目遣いでちら見すると、グリフさんは今度は少し困った顔をしていた。

「…嫌なんだね」

 その質問には答えられない。答えてはいけない。

 でもこれでは肯定したも同じだ。

 そう、正直…恐い… 

 自分がこの館にいる意味が、朧気と形作られつつあるからだ。

 今までも使用人の二人とは気軽に話せるようになったが、グリフさんには話しかけられないと答えることはない。

 その自分の行動の意味に遅れて気付く。

 何となく避けていたのは、そう……そういう意味だ……

「分かった」 

 突然グリフさんの顔つきが変わる。

 昨日見た無表情がそこに浮かんでいた。

「君が自分の意志を持つ必要はない」

「……」

 この人、何を言ってるんだろう……

 おかしいな……

 ここ最近…引っかかることだらけだ……

 私は視線を落とす。用意されたご飯はとてもおいしそうだった。

「いいから食べるんだ」

「はい」

 二人とも無言で食事に手を付ける。

 考えたくはないが、浮かび上がった違和感を整理していく。

 ここに莫大な額と引き替えに拾われる。とりあえずエリゼさんはその額のことは気にしなくていいと言われた。気まぐれで助けてくれたとグリフさんは言う……

 そう、もう少しで繋がりそうなのに……頭がその答えを拒んでいる。

 作法に気をつけながら私はフォークを手に取る。

 肉に手を付けるとグリフさんが私のグラスにワインを注いだ。

「…すいません…私は…」

「お酒は飲めるだろう?」

 有無を言わさぬ口調に、私に選択肢はなかった。 

 仕方なくグラスを口に付ける。お酒を飲むとどうなるか、昨夜ウィヅさんによく見せつけられているのだが、もうどうすることも出来なかった。

 酸っぱい味が舌を包む。とても、おいしいとは思えなかった。

「…」

 何か変な雰囲気である。

 グリフさんは戸惑う私に小さな笑みを向けている。

 つられて私は引きつった笑顔を返す。

「そう、それでいいんだ…」

「……」

 やっぱり…いつものグリフさんと違う。教会から追い出された後、街の酒場でこんな風に男性に口説かれたことがあったが……それともちょっと違うような……

「僕になにか言いたいことがあるのかな」

 私は自分がグリフさんをずっと見ていたことに気付いた。 

「……疑問が頭をもたげて気持ち悪いんです」

 デザートを食べながら私は顔を上げる。 

 問いかけたい言葉が自然と出てきた。

「グリフさんは……何で私にここまで…してくれるんですか」

「……どういうことかな?」

 突然、声が低く落とされた。警戒したその声に私は息を飲む。

 でも…聞かないと…もうここにいるのが辛くなる…

 そう…あの時と……ウィヅさんとグリフさんの関係を聞いたときと同じだ。

 勇気を持って私は、次の言葉に繋ぐ。 

「教えてください…この国の税収では、すこし大げさな金額です」

 彼はハッと目を見開いて、私を睨みつけた。

 答えは返ってこない。

 もう少し直接聞いた方がいいだろう。

「…私に……何をさせたいんですか」

 私の言葉にグリフさんは大きくため息を付いた。

 一種、悲しげな表情を浮かべると、

「いつまでも隠せるとは思っていなかったよ」

 と、つぶやき、自分でワインを注ぐ。

「そう、ただの使用人に払える費用じゃない。

 君には別のことをしてもらいたいから、ここに入れたんだ」

 覚悟していたとはいえ、その言葉に私は衝撃を受けた。

 意味することは一つである。 

「分かりました」

 そう…初めから拒める立場ではない…何せ、私を「買って」くれた人なんだ…

 私はフォークを置き、気をつけの姿勢のまま目を閉じる。

 心の中では必死にそういうことじゃないと否定していたさっきのグリフさんに、嫌気がさしていた。

 どうせ…男の人なんて…考えてることは一緒だ…

「待った、勘違いしないで欲しい」

「…」

 そう言われてもこの状況で何が違うと言うんだろう。 

 いい加減、煮え切らない態度にとうとう腹が立ってきた。

「いつまで紳士ぶるんですか!」

 私はやけくそで立ち上がると引きちぎるように胸元のリボンを緩める。

「私だって子供じゃないです。

 教会を追い出されてから…街でいろんな光景を見てきました」

 その声は、いつの間にか叫び声になっていた。

 もしかしたら…涙すら浮かべていたかもしれない。

「……」

「街から追い出された女や子供を金で売り買いする市場だって知ってます

 私をあんな額で買って、他に何をしたいんですか!」

 やはり不覚にも涙がこぼれてくる。

「馬鹿にしないで、抱きたいなら抱けばいいじゃないですか!」

 グリフさんがくすりと笑う。

 彼はポケットから何か…鍵をとりだししゃくり声を上げる私に投げ渡してきた。

「君を抱こうなんて、そんな気にはなれないよ」

 かーっと頭に血が上る。

 まるで眼中にないとでもいう言い方だ。

 彼は手を伸ばし、私の乱れた髪を直す。

「君はただ、彼女の変わりにそこで笑ってくれれば、それでいいんだ」

 私を置いてグリフさんは、廊下に出ていった。


(7)――――

「……まあ」

 エリゼさんは苦虫をかみつぶしたような表情で椅子に座る私を見ていた。

 ウィヅさんは相変わらずの無表情を崩していない。

 二人が部屋に飛び込んできたとき見せた顔は、こうも対称的だった。

「僕はもう寝るよ」

 そう言うとグリフさんは追いやるように私の肩を掴み二人の方に歩かせる。

 私は涙が止まらなく、それに、何で泣いてるかも分からず当惑していた。

 抱く気がないと言われて悔しいのは確かだが、なぜ悔しいのか分からない。

 それ以上に、もっと恐ろしい言葉を聞いた気がする。 

「ジゼル…」

 戸惑いながらも、エリゼさんは私を優しく抱きしめてくれた。

 急に自分が惨めになった気がする。

「…」

 背後では食器を片付ける音が聞こえる。

 こんな状況で淡々と仕事が出来るのがウィヅさんのすごいところだ。

「行きましょう」

 私の背中を押すように、ウィヅさんはみんなを外に連れ出した。

 食堂に戻ると、ようやく私は落ち着きを取り戻してきた。

 締め付けられるように苦しかった息が少し楽になってくる。

「何があったんですか?」

 すこしきつい口調でウィヅさんが問い詰めてくる。

「何かグリフさんに失礼なことでもしましたか」

 不信感を隠そうとしない口調に、また私の涙がぶり返してくる。

「まあまあ、泣いてる女の子をいじめないの」

 間に入ったのはエリゼさんだった。

「それに…あなたももう察しは付いてるんでしょ」

 ひょいと私の手から鍵を取り上げると、指先でくるくると回してみせる。

 ウィズさんは顔をしかめた。

 確認するように私のエプロンドレスに手をやると、結び目をじっと見る。

「本当に何もなかったんですね」

「そう…残念なことにね」

 私の口元が歪んだ。

「……」

 何か酷いことをさらりと言われている気がする。

 エリゼさんは私と目を合わせようともしない。その代わりにおもむろに私のエプロンだけを器用に外すと、 

「ジゼル、今日は寝なさい。あなた…疲れてるでしょ」

 とぽんと肩を叩いた。

 いつもなら優しいと感じるところだが、今はその態度に殺意すら覚えんばかりに私は心を揺さぶられていた。

「…だまって…」

 私はひと言呟いた。

 今、初めてエリゼさんに反抗した気にする。

 二人とも私の口調に驚いたようで、どうしていいか戸惑っている。 

 だが……かまうものか。

 私の思考が、遅れて二人の言葉を処理し始めた。

 そう…「残念」にも、何も無かったのだ。

 まるで私が……情婦として扱われた方がよかったといってる人に、今は気なんか使いたくは無い。

「嫌って……あなた」

「ちょっと知りたいことがあります」

 私は立ちすくむ二人を後目に、頭のリボンを外してそのまま床に落とした。

 よろめく足下は、自然と書斎に向かっていた。


(8)――――

 そう、答えは初めからここにあったんだ。

 形にならない答え、違和感……みんなが私を見る目…… 

 グリフさんの言った「彼女の変わり」が答えだ。

 書斎には、確かまだ片付け終わっていない本の山がある。昨夜髪を切ってもらったときに見つけ日記は、そこに置いたはずだ。

 読むのは悪いとすぐ戻したのだが、ちらりと見えた日付は半年以上前のもので、頁はまだ本全体の半分と過ぎていないものだった。

 そこに、その時感じた違和感の正体が分かってきた。

「…」

 まだ書くことの出来る日記が、うずたかく積まれた本の山に放置されているのだ。

 私はその表紙をめくる。

 約一年前の日付からその日記は書かれていた。


(9)――――


大公歴四八五年三月三一日

 もう何日同じ天井を見ているのか分からない。

 きっかけは身体の力が突然抜けて、階段から落ちてしまったことだった。

 足は見る間に腫れていき、あっという間に体重を載せることが出来なくなってしまった。

 辛い日々が続いている。

 最初は落ち込む私をからかい半分に「おっちょこちょいね、あなたは」と笑うウィヅの口数が最近少ない。

 嫌な予感はどうやら当たりのようだ。

 身体全身が芯から痛む。骨がきしむような感覚でよく眠れない。

 今日もベッドに横たわったまま、ただ過ぎる時間を過ごしていた。


四月三日

 今日、ウィヅが街の司祭を呼びつけた。 

 あの娘は必死に表情を隠そうとしていたが無駄な努力に見えた。

 目を腫らし、隈を作っているのは誤魔化せない。

 あの娘は知っている。私の叔母が亡くなった時の様子を私から聞かされていたのだから。

 そう、同じである。身体の骨という骨が痛み、衰弱して死んでいく。

 我が家に伝わる知られざる呪いといってもいいだろう。それが私の番ということだ。

 代々誰かがそうやって死んでいくのだ。

 一族に一代に一人だけ。

 それはまるで悪魔に捧げる生け贄のようである。

 どうしたらいいのか考えられない。

 これは、悪い夢なのかもしれないと思うと、ほんのすこしだけ楽になる。


五月二十五日

 これは受け入れるべきことなのだろうか。

 エリゼに抱えられ客間に移ってみた。暇つぶしにピアノを弾こうとしたのに、手が動かない。あげくに、座ることすら辛いなんて、考えられない。 

 どうしてこんなことになったのだろうか、自分の体が自分の物ではないようなのだ。 


六月十日

 庭もいじれず、ピアノも弾けず、ただ寝るだけの毎日に苛立ちを感じる。

 動くことがもどかしい。体中の痛みは消えない。

 どうして私なんだろう。


六月十五日

 グリフが自分の家での仕事を終えて返ってきた。

 エリゼからの手紙で話は伝わっているらしい。声を殺して私を抱きしめる彼に、私はひと言も答えられなかった。

 今日一日は、エリゼやウィヅの変わりに彼が私の身の回りの世話をしてくれるといってきた。一連の出来事で使用人にかかる負担も大きかったようだ。

 ウィヅが熱を出して倒れたという話を聞いた。

 彼女の変わりにグリフが私の身体を拭くという。情けないと思いつつ、甘えることにした。婚約者なら、それぐらい許されてもいいだろう。

 やせ細った身体を預けながら、私は彼と公国のための義務に費やす決意を伝えた。

 

六月十七日

 覚悟はしていたのだが、努めを果たすことはとても辛い。気絶するような痛みが私にのし掛かる。

 それ以上に、気を使いながら私の身体に触れる彼が痛々しく悲しい。

 こんな情事に彼が満足できているとも思えない。

 だが、これは私の我が侭でもあり、義務でもあるのだ。


八月二日

 かなりの期間、日記を書くことを止めていた。何も日常に変化がないからである。

 そう、こうしてここに日記が書かれるということは、変化があったのだ。

 医者がうれしい知らせを伝えてくれた。

 「ご懐妊です」という言葉を聞いた私は、気が触れたみたいに絶叫したらしい。

 よく覚えていないが、あの日から続いている生きていることへの後悔が、すべて喜びに変わったんだ。おかしいといわれても、叫ばずにいられようか。


十月四日

 新しい命が生まれるその日まで、私は生きていられるのだろうか。

 せめて十六歳の誕生日まで生きることが出来れば、この子を守ることで出来よう。

 寒くなるにつれ、日に日に体調が悪くなる。不安だけが私の心を占めている。

 一日を通して疲れて眠り続けることも多くなった。あれだけ大好きだったピアノも、最後にいつ触ったのか思い出せない。いや、そんなことはどうでもいい。一日中寝ていようが、身体がどんなに痛もうが、生まれてくる命を守り抜くまで身体が持ってくれれば それでいい。


(10)――――

「……え…やだ…」

 日記がそこで途切れていた。胸がつまるような思いで私は頁をめくる。

 よかった、何頁か先に…続きがあるようだ。

「……」

 一気に読んで私は疲れてきた。目が霞み、文字がにじんで見える。

 とても楽しい結末が待っているようにはこの先思えない。文字を読むことではなく、その文字を受け入れることが、自分の体力すら奪う錯覚にも陥っていた。

「続きは明日…」

 私は誰に聞かせるでもなく、言い訳のように呟いた。

 分かったことが、たくさんある。

 やはりここに住んでいた人がいた……

 私は日記を頭からもう一度、流し見る。

 グリフさんのお嫁さんで、その子が…グリフさんの子供を宿して…たぶん病気で死んだ。

 生々しい文章に少し赤面しつつ、そのことの意味を考えてみる。

 赤ちゃんが……今ここにいないことも考えて……長くは持たなかったんだと思う。

「…いや…」

 座椅子に身体をも垂れかけながらその哀しみを想像してみる。自然と涙がこぼれてきた。

 でも不思議な気分がする。自分のことのように悲しくても、街でお芝居を観ているような現実感の無さも同時に感じることが出来る。

 私の知らない時間に、知らない人が死んで、私の知っている人が悲しむ結末を向かえる。

 そう、そして私はみんなの様子からするとその娘と似ているらしい……

 だからここで感じていた違和感は、私を通してみんなこの娘のことを見ていたから…

 涙の変わりに大きなため息が漏れてきた。

 グリフさんの言葉が頭に響く。

 君は何も考えなくていい――

 彼女の変わりに私がここで笑っていろと…

「……何で、私が…」

 悲しい気持ちと、やるせない気持ち――それ以上に怒りにも似た戸惑いを感じつつ、私は目を閉じた。

 何だか……ひどい話である……

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