ミリィ編 第二十四章 ミリィとエアリスとルーメンと⑤ 魔術練習・土・風・癒し
翌日も、その次の日も。放課後になると、三人で自然と川辺へ向かうようになった。
特別な約束をしたわけじゃない。ただ、気づけば足がそちらへ向いている。
「今日は、何を教えてもらえるんですか?」
ミリィは、少し控えめだけれど、期待を隠しきれない声で聞いてくる。
「今日は……風と土かな」
俺がそう答えると、エアリスが頷いた。
「私も、復習したい」
「じゃあ、まずは土から」
川辺の少し乾いた場所に立ち、俺は足元を示す。
「サンドストーンは、土を“集めて固める”魔術だ。派手じゃないけど、基礎としてすごく大事」
「集めて……固める……」
ミリィは、両手を胸の前で軽く握りしめる。
「地の力よ、我が元に集まりたまえ……サンドストーン」
最初は、砂がほんの少し盛り上がるだけだった。
「あ……」
「今のは悪くない」
すぐに声をかける。
「魔力はちゃんと出てる。ただ、流れが散ってる」
「……集中、ですね」
二度、三度と詠唱を重ねるうちに、砂ははっきりと形を持ち始めた。
「できた……!」
ミリィの声が弾む。
「うん。今の感覚、覚えて」
エアリスも続いて詠唱し、土を盛り上げる。
「……やっぱり、土は重たいね」
「属性ごとの癖だよ」
そう答えながら、次は風へ移る。
「ウインドブリーズは、風を“流す”魔術。押し出そうとすると、逆に乱れる」
「流す……」
ミリィは目を閉じ、深く息を吸った。
「大地を駆け巡る風の力を今ここに……ウインドブリーズ」
ふわり、と優しい風が草を揺らした。
「……あ」
自分でも驚いたように、目を開く。
「できてるよ」
エアリスが笑顔で言う。
「やった……!」
ミリィは、何度も同じ魔術を繰り返し、風の感覚を確かめていた。
最後は、ヒーリング。
「回復魔術はね」
俺は少し言葉を選ぶ。
「技術も大事だけど、“気持ち”が一番大事だ」
「気持ち……」
「治したい、楽にしてあげたいって思いが、そのまま魔力になる」
ミリィは、そっと自分の手を見つめる。
「……はい」
「我が御霊より、このものに、癒しの力を……ヒーリング」
最初は、光が弱く、すぐに消えた。
「焦らなくていい」
俺はすぐに声をかける。
「自分に向けて、かけてみて」
「……わかりました」
再び詠唱。今度は、淡い光が手のひらを包んだ。
「……あ、あったかい」
「成功だよ」
その言葉を聞いて、ミリィはほっと息を吐いた。
その日の練習が終わる頃には、ミリィの顔には、疲れと同時に満足感が浮かんでいた。
「……今日は、もう限界です」
「うん、十分」
俺がそう言うと、ミリィは小さく笑った。
「ルーメン先生、ありがとうございました」
「……先生、やめようよ」
思わずそう言うと、エアリスがくすっと笑う。
「でも、教えてるのは本当だし」
「そうです」
ミリィも真面目な顔で頷く。
「先生って呼ぶと、ちゃんと頑張らなきゃって思えるんです」
「……そっか」
照れくささはあったけど、悪い気はしなかった。
こうして、ミリィはサンドストーン、ウインドブリーズ、ヒーリングを少しずつ、確実に身につけていった。
派手さはない。でも、確実に前へ進んでいる。その成長を、隣で見ていられることが、俺にとっても、エアリスにとっても、嬉しかった。
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