ミリィ編 第二十三章 ミリィとルーメンの出会い② 友達としての一歩目
握手を終えたあとも、ミリィはしばらくその場から動けずにいた。まるで、今起きたことが本当なのか、まだ確かめているみたいに。
「……えへへ」
小さく笑う声が漏れる。その笑い方が、少しぎこちなくて、でも隠しきれない嬉しさを含んでいて――俺は思わず頬が緩んだ。
「ミリィ、緊張しすぎ」
エアリスがそう言って、ミリィの肩をぽん、と軽く叩く。
「だ、だって……」
ミリィは慌てて言い訳するように、両手を胸の前で組んだ。
「エアリスから、ルーメンのこと……たくさん聞いてたから……」
「すごい魔術が使えて、でも偉そうじゃなくて、ちゃんと話を聞いてくれるって……」
そこまで言って、はっとしたように口を閉じる。
「……あ、ごめんなさい」
俺は首を横に振った。
「いいよ。なんか、照れるけど」
そう答えると、ミリィは少し安心したように微笑んだ。
エアリスはくすっと笑って言う。
「でしょ? ルーメン、こういうとこあるから」
「エアリス、それどういう意味?」
「そのままの意味」
軽口を叩き合う二人を見て、ミリィは目を丸くしてから、くすっと小さく笑った。
「……なんだか、安心しました」
「安心?」
「はい。お二人、仲が良くて……」
「それに、思ってたより……あったかい感じがして」
その言葉に、俺とエアリスは顔を見合わせる。
「そりゃ、友達だからね」
「ね」
エアリスがそう言うと、ミリィは何度も頷いた。
「……私、友達って、こういう感じなのかなって」
ぽつり、と零れた言葉。その声はとても静かで、でもどこか大切なものを含んでいた。
「ミリィ、友達、少ないって言ってたよね」
エアリスが、責めるでもなく、ただ確認するように聞く。
「……はい」
ミリィは正直に頷いた。
「家が広いから……学校が終わると、すぐ帰ることが多くて」
「お父さんとお母さんも、いつも忙しくて……」
その言葉に、俺はなんとなく想像する。広い家。人はいるけれど、同じ目線で話せる相手は少ない日常。
「でも」
ミリィは、少しだけ顔を上げた。
「今日は……すごく、嬉しいです」
「エアリスと友達になれて……ルーメンとも、こうして話せて」
その素直な言葉に、胸の奥がじんわり温かくなる。
「そっか」
俺は、ゆっくり頷いた。
「じゃあさ、これから少しずつでいいよ」
「無理に話さなくてもいいし、慣れてからでいい」
ミリィは、驚いたように俺を見て、それから柔らかく笑った。
「……はい」
ちょうどその時、校舎の方から、聞き慣れた足音が近づいてきた。
「おはようございます」
校長先生の声だ。
「おはようございます!」
三人で声を揃えて挨拶をすると、校長先生はにこやかに頷いた。
「もうすぐ授業が始まりますよ。席についてください」
「はい」
ミリィは少し名残惜しそうにしながらも、エアリスの方を見る。
「……また、あとで」
「うん。休み時間、話そうね」
そう約束して、ミリィは自分の教室へ向かっていった。その背中を見送りながら、俺はふと思う。
今日から、少し日常が変わる。まだ大きな変化じゃない。でも、確かに、新しい線が引かれた。
教室に向かいながら、エアリスが小声で言った。
「ね、ルーメン」
「なに?」
「ミリィ、きっと喜ぶよ。三人で遊べたら」
俺は、迷わず答えた。
「うん。きっとね」
こうして、ミリィと俺の「友達としての一歩目」は、静かに、でも確かに踏み出された。
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