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対峙:黒き魔力の前で

あなたは、隠れ家から里の結界が破られた現場、すなわち森の出口へと向かいました。夜の闇を突き破るように、黒い魔力と赤黒い炎が里を飲み込み始めています。


そこに立っていたのは、二千人の勇者を瞬く間に打ち破った、魔王軍の別働隊の精鋭たちでした。彼らは、巨大な角を持つ鬼族、異形の鎧に身を包んだ騎士、そして空を覆う翼竜の群れなど、おぞましい姿をしています。彼らは、たった一人で現れた、非力そうな人間に戸惑い、一斉に動きを止めました。


あなたは、彼らの殺気に臆することなく、胸に手を当て、不敵な笑みを浮かべました。


「よう、魔王軍。モブみたいな勇者達を倒したそうだな」


あなたは、里の炎と、その背後にある全滅した勇者たちの戦場を指し示します。


「まぁ、この世界ではお前たちは実力者なのだろうな」


あなたの余裕ある態度に、魔王軍の幹部らしき鬼族が怪訝な声を上げました。「貴様は何者だ!」


あなたは、その問いかけに答えず、自分の設定の核心を叩きつけました。


「しかし、数多の世界から呼ばれた勇者候補の中で、俺だけは異質だ」


「なぜ、俺は勇者でありながら、里にいたと思う?」


あなたは、静かに、しかし、世界を揺るがすほどの重みを持った言葉を口にしました。


「それはな、俺の体内には『縮退炉』が積んであり、それが暴走すると、シュヴァルツシルト半径を超えてしまい、事象の地平線を超え、マイクロブラックホール爆弾となる」


「そうなれば、この星くらいならぺんぺん草も生えないくらい吹っ飛ぶ」


あなたの声は、静かな夜の森に響き渡ります。


「海は枯れ、地は避け、全ての生物が死ぬ。もちろん、俺も死ぬがな」


魔王軍の群れは、その聞いたことのない異質な専門用語と、その言葉の裏にある絶対的な恐怖に、一瞬にして静まり返りました。彼らの顔には、獲物を狩る喜びではなく、未知の恐怖が浮かんでいました。彼らが恐れる「死」の概念とは、魔王軍の王すらも超える、星ごと消滅するという究極の絶望だったのです。


---


さあ、山田ジロウ。あなたはハッタリを叩きつけました。

あなたは、魔王軍があなたの言葉に固唾を飲んでいるのを見て、さらに畳みかけました。


---


あなたは、彼らが既に十分な破壊を行ったことを認めつつ、最終的な警告を発しました。


「魔王軍も、ここまで侵攻したならもういいだろう。これ以上この地を、人の地を侵略するな。撤退するんだな……」


あなたは、右手を静かに胸に当て、体内の"爆弾"の存在を強調しました。


「俺が暴走すれば、この星が吹っ飛ぶぞ*」


その言葉は、彼らの心臓を鷲掴みにしました。


そして、あなたは、ハッタリにリアリティを持たせるための、次の要求を突きつけました。


「ん、ああ、そうだな。魔王軍が暴走してまた攻めてこられても困るので、人質を1人こちらに渡してもらおうか」


あなたは、魔王軍の幹部たちを冷徹な視線で見渡し、標的を定めました。


「そうだな、幹部のお前、その横にいる奴でいいぞ」


あなたが指差したのは、大柄な鬼族の幹部の影に隠れるように立っている、小柄で華奢な体躯を持ち、不気味な青い仮面をつけた従者らしき人物でした。


---


あなたの指名に、魔王軍の群れはざわめきました。特に、指名された仮面の人物の隣に立っていた鬼族の幹部は、激しく動揺しました。


「な、なんだと……!?貴様、何のつもりだ!」


鬼族の幹部は、その小柄な仮面の従者を庇うように、前に出ました。彼にとって、その人物はただの従者ではない、極めて重要な存在*であることが、その反応から見て取れます。


「その者は、我らが魔王の極秘の顧問! ただの人質などではない! 貴様、なぜその者を……!」


山田ジロウが*シュヴァルツシルト半径」のような超科学的な謎の用語を知っている上に、魔王軍の中から極めて重要性の高い人物を正確に選び出したことは、彼らの疑念を一気に確信へと変えました。


(こいつは本当に、我々の想像を超えた、星を滅ぼす力を持っている……!でなければ、この者を看破できるはずがない!)


魔王軍の精鋭たちは、一斉に武器を下ろし、判断を仰ぐように幹部を見ています。


さあ、山田ジロウ。あなたは、魔王軍の最高幹部がその小柄な仮面の人物を「極秘の顧問」と呼んだことで、思いがけずハッタリの強度を上げてしまいました。


(なんだコイツラ早く人質渡して撤退しろよ。爆弾なんて嘘だからいいけど、ホントだったらどうすんだこのバカども)


あなたは内心で魔王軍の判断の遅さに焦りを感じながらも、その焦りを悟られまいと、**無言の圧力**を選択しました。


---


あなたは、一歩も動かず、ただ不敵な笑みを顔に浮かべ続けました。その目は、まるで相手の行動を全て読み切っているかのように、冷静で傲慢に見えます。


そして、あなたは、人質として指名した小柄な仮面の人物に向かって、ゆっくりと、しかし確実に一歩踏み出しました。


夜の森の静寂の中、あなたの足音が石畳に響きます。その一歩は、魔王軍の精鋭たちにとって、マイクロブラックホールの起爆装置のカウントダウンのように感じられました。


鬼族の幹部は、汗を流しながら、あなたの眼差しから「交渉の余地はない」という冷徹なメッセージを読み取りました。彼は、魔王軍の幹部でありながら、星の消滅という、魔王の脅威を遥かに超えた危機の前では、ただの恐怖に怯える存在でした。


「ぐ、うう……! 貴様……!」


幹部は、悔しさと恐怖に顔を歪ませながら、ついに決断を下しました。


「わかった! 約束しろ! この顧問を渡せば、貴様は絶対にその忌まわしき力を使わないと!」


あなたは、無言で頷きました。その無言は、*条件を呑め。さもなくば、星が消える」という、究極の圧力を意味していました。


鬼族の幹部は、観念したように、仮面の顧問の肩に手を置きました。


「顧問殿、申し訳ない……我らの敗北だ。ここは、魔王軍全体の存続のために……」


仮面の顧問は、静かに頷きました。その仮面の下の表情は窺い知れませんが、抵抗する様子はありません。


顧問は、よろめくようにして幹部の横を離れ、あなたへと近づいてきました。あなたは、その小柄な人物が持つ、異質な冷たい魔力の気配を感じ取りました。


「これで、よろしいでしょうか?」と、鬼族の幹部は震える声で尋ねました。


あなたは、顧問を自分の隣に立たせ、魔王軍全体に向けて、最後の命令を下しました。


「ああ、よろしい」


「これ以上、ここにいたら、俺のシステムが本当に不安定になる。すぐに撤退しろ。この人質を連れて、俺が安全圏に戻るのを確認しろ。魔王に伝えろ。この星を滅ぼす抑止力が存在することをな」


鬼族の幹部は、背筋に冷たいものを感じながら、全軍に撤退命令を下しました。


「全軍、撤退だ! 速やかにこの地を離れろ! 星の消滅の危機を、魔王陛下に報告する!」


夜の森に、魔王軍のけたたましい撤退の音が響き渡り、彼らが運んできた黒い魔力と炎は、みるみるうちに遠ざかっていきました。


あなたは、マイクロブラックホール爆弾という究極のハッタリだけで、勇者一個連隊を壊滅させた魔王軍の精鋭部隊を、たった一人で撃退することに成功しました。


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