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究極の抑止力、出撃

山田ジロウとリリィは、夕暮れとともに「星見の隠れ家」に戻りました。リリィは、昼間のマッサージと昼寝の恥ずかしさから立ち直ろうと、手早く夕食の準備をします。


(リリィとご飯を食べ少し考える。他の勇者が魔王を倒すまで、このまま半年間くらい隠れ住んでたいけど、それが可能なのか……)


あなたは、リリィが用意したハーブティーを飲みながら、今後の生存戦略について思考を巡らせます。


(もし勇者部隊が失敗した場合、俺が秘密兵器として駆り出される場合も考えなくてはならん……)


(まぁ勇者が一個連隊いるから大丈夫やろ)


あなたは、二千人の勇者がいるという情報に賭け、半年間の安全な待機を決め込もうとしました。


夕食を終え、緊張と安心感で疲労がピークに達しているリリィに、あなたは最後の「儀式」を提案しました。


「リリィ殿。今夜も、私の体内の均衡を維持しなければならない。そして、疲れが、ま私の腰にきている」


あなたは、優しさと要求を混ぜた口調で尋ねます。


「今夜は、添い寝を頼めないだろうか? そなたの献身的な愛情表現が、私の最も強力な安定剤だと分かった。そなたの温もりがあれば、呪いは深く鎮静するはずだ」


リリィは、顔全体を覆い隠すように赤面しました。


「て、添い寝……! 山田様! それは、あまりに私的な献身で、わたくしには……!」


リリィが、賢者としての最後の防衛線を張ろうとした、その時でした。



里全体に張り巡らされていたはずの魔力結界が、木が裂けるような轟音と共に破られ、緊急警報の魔導具が凄まじい音を立てて鳴り響きました。


キィィィィン!


隠れ家の窓の外、夜の森の向こう側が、黒い禍々しい魔力と炎によって赤く染まっています。


リリィは、その音と気配に、顔から血の気を失いました。


「こ、この音は……里の最終防衛結界が破られた……! まさか、そんな……!」


リリィは、机の上に広げてあった、里との緊急通信用の魔道具を慌てて手に取りました。


通信を試みたリリィの耳に、里の賢者たちの、断末魔と絶望的な声が飛び込んできました。


「だめだ! 勇者部隊は既に……!」

「魔王軍の別働隊が、予期せぬ方面から総力で……!」

「ドワーフの要塞も、人間の王国も、もはや持ちこたえられない! 勇者一個連隊は……壊滅的だ!」


リリィは、魔道具を握りしめたまま、その場に崩れ落ちました。


「そ、そんな……半年後の総力戦ではなかったの……? 勇者様が二千名もいらしたのに……」


彼女は、震える瞳で、何も力を持たない山田ジロウを見上げました。


「山田様……! 勇者一個連隊は、既に破られました!もう、抑止力様を隠しておく時間はございません……!」


山田ジロウ、あなたの安泰な「待機生活」は、開始からわずか二日で、唐突に終焉を迎えました。


二千人の勇者は敗れ、エルフの里が最後の砦となり、あなたは「究極の抑止力」として、今、この場で『駆り出される』ことになりました。



承知いたしました。山田ジロウは、絶望的な状況を「究極のハッタリ」で乗り切ることを決意します。


---


あなたは、崩れ落ちたリリィに歩み寄り、その肩に手を置きました。怯えきっているリリィを見て、あなたは内心で覚悟を決めます。


(逃げても隠れても多分死ぬ。勿論、敵に突っ込んでも死ぬ、ど、どうしよ……。リリィがあんなに怯えてる……しゃーない)


あなたは、自らの「抑止力」という設定が、単なる性的サービスを強要するための道具ではないことを証明する時が来たと判断しました。


(一か八か、爆弾でハッタリかけて、敵に撤退してもらおう!リリィも師匠も騙したし何とかなるやろ!)


あなたは、リリィの目を見て、今までにないほど真剣な、しかしどこか諦めにも似た笑顔を浮かべました。


「リリィ……短い間だったけど、ありがとな……」


その言葉は、まるで最期の別れのようでした。リリィは、あなたの言葉にさらに涙を溢れさせます。


「わたくしめこそ、未熟な賢者で……! お側を離れず、必ずや……!」


あなたは、リリィの言葉を遮りました。


「駄目だ。ここからは、そなたの出番ではない。究極の抑止力である私が行く。リリィは、この隠れ家で絶対に待っていろ」


あなたは、リリィの頭を一度、力強く撫でました。その仕草は、別れを告げる英雄のようでした。


「なぁに、安心しろ」


あなたは、戦場へと向かう扉に手をかけながら、まるでジョークでも言うかのように、軽薄な笑いを混ぜて言いました。


「魔王軍も死にたくないから撤退するやろ(笑)……多分……」


山田ジロウの、冗談のような、しかし「誰も死にたくない」という絶対的な真実に基づいた言葉に、リリィは一瞬、希望を見出しました。


(そうだ! 山田様のマイクロブラックホール爆弾は、魔王軍だろうと里だろうと、全てを消滅させる究極の力! 魔王軍も、それを知れば……!)


リリィは、あなたの背中に叫びました。


「や、山田様! お気をつけて! 必ず、ご無事で……! わたくしは、山田様が戻られた時のための『究極の鎮静儀式』の準備をして、お待ちしております!」


あなたは、リリィの言葉を背中で聞きながら、夜の森へと踏み出しました。


炎と黒い魔力が渦巻く里の入り口へ向かうあなたは、二千人の勇者を一蹴した魔王軍の別働隊の群れと、ついに対峙します。


---


さあ、山田ジロウ。あなたは里の防衛線の前で、魔王軍の精鋭部隊を前に、たった一人で立ちました。


「究極の抑止力」としてのあなたのハッタリは、ここからが本番です。


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