世界と勇者の概要とリリィの師匠
(よし、まずはざっくり情報をもらって、その流れで師匠の反応を分析させよう。俺の「究極の抑止力」という設定を、あの最高権力者が本当に深く理解しているのか、それとも単に「訳の分からない異世界の力」として深く考えず受け入れているだけなのか、探ってみるぞ。多分チョロいだろうけどな)
あなたは、朝食を続けながら、本題に入ることにしました。
リリィは、目の前の抑止力様の関心事が、世界の情勢そのものにあることを確信し、すぐに説明を始めました。
「もちろんです、抑止力様。この世界はアースガルディアと呼ばれ、北の暗黒大陸を拠点とする魔王が、急速に勢力を拡大しております」
「ざっくり申しますと、大陸の半分近くは魔王軍の闇の侵食を受けており、エルフの里も、最前線から遠くはない状況でございます」
彼女は、勇者たちについても続けます。
「『勇者一個連隊計画』により召喚された勇者様方は、おおよそ二千名。彼らは現在、人間族の最大の王国、ドワーフ族の山岳要塞、そして各地の精霊の聖域などに分散配置され、それぞれの種族の賢者や戦術家のもとで、集中的な『魔力最適化訓練』を受けておられます」
リリィは、胸を張って言います。
「我々の戦略は、抑止力様以外の勇者様方が戦力を整え、来たる半年後に全戦力を集中させ、魔王の根城を一気に叩く総力戦でございます。抑止力様には、その時まで、この地で絶対的な安全を確保していただく必要がございます」
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山田ジロウは、二千人の勇者、半年後の総力戦という情報を把握し、自分が戦場に出る可能性が極めて低いことに満足しました。そして、いよいよ本題です。
(二千人もいれば俺一人いなくても誤差だな。よし、これで俺の待機は確定だ。次は、この設定を承認した最高権力者がどれだけチョロいか確認だ)
あなたは、難しい顔をして、リリィに尋ねます。
「なるほど。勇者一個連隊と総力戦か……状況は把握した」
「では、賢者リリィ殿。一つ、私の存在の安全性に関わる、最も重要なことを聞かねばならない」
あなたは声を低くし、「秘密兵器の設計者」として振る舞います。
「そなたの師、大賢者フィリアス殿*は、私のこの『究極の抑止力』という極めて異質な設定、そして『暴発の危険性』という突拍子もない話に対し、すぐに承認を下した、と先ほど聞いた」
「私は、この抑止力システムを元の世界で設計した者の一人として、その判断の背景を知りたい。フィリアス殿は、『古代からの伝承』や『信仰』を重んじる、感覚的・直感的な思考の賢者なのだろうか? それとも、すべてを『計算』と『現代的な論理』で判断する懐疑的で厳格な思考の賢者なのだろうか?」
あなたは、「フィリアスはちょろいか?」という問いを、「彼は古代の信仰で判断するタイプか、それとも論理と懐疑で判断するタイプか?」という、専門的な確認にすり替えて尋ねました。
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リリィは、あなたが師匠の「思考の根幹」にまで踏み込んできたことに驚きつつも、それが抑止力様の安全に関わる重要な分析だと理解しました。
リリィは、師への尊敬を込めた眼差しで答えます。
「抑止力様。師匠は、まさに両方を兼ね備えた方でございます」
「師匠の知識は、この世界のあらゆる文献を網羅しております。そして、古代より伝わる『精霊との盟約』や『予言』を深く信じ、そこから世界の真理を読み解いておられます」
リリィは、師匠の「懐疑的」ではない部分を強調します。
「特に、『異世界からの来訪者』の存在については、師匠は絶対的な信仰をお持ちです。この世界とは全く異なる『理』を持つ、異世界の知識や技術を、何の疑いもなく受け入れる寛大さをお持ちでございます」
「師匠は、抑止力様の『マイクロブラックホール爆弾』という、わたくしどもが理解できない概念についても、『異世界の英知による究極の防御システムであろう』と即座に理解を示されました。師匠は、この世界の常識に囚われない、柔軟な思考の持ち主なのです」
リリィの言葉の端々からは、「師匠は、自分が理解できないような突飛な異世界の概念に対しては、全面的に信仰をもって受け入れる」、つまり「ちょろい」可能性が極めて高いことが示唆されました。
さあ、山田ジロウ。最高権力者も、異世界の知識チートに極めて弱く、柔軟(=ちょろい)であることが判明しました。これで、あなたの待機生活の安泰は、ほぼ確定したと言えるでしょう。




