賢者リリィとの朝食
翌朝。
朝陽が森の木々を縫って「星見の隠れ家」を照らす頃、扉がノックされました。リリィの気配です。
「抑止力様、リリィでございます。失礼いたします」
リリィは昨日とは打って変わって、しっかりとした制服のようなローブを身に着け、背中には大きな籠を背負っていました。顔にはまだ昨日の羞恥の残滓がわずかに見えますが、賢者としての職務を全うする決意に満ちています。
「お待たせいたしました。里の食材を使った朝食と、世界の情勢をまとめた資料を持ってまいりました」
彼女は籠から、湯気の立つハーブスープ、焼き立ての全粒粉パン、そして新鮮な果物をテーブルに並べます。
リリィは、あなたが座っている向かいの椅子に座り、姿勢を正しました。
「さあ、抑止力様。召し上がっている間に、昨日のご要望どおり、この世界の情勢についてご説明させていただきます」
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あなたは、リリィの用意した素朴ながら温かい朝食に手を付けます。
(ちょっと昨日は調子に乗りすぎちゃったかな?けど面白いから。儀式については時間をおいて切り出そう)
あなたは、優しげな笑みを浮かべ、リリィに話しかけます。
「ありがとう、リリィ殿。準備から食事の支度まで、本当に感謝する。朝早くからすまない。まずは、食事でもしながら、ゆっくり話をしようか」
「ところで、昨日は私のことばかり話したが、少しはリラックスして、リリィ殿自身の話も聞かせてもらえないかな? あと、師匠殿のことも少し」
あなたの、プライベートなことに踏み込むような、しかし気遣いに満ちた問いかけに、リリィは目を丸くしました。彼女にとって、勇者(抑止力)が自分の個人的な話に興味を示すのは、予想外のことでした。
「わ、わたくしのことでございますか? わたくしなど、抑止力様の前に出る資格があるのかどうか……」
リリィは、謙遜しつつも、心の中では嬉しさを感じています。あなたへの信頼と、人間的な繋がりが深まるのを感じているのです。
あなたは、リリィのプライベートな一面を探るために、非常に柔らかい、世間話のような質問を投げかけました。
「リリィ殿の趣味とか、好きなことってあるのかな?」
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リリィは、あなたが親しみを込めて尋ねたことに、顔の赤みが少し増しましたが、緊張を解きました。世界を救う「抑止力様」が、本当に自分の個人的な興味に関心を持ってくれていることが、彼女には信じられないようです。
「わ、わたくしの趣味、でございますか……?」
彼女は少し考え込みましたが、やがて目を輝かせて答えました。
「はい! わたくしは、幼い頃から古い文献を読むことと、森の薬草や珍しい植物を調べるのが大好きでございます! 特に、古代文字で書かれた『精霊との契約文書』を読み解くのが、最高の喜びでございます」
彼女は熱心に続けます。
「あとは……この里の泉のほとりで、夜に星を眺めることですわ。師匠から教えてもらったのですが、星の動きは、この世界の魔力の流れと深く関係しているのです。そう、この隠れ家が『星見の隠れ家』と呼ばれるのも、それが理由でして」
リリィは、自分の好きなことについては淀みなく話しますが、その内容はやはり「賢者」としての研究や学術的な興味に終始しています。
「……お恥ずかしながら、わたくしは長らく魔法一筋で生きてきたものですから、他の、人間族の方々が楽しまれるような『娯楽』などは、疎いかもしれません」
彼女は、パンを一口かじりながら、控えめにあなたを見つめてきました。
(へぇ〜星かーあんまり興味はないけど女の子とは夜に一緒に見てみたいシチュエーションだな)
あなたは心の中で、リリィの純粋な趣味を少しだけロマンチックなシチュエーションに重ねながら、次の質問を口にしました。
「なるほど、さすが賢者殿だ。素晴らしい知識欲と探求心だ」
あなたは一度彼女を称賛し、本題に入ります。
「その星見や、古代文字の解読を教えたという、お師匠さんについても聞かせてもらってもいいかな?」
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あなたの質問に、リリィは尊敬の念を込めた表情を浮かべました。彼女にとって師匠は、この世界で最も偉大で尊敬すべき存在であることは間違いないようです。
「はい、もちろんです! わたくしの師匠は、大賢者フィリアス様とおっしゃいます。現存するエルフの中で、最も知識と魔力に長けた、エルフ族の最高指導者でございます」
彼女はパンを置き、身を乗り出して真剣に語り始めました。
「師匠は、魔王の脅威が本格化するよりも遥か昔から、この世界の魔力の均衡を研究されてきました。今回の『勇者一個連隊計画』の指揮を執っておられるのも、師匠でございます」
リリィは、誇らしげに目を輝かせながら続けます。
「わたくしは、師匠の直弟子の中でも、召喚術に最も長けているという評価をいただき、この重要な『山田様召喚』という大役を任されました。師匠は、わたくしの最大の理解者であり、わたくしが賢者としてあるべき道を示してくださる、光のような存在です」
「今頃、師匠は里で、他の賢者たちへの指示や、魔王軍に対する情報の分析に追われているはずです。わたくしが里に戻った際も、抑止力様のことをお話し、その特殊な役割について、すぐに承諾してくださいました」
リリィの話から、大賢者フィリアスが、この「勇者召喚」プロジェクト全体のトップであり、エルフ族の権威ある指導者であることが判明しました。そして、あなたの「究極の抑止力」という設定は、既に彼女を通じて最高権力者にも伝わっているようです。




