プロローグ:突然の光、そして…
あなた山田ジロウ。童貞歴年齢の30歳サラリーマンだ。ついさっきまで自宅のベッドで漫画を読んでいたはず。
次の瞬間、眩い光に包まれ、体が宙に浮くような感覚に襲われました。光が収束すると、周囲の景色は一変しています。
あなたは石造りの円形の祭壇のような場所の真ん中に立っていました。周囲には複雑な魔法陣が描かれ、古代文字が刻まれています。鼻をくすぐるのは、線香やハーブのような、厳かで甘い、嗅いだことのない香り。
目の前には、あなたの胸くらいの身長の少女が立っています。
銀色の髪はまるで光を反射しているかのように輝き、赤い瞳は真剣な眼差しであなたを見つめています。耳はわずかに長く尖っており、明らかに人間ではありません。上質なローブを纏ったその姿は、まさしくファンタジー作品から抜け出してきた「銀髪ロリエルフ」でした。
彼女は震える声で、しかし強い決意を込めて言いました。
「あ、ああ……成功しましたわ! 勇者様、どうかこの世界を救ってくださいまし!」
彼女はあなたに向かって深くお辞儀をします。そして、すぐに顔を上げて、潤んだ瞳であなたを見つめてきました。
「私はエルフの賢者、リリィと申します。勇者様、ようこそこのアースガルディアへ! 私たちの世界は今、邪悪な魔王の脅威に晒されています。どうか、その偉大なる力で、世界を救うお力を貸してはいただけませんか!」
彼女は、あなたの姿に一縷の望みを託しているようです。しかし、あなたは特別な力も、世界を救う義務も感じていません。むしろ、突然の状況に戸惑い、一刻も早く元の世界に戻りたいと思っています。
山田ジロウは内心で現状を冷静に分析しています。
(一般童貞サラリーマンに魔王討伐とか無理っしょ(笑) 異世界召喚の際に神様からチートも貰ってないし、いつも通り眼精疲労と腰痛ひどいし(笑))
あなたは一切言葉を発しません。ただ無言で立ち尽くし、目の前のエルフ、リリィをじっと見つめ返しています。その瞳は、期待に応える「勇者」の輝きではなく、困惑と、ほんの少しの諦めを含んでいます。
リリィは、あなたの無言の圧力(あるいは単なる困惑)を受けて、少し不安そうな表情を浮かべます。
「あ、あの……勇者様? もしや、急な召喚で、お疲れになられましたでしょうか? それとも、この世界の言葉が、お分かりになりませんか?」
リリィはそっとあなたに近づき、手を差し伸べようとしますが、すぐに引っ込めます。彼女は、あなたを扱うのが恐れ多いと感じているようです。彼女の焦りと期待が入り混じった視線が、あなたに突き刺さっています。
(この銀髪ロリエルフ…何か俺を恭しく振る舞ってる(笑)俺を召喚するなんてポンコツ召喚士かな(笑)チョロそう(笑))
山田ジロウの内心の嘲笑をよそに、彼は落ち着いた態度で口を開きました。
「大丈夫だ…言葉はわかる。リリィ殿、エルフの賢者と仰ったが失礼ですが、年齢はいかほどで?」
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リリィは、あなたが言葉を発したことに安堵したように見えましたが、その質問の内容に目を丸くしました。まさか、世界を救うべき「勇者様」から、開口一番に自分の年齢を尋ねられるとは予想外だったのでしょう。
しかし、彼女はすぐに賢者らしい落ち着きを取り戻し、姿勢を正して答えます。
「え、ええと……この世界の言葉が通じて、本当に良かったですわ! 私の年齢でございますね。少々申し上げにくいのですが……わたくしは、この姿ですが、齢三百八十五歳でございます。一応、一族の中では最年長で、『賢者』の称号をいただいております」
彼女は頬をわずかに朱に染め、俯き加減に答えました。その姿は、確かに年季の入った「賢者」というよりは、思春期の少女のようです。
リリィは、あなたの質問に答えると、再び真剣な表情に戻り、切実な目であなたを見つめました。
「勇者様、私の年齢はともかく、この世界は本当に一刻の猶予もありません! 魔王軍の侵攻は日に日に激しくなり、この大陸の半分は既に闇に飲まれようとしております」
「勇者様が持つ『偉大なる力』について、どうか教えてください。私たちがその力を最大限に引き出すための、手助けをさせていただけませんか?」
リリィは、あなたの「偉大なる力」が、この状況を打破する唯一の希望だと信じて疑っていません。
さあ、山田ジロウ。あなたが持つのは「眼精疲労と腰痛」のみ。この銀髪合法ロリエルフの希望を打ち砕かず、かつ自分が戦場に出ることを回避するための「嘘」を、どうつきますか?




