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7話 雷の守護者

「大丈夫だったかしら?」


 童顔で10代後半に見えそうだが、振る舞いや体格から成人済みであることを窺える少女のような格好をした女がルチアたちと目を合わせた。


「すみません、仲裁……と言っていいかは分かりませんがありがとうございました」


 男との激しい言い合いで疲れたようで女性店員は深く息をつきながら礼を言う。


「ありがとうございます助かりました」


 背後のルチアを気にしながら、外行きの顔をしたユキが礼を言う。


「ふん、いいのよ。もっと感謝してくれても」


 片ツインテールを跳ね除けながら、嬉しそうな顔を隠さずに女は言う。

 遠巻きに一部始終を見ていた人々も、女に歓声を上げる。


「守護者様!万歳!」

「雷の守護者様すごい!」

「かっこいい!」

「可愛い!」


「あの人守護者なの!?」

「すごい!」

「すごい!」


 雷の守護者と呼ばれた女は口角を震わせながら、頬を染める。


「き、気持ちいぃっ……!」


 だらしなく口を開けながら、その姿は聴衆に見られないよう巧妙に隠している。


「雷の守護者……」


 ユキはその様子を見ながら、背後で精霊たちにルチアの体を支えるよう指示する。

 ルチアは男が眠る魔法を掛けられたところまで見て、意識を失っていた。

 多くの人々に見られながら大道芸をしていたのに加え、男の登場である。疲労の限界が来てしまったのだろう。


「守護者に会えるなんて貴重よ貴重」

「確かに、初めて会いました」


 ユキは守護者の言葉に頷いたが、森からまともにでたことがなく旅に出てから数日しか経っていないのだから、初めて会って当然のようなものだった。


「私もまさかこんなところで上位精霊に会えるなんて思ってなかったけれど」

「……分かるのですね」

「ええ。鍛えてますから」


 赤く塗られた口が妖艶に弧を描く。


 荷物をまとめ、ルチアを背に担ぐ。どこかであった体勢である。


「その子を精霊のあなた1人で見れるの? 私の泊まってる宿に連れてきなさい。看てあげる」


 ユキは女の目をじっと見て、


「それもそうですね。申し訳ないですが」


 女を頼ることにした。

 彼女の言葉に嘘偽りはないことだし。


 *


 その場で警備も呼んでくれた女性店員に深く礼を言い雷の守護者に収めてもらった後、守護者の泊まっている部屋のベッドにルチアを寝かせた。


『体をラクにしてあげて』


 ルチアの額に手を置いて、女は魔法を使った。

 体に入った無駄な力が抜け、深い眠りについたようだ。


「熱もないわね。精霊が主とはいえ、魔法を使ってこの子も命令に魔力を持っていかれているみたいだから魔力回復と、体力回復ね」


 そう言うと、懐から薄い布を出してルチアの閉じた瞼と額を覆った。


「それは何ですか?」

「ふふ……“よくネムレール”よ。私が作った消耗魔法具」

「ほほう……あとでルチアに見せてあげられますか? 喜ぶので」

「あらいいわよ。ルチアって名前なのね。ネムレールだけじゃなくて他にも私が作ったものを見せてあげようかしら」


 守護者はピンクのポーチを取り出して、あれやこれやと様々な物を床に広げた。


「そういえば、あなた名前は?」

「……ユキです。申し訳ありません、こういうことに慣れていないもので、名乗り遅れました」

「いいえ? 私はアリサ。雷の守護者にして闇属性魔法の使い手よ」

「僕は氷の精霊です」

「見りゃ分かるわよ」


 バッサリと切ってきたアリサに、ユキは面白い人間だなあとほのほの笑った。


「ルチアと一緒に大精霊に会う旅をしています」

「……? ふーん?」


 不思議そうにアリサは頭の天辺から足の先までジロジロ見てきた。


「ま、あんたたちには詳しく聞きたいこともあるから、ここで休んでなさい。ルチアも朝には起きるでしょうし」

「はーい」


 部屋のもう一つあるベッドに、重装備(ドレス)を外したアリサが転がった。

 ユキは白い狐の姿になってルチアの枕元に丸まった。精霊は特に寝ることは必要ないため、朝までぼーっとすることが多い。

 ルチアの周りの精霊たちも落ち着いたのか、まとまっている。


 ルチアとは森からの関係だから対人との様子を知らなかったが、拙いながらもコミュニケーションは取れるようだ。精霊の魔法にあそこまで詳しいとは思わずユキは驚いた。氷の精霊である彼より詳しいのではないだろうか。


 しかし、今回の一悶着あった男のような人間が現れた場合、気をつけた方がいいだろう。ルチアがあそこまで怯えると思っていなかった。

 精霊の魔法を説明していた口で、彼女の頭にある知識を使って話すのだろうと、なんとなく思っていた。


 ルチアにはのびのびとした環境で絵をたくさん描いてもらわなければいけないのだ。

 精霊の力でできることがあるなら、使うまでだ。


 *


 少女は目を覚ましてすぐ、頭がスッキリしていてビックリした。

 ここ数年、寝起きが辛いことがほとんどだったので、心地良い寝覚めを味わうためにゆっくり伸びをした。

 久しぶりのベッドだが、ここはどこだろうか。ユキたちにまた迷惑を掛けてしまったのだろうか。


 大精霊の旅に付いてきてくれたうちの、緑・黃・赤色の精霊たちがルチアの顔の周りを飛ぶ。

 彼女が起きたことに気づいたらしい狐姿のユキと白色の精霊も顔の周りに集まる。


「……おはよ〜……わっ゛!」


 ルチアの声を聞いた途端、精霊たちが顔面に群がった。朝から騒がしい。



「朝から元気ね……」


 寝起きのガッサガサの声と共に、アリサがベッドから這い出た。


「!?……!、!?」


 ツインテールや化粧の欠片もない状態のアリサに、見覚えを感じるはずもない。ルチアは声も出せず壁に張り付いた。


 顔面を圧迫していた白狐は振り落とされたため、パニックになっている少女に説明するため人に変身した。


「このお姉さんは昨日助けてくれた人だよ。寝床も分けてくれたんだ」

「そ、そうなんですか!?」


 ギョッと目を剥いたルチアは、バババと寝癖やらを整え床に正座をして姿勢を正し頭を深く下げた。


「あ、あの先日は、誠にありがとうございました」

「あら、いいのよ。か弱い女の子を助けるのは仕事のウチみたいなもんだし。」


 余裕のある表情で、なんてことないように応えるアリサにカッコよさを感じた。


「私はアリサ。雷の大精霊の守護者よ。あなたの名前と旅をしてるってこともそこの精霊から聞いたわ。このあとあなたとゆっくりお話したいのだけど、いいかしら?」

「はいっ!」

「ま、その前に朝の準備をしましょうか。こんな装備で外に出たくないし」


 結んでいない金髪をサラリと跳ね除け、そう言った。

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