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とある精霊の旅  作者: うさ公
第三章 出会いと紅の好敵手
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51話 ち、近い……


「……それで、抱き枕の件なのだが」


 ララはルチアの顔が強張ったのを認識した。

 ならばとアプローチの仕方を変える。


「ルチアは尊敬していたり目指す魔術師はいるか?」


 ルチアはその質問に頭を悩ませた。

 目指す、など明確に考えたことはなかった。

 なれるならロギス・フルールみたいな強い魔術師になりたいし、お姉さまと慕うアリサ・ルゥホートみたいな気高く優しい魔術師になりたいし、ローレン・ニオギスはルチアの基礎魔法を教えてくれた本の著者であるし……


「こ、氷の守護者ウォリス様、とか……」


 最も身近にいて、長く憧れていた魔術師といえばの彼を名前に挙げた。


「おお! 万能の魔術師とも名高いウォリス殿か!ワタシは直接お会いしたことはないが、5年前の大災害では城を竜から一晩守り切ったという話を聞いて痺れたなあっ!」

「はい! とてもすごい人です」


 ルチアは城を守った話は初耳だが、やっぱりウォリスお兄さんはすごいなと頷いた。


「ララ様は……?」

「ワタシは拳闘の魔術師__風の守護者をしているモンド殿だ。戦い方などはあのお方に影響されてな。強化魔法を必死に習得したものだ」


 ルチアが少し話したことのある魔術師の名前が出た。

 遠くから竜との戦いも見させてもらった時を思い出し、ララとモンドの戦闘スタイルの共通点になるほどと頷いた。


「モンド様、以前ただの棒で竜を簡単にいなしてました。ララ様は対物強化も修めているんですか?」

「おおっ! いやあ、うーん……剣の切れ味を多少良くする程度なら出来るのだが、モンド殿のように武器でないものを武器にできるほどの強化は難しいのだ。お前との決闘で使えなかったのが答えだ」



 同世代の魔法バナシは珍しいので楽しい。

 夜が更けるまで、ララと魔法や魔術師の話をした。

 ルチアの肩の力も自然と抜けて良い時間を過ごせた。


 いざ寝ようと、いつの間にか座り込んでいたララのベッドから離れようと腰を上げたルチアは抵抗もできないまま布団に引きずり込まれた。


「よいではないか」

「いえ、あの、あぅ……」


 ルチアの体は、ララの逞しい腕にガッチリ掴まれているため逃げ出すことはできない。

 まだ向き合う体勢でなかったのは幸運だろう。


 ララの匂いを間近で感じて、他人の匂いにくらりときた。

 もう少し仲良くなった時なら良かったのに、とルチアは少し思った。まだ知り合って一日も経っていないのに。


 結局、自分のベッドで寝る感触を知る前に、ララのベッドで寝る感触を知ってしまったのだった。



 *



「ルチアちゃんだ。やっほー」


 ルチアは手に取った商品を一旦戻して、声の主を見た。

 売店でショッピングをしていたルチアに声を掛けたのは昨日決闘の審判をさせられていたウェンだった。


「おはようございます……!」


 ウェンは軽薄な笑みを浮かべて、ルチアの手元を覗いた。


「なに買ってるの?」

「授業でいる物を……」


 ああ! と合点がいったようで手を叩く。


「じゃあオレもなんか買ってこーかな」


 そのままフラフラと売り場をウロつきだすウェンを見送り、ルチアは後はアレを買ってこれを買ってと手元を満たしていく。


 ルークを通して貰った学校生活資金をありがたく使わせてもらって、無事入手できた。

 いくつかすぐに必要ではないがあった方がいいかもと探していた物は売店に置いていなかった。商業地区に行けばあるだろうと店員に教えてもらったので、また時間があれば買いにいくつもりだ。


 売店を出ると、ウェンが横に立っていた。


「ルチアちゃんこれあげる。お近づきの印に」

「えっ! ありがとうございます」


 ウェンは手に持っていたお菓子の袋から一つ出してルチアにくれた。

 チョコレートだ。


「いいよねーこういうのが気軽に手に入るの! ハイエルンだからかもだけどさ」

「実物を見たのは初めてです……」

「え! そうなの!? チョコね、オレもあんま回数食べたことないけど美味しいよ~!」


 ウェンがそう言ってさりげなくもう一つくれたので、ルチアは「あわわ……」とぺこぺこ感謝した。

 新聞などのメディアで何度か目にした程度のルチアにとって、とても珍しいお菓子だった。

 それがまさか学院の売店にあるなんて!


 ルチアは自分の目的のものしか探さなかったことを後悔した。

 この売店にはルチアの知らないお宝が眠っている可能性がある。


「えと、ウェン様はこれを買いにここに……?」

「んーん? 珍しく早起きしたからブラブラしてたらルチアちゃんがいたから声かけてみただけ!」


 朝からなんとも元気である。


「このあと用事あるの?」

「よ、用事ってほどではないんですけど、図書館に行ってみたくて……」

「一緒に行ってもいい?」


 ウェンのお願いに断る言葉を思いつかなかったので、ルチアは頷いた。



 *


 ユキはルチアたちの傍を光の姿で飛び回りながら考える。


 ウェンリオル・オルヒュードとかいう男がルチアと一緒に居るということが嫌である。

 彼の軽薄な言動を見ていると、以前雷の地域のセイロという街のバーでバイトをしていた時その道のりで「お兄さん!どうすかっ!? 可愛い女の子いますよ!どっすか?」としつこく声を掛けてきた人間を思い出すのだ。


 ウェンがあそこまでウザイとは言わないし、ルチアへの気遣いも感じられるが、ララとはまた別の近すぎるパーソナルな距離を感じてしまう。

 この魔法学院に通うルチアと同学年の生徒たちはこうも距離が近いしそんなに親交のない人にグイグイ行くものなのだろうかと、悩む。


 ルチアが年の近い少年少女と関わる場面を見ることが少なかったので、ヒト同士の距離の取り方が分からない。

 よく考えれば、アリサやロギスも初対面からルチアに馴れ馴れしかった。これはあの魔術師たちが特殊である可能性もあるが。


 ルチアは何か人に対して惹きつける粉を撒いているのではないだろうか。

 ……いや、ヒトだけではない。精霊にもだ。


 風の地域まではそこまでではなかったが、この光の地域や学術地区に入った途端、光に群がる虫のように知らない精霊がルチアにフラフラと寄せられているのだ。


 いくらか邪魔そうなのは、ルチアの契約精霊たちが慣れたように遠ざけていたが。

 明らかにルチアから何かが出ている。


 ロギスが昨日、生徒同士だとしても悪意を持つ人間もいると話していたのだ。

 今ルチアにくっついている男もそうだし、おびき寄せられている精霊も、ルチアに災難を降らせるようなら注意しなければ。


 ユキは早くルチアが“最強決定戦”で優勝して光の大精霊に会って書いた絵を見たいのだ。



「ここ図書館4つもあるけど、どこ行きたいとかあるの?」

「とりあえず寮に近いところを、とは思っていたんですけど……」


 2人がスタスタと歩いていくので、ユキは慌てて付いていく。

 ルチアと契約している風の中位精霊が、ルチアの鞄をすかさず魔法で少し軽くする。さすがだ。彼はよくルチアのことを見ている。

 気遣いのできる契約精霊に舌を巻く。今舌はないが。


 ん?

 ユキは違和感を覚えた。

 隣に風の精霊がいる。


 どうも。

 こんにちは~


 軽く頭(?)を下げて挨拶すると、その精霊も返してくれた。

 知らない精霊である。

 ユキと同様光の姿だ。

 ルチアに引き寄せられた様子ではない。


 ユキはなんとなくその精霊が“上位”と呼ばれている階級の精霊だと認識した。


 もしかしてあの人のお知り合い?

 そうです~

 そうですか


 その風の上位精霊は、知り合いらしいウェンとつかず離れずの距離感でふわふわと飛んでいる。


 ユキはちょっと考えた。


 知り合いの精霊がこんな感じなら、ウェンを警戒しすぎなくてもいいか。



 隣でふわふわ、ふわふわとのんびり風の上位精霊はウェンを見守っていた。



ガールズラブの予定はありません;;


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