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4話 ルチア後編

 あの後、大精霊様たちがあの巨大な竜をどうにかしてくれたらしい。

 生き残った村人や、あの場にいなかった人たちがいろいろな噂を持ってきて話した。


 ロギス・フルール様率いる大精霊の守護者たちが、八大精霊の力をもって古代竜を退けた。

 町を荒らす竜は魔法使いや戦闘員、騎士団が対処してくれて安全になった。

 大精霊様は、今回力を使ったせいで姿を保てなくなったらしい。


 ルチアの父親を含む村人たちは、海竜の侵攻を止めるために戦死していたらしい。

 並べられた死体の中に父の姿を見てしまったルチアは、ただ地面に座り込んだ。




「や。舞巫女殿」

「ウォリスお兄さん、無事だったんですね」


 被害を受けたホム村の復興に走り回っていると、ウォリスが現れた。


「無駄に頑丈だからね、魔術師ってのは。それにキミに守ってもらったしねありがとう」

「いえ……あの、氷の大精霊様は大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃないと思うよ」

「……大丈夫じゃないんですか」


 大精霊が巨大な力を使った後から、周りで見かける精霊の数が減っていた。

 なんだか舞巫女になる前に戻ったみたいで、ウォリスや村人に舞巫女と呼ばれるとムズムズした。


 相変わらず、あの時からウォリスの周りには精霊がいない。


「結構おしゃべりする人だったんだけど、砕け散ってずっとだんまりだよ。寂しくなっちゃったね」

「だ、大丈夫なんですか……!? 砕け散るって」

「比喩みたいなもんだよ……まあいずれ元に戻るよ。俺たちもそのためにいるし。何年、何十年かけて力を戻せるかは分からないけどさ」


 何か、精霊のためにできることはないだろうか。

 家族も友人も亡くしたルチアに今できることは、復興の手伝いをするだけだった。


「あ、できたらでいいんだけど、舞巫女殿にやってみてほしいことがあって」

「や、やりますよ!」

「返事が良いねーそれがね、舞いをやってほしくてさ5日に1回できそう?」

「っやります!」


 食いつくように返事をするルチアに、ウォリスは嬉しそうに笑う。


「4年、まずは4年耐えてほしい。その間に後任の巫女と教会の体制を元通りにする。キミには負担をかけてしまうけど……俺もしばらくここに滞在してサポートできるようにするから」

「はい。お気遣いありがとうございます」


 ルチアはこの地域の舞巫女としては長い任期になるだろう。それでも生まれ育ったこの地と精霊のためにできることはこれしかないのだからと、やる気をみなぎらせた。

 それに、こんなに頼りがいのあるウォリスお兄さんは今だけだ。頼りがいが今までなかったわけではないが、フラフラしていつも何をしているのか分からないような彼とは違った。


「……あの、すみません」

「何?」

「ウォリスお兄さんの周りに精霊さんがいないのって、なにかあったんですか」

「あー、そうだよねぇ分かっちゃうよねぇ」


 ウォリスは頭を掻くと、落ち着けるところに座って話そうか、と提案した。


 *


「の、呪いですか……!?」

「ちょっとしくじってさ」


 教会があった場所に簡易的に設置された椅子に座っている。

 ウォリスはローブとシャツに隠された左腕を露わにさせた。そこにはミミズ腫れのように黒い線が走っている。


「魔法を使うとすごい痛くなるんだよ。呪いは精霊も嫌がるから自分の魔力しか使えないしさ」


 ウォリスが小さく詠唱すると、腕についた黒い線がまるで生きているかのように鼓動する。


「見た? キモくない?」

「きもい……」


 気持ち悪いし、痛そうだし最悪である。

 魔法を使ったため、左腕に激痛が走ったからかウォリスは脂汗を流している。


「それ、治せないんですか?」

「簡単には外せないって。この呪いを付けた相手が相手だから……まあ大精霊様の祝福をもらったら治るらしいよ。今大精霊様使いものにならないけど」

「さいあくだぁ……」


 大精霊が砕け散っている今、彼の左腕をどうにかできる手段はない。


「とりあえず数十年はマゾ系魔術師として活動するか、隠居するか養ってくれる人を探すかだよね」

「大精霊様が早く復活してくれるように頑張るのは……?」

「まあ、それもね。頑張んないとね」


 他人に養ってくれる気満々のウォリスは、あーね、と頷いた。


「何をしてあげるのがいいとか分かりますか?」

「うーん、それこそ舞巫女の舞とかは直接の効果はアレだけど、下位精霊を集めたり人の元気パワーを作れたりするから良いでしょ? あとある程度力がまとまりだしたら供物あげるとか?」


「供物……何が喜ばれるでしょう」

「ええ~? 面白そうなやつとか? 変な味のごはんとか持ってったら喜ぶんじゃない? てかホントに供物に反応できるようになるのは5年くらいかかると思うから今焦んなくていいよ」

「そ、そうですか……」


 昔の本ではそれこそ収穫した食材や狩った動物を大精霊に献上していたと書かれていた。

 近年、供物はいらないくらいに土地が荒れることもなく精霊たちも穏やかに過ごしていたから、そのような文化はなくなっていたようだが。


 しかし、焦らないということはできない。

 両親も友人もお世話になっていた教会も全て無くした。舞巫女としての役目もあと4年だという。

 きっと4年後には村も元通りになっていて、身寄りのないルチアの居場所はないだろう。




 お父さんとお母さんが守ってくれた私の価値を無駄にしたくない



 *


 赤毛の少女は4年間舞巫女として舞い続けた。

 ホム村の復興の手伝いも積極的に動いていた。

 大精霊の復活の助けになればと精霊についてもより意欲的に勉強した。

 14歳になった少女は舞巫女の解任後、村の食堂で働いた。愛想の良い少女は、食堂を経営する夫婦に可愛がられた。


 小さな精霊たちが活気を取り戻した。

 15歳になった冬。少女は生まれ育った村を出た。


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