3話
意図せず冒険者の切符をつかめたが、あの後詳しい話を聞いたところ、ユースといっても学校のような場所ではなく、月に一回ユース生で集まる機会があって、週1で無料で自分に合った講座を受けれるというもののようだ。
どの講座を受けるかが変わるため、早速どの武器種を使うかを決めるそうだ。一応あの時決めたプランはあるけど、うまくいくのかどうか。
そうしておやじさんに連れてこられた部屋はどうやら訓練場らしく、様々な刃を潰された武器が並んでいた。
「さあ、何の武器を使うかを決めてもらうわけだが、すでに決めてたりはするか?」
「はい、片手剣と盾を使おうかなと」
「ずいぶんと堅実な選択肢だな。だが悪くねぇ、ソロでやるにしてもパーティーを組むにしても困りはしねぇだろう」
ほれ、持ってみろと言われ渡された剣と盾は共に過ごすには重く、命を掛けるには頼りになる重量であった。試しに振ってみると、さすがに身体が持ってかれるほどではないにしても、全力で振り続けるのは厳しいと言わざるを得なかった。
「まずは体力づくりと筋肉をつけることだな、まぁ低層で活動してるうちに付いてくるだろ」
「せっかくだ、戦ってみるか?」
まったく戦い方なぞ分からないが、思いついた動きを試していたとき、おやじさんはそんな提案をしてきた。
「ぜひお願いします!」
「じゃあ、お前さんは俺に刃を一回でも当てたら勝ちでいい」
「胸を借りるつもりでいきます」
そう言い放ち、俺は姿勢を低くしながら走る。おやじさんの持っている武器は一般的なロングソードであり、小回りはそこまで効かないはず。ただ、どう考えても強いだろうから思い込みは厳禁。
走った勢いそのままに、斜めに袈裟切りする。当然おやじさんにロングソードの腹で受け止められながら流された。ただ近づけた。この短い間合いならこちらのほうが有利なはず、そう思い剣で切り、かからずに盾で殴る。さすがにおやじさんも予想していなかったのか剣の柄頭でなんとか防御を間に合わせる。それを読んでいた俺は盾に込めていた力を抜き引く、そうして剣を全力で振る。
あと少しで当たる、と思ったとき、急激な衝撃の後俺は天井を見ていた。どうやら蹴られたらしいが、人智を凌駕しているスピードだった。急いで立ち上がり、もう一度走ろうとするも身体内部にダメージが入ったのかよろけてしまう。
「ここまでだな。すまない、一瞬本気で蹴っちまった」
「本気を一瞬でも出せたということで満足しておきます」
「言うじゃねえか。ただその通りだ、初めてにしては相当筋が良い」
実際自分でもここまでできるとは思ってなかった。正直切るフェイントからの盾殴りは土壇場で思いついたアドリブであったが何とか形になってよかった。
「これ、武器の貸し出しとかはありますか?まだ武器とかも持っていなくて」
「ユース生は最初の武器だけくれてやることになってる。安心して持ってきな」
ユース生という特権すごすぎないか?こんなのに年齢制限がないとかユース生だらけになりそうだが。
「ありがとうございます。あと、今日の宿代と食事代を稼がないといけないので、何か俺でもできる依頼とかないですか」
何とか思い出したがそういえば今の俺は住所不定・無職・一文無しという犯罪者まっしぐらな状態であった。
「一応ユース生用の宿舎があるからそこなら飯もでるぞ」
「えぇ?ユースとはいえ、なんでそこまで?」
「言い忘れてたがな、ユース生って毎月活動報告する義務があって、一切の努力や成長が見られないとユースから除名なんだ。けど本気で冒険者を目指すお前なら大丈夫だよな?」
「も、もちろんじゃないですか、ちなみに除名になると?」
「普通に金を払ってもらうぞ。それが出来なければ冒険者ギルドからの除名になる」
それ一番大事なやつじゃないか。まぁそもそもこちら側にメリットしかない制度だとは思ってたけど。
「それじゃ、宿舎に案内するからついてこい」