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1話

どうぞよろしくお願いします。

「っ!!」



目を開け、辺りを見回すと微かな月光に照らされた暗闇が続いていた。地面は薄く水が張っており、足を動かすと水紋がどこまでも広がっていった。



身体は自分のものであるようだ。記憶も、考え方も、20年間培ってきたもののように感じる。



目の前に急に光が現れ、思わず目を閉じる。



うっすらと開けると、あえて言葉にするなら月の女神とでも言うべきか、自分の身体より数倍ほど大きいそんな女性が立っていた。



「ここにいる理由は教えてくれるのでしょうか」



見るからに自分と同じ種族ではないように感じるが、やはり神様のような存在なのだろうか。



「近代国家の方ですか。残念ですね」



近代国家に生まれた事に感謝することすら少なくなった現代、まさかそれを憐れまれるとは。



「まるでそれ以外の時代の方とも話したことのある口ぶりですね。それに、残念とは」



「ここにいてまだそんなことが言えるのですね。まぁ良いでしょう、単刀直入にいいます。あなたは私の指定する剣と魔法の世界に転移していただきます」



先ほどから一つも質問に答えてもらえていない。言うまでもない、もしくは言う必要のないことという意味なのか。



「転移ですか、それに剣と魔法の世界。私に魔王を倒せとでも?」



「それはあなたが決めることです。私はあなたの才能の決定を見届けるだけですので」



転移だの魔法だの、いかにもな要素が並んできた。それなのにも関わらず、目標はないと言う。脳が追いついていないのもあるだろうが、随分と納得性の低い話だ。



「才能の決定?そんな事を決めれるほど若くはないと思いますが」



私がそう言うと、目の前に半身ほどの黒い板が現れた。そこには、筋力、器用、俊敏、魔力など、作品によく出てくるような項目が並んでいる。



「これは?」



「才能の再決定です。項目の隣にあるアルファベットが才能の上限値、また向上のしやすさを表しています」



「随分と優しい事で。筋力がD、器用がC、…知能?記憶?どちらもAとなっていますが」



「最初に述べたとおりです、残念ですねと。それら全ての才能は上げ下げすることが可能となっております。また、魔法というあなたには存在しない力であるため、魔力とひとつの属性を選べる程度のポイントを差し上げております」



「つまり、この知能と記憶を下げると?」



「バカになりますね。理解と物覚えが悪くなります。あと記憶を下げると脳の容量が足りなくなり、あなたの転移前の記憶も薄くなります」



クソッ、残念ですねってそういうことかよ。ほんとに脳筋になれってか?ふざけるなよ



「魔法は覚えられないと死ぬのか?あと、戦闘でトップに立つにはどんな才能ならなれる」



「いえ、そんなことはありません、ただの餞別ですから」



「そうですね、例外もいますが大半はSをどれかしら持っていますね」



魔法なんてとってる余裕はないな、主に戦闘で使いそうな才能は、筋力、器用、俊敏、あたりか。元々のランクはD、C、D。



「魔法の分を筋力と俊敏に振ったらどうなる」



「どちらもCになりますね。少し残るので、ほんの少しだけ魔力を感じ取れるEにならできますが」



「いや、いい。それより、両利きにすることはできるか?」



「器用がBになれば付くものですが、両利きだけなのであれば良いでしょう。しかし、良いのですか?双剣であなたが言うトップに立ちたいのであれば器用と俊敏が最低でもAは必要ですが」



「どこにそんなポイントが残ってんだよ、ならそれで良い」



「あるじゃないですか、たくさん。バカになれば強くなれますよ?どちらもCにしたら、今Cの才能ひとつSにできますが」



「バカみたいなこと言うんだな。俺は20年間この頭脳で生きてるんだ。そんな事をしてみろ、俺が俺じゃなくなる」



「バカになるのはあなたですがね」



「うるせえな」



嘲笑気味に言われたその言葉たちは、どこまでも胸の内で反発しながら響いていた。そしてその言葉を皮切りに、身体が光り始める。転移が開始するようだ。



今思えば、ここで散々コケにされたことは俺がトップを目指すという目標の上で重要な事だったのかもしれない


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