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ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高校生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~  作者: エース皇命
恋人と常にラブコメ編

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第56話 見た目だけではわからないよねという真理

佐藤(さとう)……まさか本当に冒険者になったんだな」


「まだ冒険者になったばっかりですよね? なんでもう13階層にいるんですか? わたし追い抜かれたんですか?」


 本気で心配する楓香(ふうか)

 冒険者になって数日で13階層。明らかにおかしい。


 俺でも最初は4階層くらいまでが限界だった。


 佐藤は答えない。

 襲いかかってくるモンスターを黄金色に輝く長剣で迎撃し、一瞬で塵へと変えている。


才斗(さいと)くん? もうわたし追い抜かれちゃったんですけど!」


「……」


 上手すぎる剣捌きに言葉を失う。


 今佐藤が使用している動きはルーテン派のものだ。

 ルーテン派は安定的なフォームで、手首のスナップを利用して攻撃を弾く。俺が最も得意とする剣術の(フォーム)でもあった。


 それだけに、今の佐藤の動きがいかに無駄がなく、美しいのかが理解できる。


 こちらに歩いてくるその様子は、まさに上級冒険者そのもの。


 貫禄まで感じるほどだ。


「あり得ない」


「ですよね!」


「あの動きは何年も修行を積まないとできないものだ。それも、ちゃんとした指導を受けながらな」


「でも、実際できてるじゃないですか」


「そう。それが問題だ」


 これは別に嫉妬とかじゃない。

 あり得ないんだ。


 体から出ている魔力の量も、明らかにFランクやEランクのものとは異なっていて、強化されている。


「ヴェルウェザーがドーピングでもさせたのか……?」


「冗談ですよね?」


「俺はいつでも本気だ」


 佐藤と俺たちとの距離が縮まる。


 僅か3メートル。

 この距離が絶妙な緊張感を引き起こしている。


 気を抜くことはできない。なぜなら、この佐藤は俺が知る佐藤じゃないから。楓香よりもずっと長く関わってきた相手だ。

 様子がおかしいことくらいすぐにわかる。


 彼女の瞳を見た。


 視線が絡み合い、緊張が走る。


 まだお互いに手を出していない。話し合いで解決する可能性もあるかもしれない。


 だが――。


 目を見たらわかってしまう。

 あれは明らかに好戦的な目だ。獣の目をしていた。早く戦いたい、勝ちたい、そんな闘争精神真っ盛りの瞳だ。


 そして俺は。

 1つの結論を導き出す。


「お前は佐藤じゃないな」




 ***




「誰だ?」


 13階層での沈黙。

 俺レベルまで来れば、ここで襲いかかってくるモンスターなど単なるモブに過ぎない。


 たとえ視界に入っていないところから攻撃してきたとしても、感覚でモンスターを認識することができた。


 見えたら斬る。

 感じたら斬る。


 ただそれだけ。


 楓香はまだモンスターに怯えてるらしいが、俺が守ってやれるうちは大丈夫だろう。


「どうしてわかったんすか? どこからどう見ても佐藤勝海(かつみ)でしょ、ぼくちゃん」


「本当の姿を見せろ」


 佐藤の姿をした誰かは、諦めたように口調を変えると、軽くポンっとネックレスをタップした。


 俺たちの腕時計と同じテクノロジーが使われているらしい。

 ナノテクを使いこなせる科学者はそういないと思うんだが……。


 俺たちが一瞬でスーツに変身するように、偽佐藤も本来の姿に変身していく。まあ、これが本来の姿なのかはわからないが、少なくとも佐藤の姿じゃないことは確かなこと。


「じゃじゃーん。どーすかどーすか。ぼくちゃん、可愛いでしょ」


「まだ子供……?」


 現れたのは少年だった。

 身長は低い。150センチくらいだろうか。


 小学生高学年から中学生くらいの容姿。

 服装はしっかりスーツだ。戦闘服なんだから当然ではある。


 最初の違和感はスーツを着た佐藤だったという話はここだけの話だ。佐藤のスーツ姿なんて見たことがなかったわけだし。


「子供ですけど、どうします?」


 楓香が小声で聞いてきた。

 多分本人にも聞こえてる。


「見た目は子供でも、あのオーラと戦い方を見ればわかるだろ。間違いなくプロの冒険者だ。闇派閥が関わってるだろう」


「闇派閥……それって、【ダークエイジ】のことすか?」


「ダークエイジ? 組織の名前か?」


「あ、これ言っちゃダメだったんすかね。もう知ってると思ってました。あちゃー、余計なこと言ったなぁ」


「いいことを聞かせてもらった」


「面白いっすね、黒瀬(くろせ)さん。ぼくちゃん、ヴェルウェザー様から黒瀬さんと遊んでくるよう命令されたんすけど、結構楽しめそうっす」


「遊んでくるって、そのままの意味じゃないよな……」


 簡潔に言えば、戦ってこい。


 それが答えだ。


「わかってますねぇ、黒瀬さんは。それじゃあ、ちょっと失礼して」


 目の前にいた少年が姿を消し、背後に現れる。


 瞬間移動したのかと疑ったが、僅かな残像を捉えた限り、超高速で移動しただけのようだ。


 厄介なガキだな。


「まだ攻撃はしてこないんだな」


「最初は黒瀬さんの攻撃を味わってみたいんすよー」


「随分と呑気だな」


「どーせ勝ちますしね。あ、この前一ノ瀬(いちのせ)さんと戦ったんですけど、いいところで逃げられたんすよねー」


 これは一ノ瀬が嫌がりそうなネタだ。覚えておこう。


「実力には相当自信があるみたいだな」


「そんなとこっすね」


「わかった。それなら、俺もそれ相応の戦い方をさせてもらう。つい先日、Sランクに昇格して得た超能(スキル)――この力でお前を黙らせる」

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