表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高校生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~  作者: エース皇命
休日と大阪出張編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/140

第49話 駆け付けたら全てが終わっているというアレ

 真一(しんいち)と姉さんがジェシカと死闘を繰り広げている。


 だが、今の俺には、そんなことなんてどうでもよかった。

 ヴェルウェザーの言葉のせいで、2人の奮闘も単なる雑音でしかない。


「……お前が、俺の両親を殺した……そういうことか?」


『その通りだ。厳密に言えば、ボクたち――キミの両親は当然ボク1人の手に負えるような相手ではない。だからそこにいるジェシカにも手伝ってもらったんだ』


「……姉さんもなのか?」


『嘘はつけない。キミの姉は残念ながら不参加だ。あの時はまだ戦士として使うには実力不足だった』


 ヴェルウェザーの本体がどこにいるのかわからない以上、俺の殺意はこの階層にいるジェシカ1人に注がれる。


 ――あいつを殺したい。


 今まで敵討ちを目標にしていた。

 29階層に行って【漆黒のデュラハン】を殺す。それが両親を殺されたことの復讐であると、そう思っていた。


 それなのに、俺が本来殺意を向けるべき相手は【漆黒のデュラハン】なんかじゃなかった。


 結局は人間だった。


 人間の最大の敵は人間だと、この時改めて感じた。


 ――両親の(かたき)が、目の前にいる。


 実力は俺の方が下だ。

 ジェシカの実力はSランク冒険者にも届くだろう。


 それに加え、俺はかなりの深手を負っている。腹を貫かれ、本来の力を発揮することができない。

 剣を握ることも難しいような状態だ。


「本当なのか?」


 今度はジェシカに問う。


 2人と戦いながらでも、ジェシカには質問に答える余裕があった。


「本当だと言ったら、どうする?」


 その瞳は挑戦的だ。

 殺意を向けられることを喜んでいるのかもしれない。


「お前を殺す」


「面白いね。ウチはあんたを殺せない。でもあんたはウチを殺せる。実力は明らかにウチが上。今のあんたは満身創痍」


「そうだな」


 ジェシカの集中が俺にそれたことがきっかけで、真一の攻撃が当たるようになる。剣を斜めに回転させながら放った一撃は、ダイレクトにジェシカの腕を斬った。


 だが、斬り落とすまでには至っていないし、斬られたジェシカもさほど痛そうではない。

 感情がマヒしているだけなのか、本当になんともないのか。


 今度はそれをきっかけに姉さんが飛ばされた。

 邪魔だと判断されたんだろう。


 ジェシカが剣で空気を斬っただけで、Aランク冒険者並みの実力を誇る姉さんでも戦闘不能に陥る。そんな相手を、俺は殺そうとしている。


「だが俺は今、過去最高に調子がいい」


「……?」


 殺意、復讐心。


 この2つの醜い感情は、人の体調やコンディションに大きな錯覚を起こす。


 肉体は悲鳴を上げているはずなのに、みなぎるアドレナリンのおかげで俺の体はいつも以上に軽かった。

 目の前の女を殺せば、復讐の1つが成立する。


 あとは主犯であるヴェルウェザーを始末すればいいだけの話だ。


 体から魔力が溢れ出る。


 冒険者は本来、魔力を体内に秘めているものだ。派手に炎を放ったり、氷の刃を飛ばしたりできる冒険者はごく稀だ。


 魔力はその冒険者が持つ剣を巡り、そのまま体内へと戻っていく。

 その循環の速度が高ければ高いほど、体の反応速度は上がっていく。


 可視化できるほどのオーラが、俺の体を包み込んだ。真っ赤な、怒りのオーラ。俺の瞳の色によく似ている、瞋恚の炎。


「これは……」


才斗(さいと)くん……」


 ジェシカでさえも言葉を失う。


 すぐ後ろで見ている楓香(ふうか)が弱々しく呟くのが聞こえた。


「真一、姉さん、危ないから離れていてほしい」


「「……」」


「俺がこいつを片付ける」




 ***




(さい)くぅーん!」


 涙目でダンジョンに潜る西園寺(さいおんじ)


 当然、ダンジョン・ドームで政府の役員と顔を合わせる時には威厳を保っていた。


「ええい邪魔だゴブリン! オレは才君のところに行くんだよぅ」


 1階層。


 2階層。


 3階層。


 彼ほどの実力者になれば、ダンジョン上層から中層にかけては散歩のようなものだ。


 ちなみに、もう1人の青木(あおき)は西園寺のそばにいない。


 青木の能力は分身ではなく、復活。

 社長室で西園寺と話していた青木は、本体として場所を制限された青木だった。その本体が生きている限り、彼は死んでも再生し続ける。


 今のところ、全国トップクラスの実力を誇る西園寺が本体を守っているため、青木の命は安泰だ。


 ――18階層か……中島(なかじま)君にはダンジョン・ドームで待機してもらってるし、まずは才君を連れ出さないと……。




 ***




「……え?」


 西園寺がダンジョンに潜って5分。


 恐ろしいほどの速さで18階層に着いていた。


 しかし……そこには、血まみれで倒れたハーフの女冒険者と、黒瀬(くろせ)天音(あまね)、青木、白桃(しらもも)


 そして呆然と立ち尽くす黒瀬才斗がいた。


 ――もう終わってる。


 不思議なことに、才斗の体に傷は見当たらない。

 血も流れていないし、斬られた痕もないようだ。


 敵の女冒険者は息をしていた。

 血まみれで、気を失っていて今にも死にそうな感じがしたが、息はしていた。


 4人の視線が西園寺に集まる。


 西園寺はすぐにいつもの(・・・・)社長モードに切り替えた。


「……何があった?」


「社長……才斗が……」


 青木が緊張しながらも口を開く。才斗のことに関しては責任も感じているのだろう。


「才斗が……この冒険者を倒しました……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ