第46話 奇跡の復活を遂げる大阪のフェニックス
思い出せば、俺は復讐のために冒険者になったんだった。
全ては復讐のためだ。
29階層。
ダンジョン攻略なんて、正直どうでもいい。闇派閥も、どうでもいい。
ただ29階層に行きたい。そして、そこのボスである【漆黒のデュラハン】を殺したい。
10歳のあの日から、一度も忘れたことはなかった。
俺の両親を殺害したモンスター。それが漆黒のデュラハン。冒険者がモンスターと戦うのは当然の秩序。
その秩序の下、両親は負け、モンスターが勝った。
もしこれが他人事であれば、単純にそう解釈することができるかもしれない。
だが、現実は違う。
自分がその立場になった時。自分の大切な人がモンスターの餌食になった時。
人は猛烈な殺意を覚える。
仕方のないことなのかもしれない。冒険者がモンスターに殺されるというのは宿命みたいなものだ。両親はむしろ誇りに思ったのかもな。
だが割り切れない。
この煮えたぎる殺意をどこに向ければいいのかわからない。だから、俺はこの7年間、【漆黒のデュラハン】に全ての殺意を注いでいた。
「才斗」
「姉さん」
お互いに視線を絡ませ合う。
7年ぶりに、俺は本物の家族と再会した。
姉さんとはずっと生き別れになっていたので、家族と言えるのかはわからない。
だが、血の繋がった姉と弟であることは確かだ。
だから俺は、この繋がりを大事にしたい。彼女が俺の仲間を殺していたとしても――。
「久しぶりやなぁ、ていうても、何日か前に会議でおうたなぁ」
ジェシカと戦っている最中の出来事だった。
耳馴染みのある関西弁。
誰かの声を聞いて、こんなに胸が高鳴ったことはない。
「スミレさんやないか。首斬られるのは痛かったで」
「あなたは……青木真一……なぜ……」
「本気で彼女できた思ってたのに、初心なおれの心を粉々に壊してくれはったな」
「それは……ごめんなさい」
自分を殺したことのある相手に対して、優しすぎるほど穏やかに話しかける真一。
死んだはずの真一が生きていた。
その事実が、俺たちの時を止める。
ジェシカもヴェルウェザーに言われているのか、真一のことは知っているようだ。姉さんが殺したことも知っていたんだろう。
目を丸くして固まっている。
激しくなりかけていた戦いが一旦中断した。
「生きてたのか?」
「そうやな。首を斬られても、人間生きられるいうことや」
「……」
これはジョークなのか。
今の科学では死んだ人間を復活させることはできないし、魔法では禁忌とされている。
「どうやって生き返った?」
「なんやおれの超能知らんの?」
「スキル?」
「そうやな。Aランクの才斗にはわからへんかもやけど、Sランクにもなれば特別な力、超能が授けられるんや」
冒険者はランクアップをする際、また【選別の泉】に浸かることによって今まで以上に強い力を手にする。
AランクとSランクの差はFランクとAランクの差ほどあると言われている。
「つまり、Sランクに昇格すれば、今まででは使えなかったようなチート能力が得られる、そういうことか?」
「そ。ほんで、おれは死なない能力やったちゅーことや」
死なない能力。
パワーワードすぎる。
「面白いこと言うね。じゃああんたを殺すにはどうすればいいって? せっかくゲストとして呼んでもないのに来てくれたんだ。殺すことで歓迎したい」
ジェシカが口を開いた。
確かにそれは俺も気になる。
別に真一を殺したいわけじゃないぞ。
「からくりを敵に教えるほどアホやないで、おれは。な、スミレさん? いや、ヴァイオレット」
「……私は――」
「詳しい話は後や。社長からあんたが才斗の姉かもしれんってのは聞いとったんやけど、どうやらほんまに姉弟みたいやな」
「才斗は、私の、大切な弟」
真一が笑った。
それを見て、彼の神経を疑う。
姉さん――いや、ヴァイオレットは真一に嘘をつき、首を斬り落とした女だ。
もしかして、まだ姉さんに惚れているんだろうか。
「洗脳が解けたみたいやな。社長の言う通りや。ほな、おれと付き合ってくれへん?」
……まさかとは思ったが、真一がアホなのは生き返っても変わらないということがわかった。




