第42話 実力者たちが力を発揮していく圧巻のステージ
ソードナイトこと山口剣騎は、大阪の街中で派手な戦闘を繰り広げていた。
剣劇。
一般人が入り乱れる街中で、剣と剣がぶつかり合う音が響く。
戦っている冒険者がソードナイトであると気付いた一般人らは、すぐさまスマホを彼の戦いに向け始めた。
「みんな、逃げて!」
山口が叫ぶ。
しかし、その言葉は届かない。
当然ながら、この状況に巻き込まれることを恐れて慌てて逃げる一般人も大勢いたのだが、スマホを構える民衆は相変わらず。
生で繰り広げられる冒険者同士の戦い。
これが本当のバトルではなく、いきなり始まったショーであると勘違いしている人もいるのかもしれない。
「まったく、なんでこんなところで攻撃を仕掛けてくるのかなぁ……」
序盤は半ば奇襲に近い形だったため、なかなか反撃できない戦況だった。
しかし、今では感覚をつかみ、互角にやり合うことができている。
「君、思ったほど強くないね」
「お前の質問に答える義理はない」
「毎回そのセリフ言うのかい?」
筋骨隆々の冒険者はもう答えない。
――これ以上質問をしても何も成果は得られなそうだ。
軽く溜め息をついた山口は、相手の大剣を弾き返し、素早く斬り込む。
山口は小柄で、相手は大柄。
この体格差をポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかが、勝負の分かれ目だ。
山口はむしろ自分が有利であると考えていた。
体が大きいというのは的も大きいということ。
リーチが長いのは大きなアドバンテージかもしれないが、自分のリーチが相手より短い分、細かい動きがしやすいというメリットもある。
ソードナイトという冒険者名からもわかる通り、山口は剣術に長けている。黒瀬才斗も山口から剣術の手ほどきを受けているほど。
今の日本で山口の剣術に匹敵する者など、西園寺龍河か、バトルホークス所属のSSランク冒険者くらいだろう。
「君の剣術は悪くない。攻撃重視のナゴルニー派だね」
「お前の質問に答える義理はない」
「別に質問じゃないさ」
山口は何が面白いのかふふっと笑うと、そのまま間合いを詰め、相手の腹に拳を打ち込んだ。
「――痛っ!」
思わず声が出てしまうほど、硬い。
筋骨隆々の見た目から予測できる通り、筋肉という装甲はそう簡単に打ち破れるものではなさそうだ。
「でも、勝てない相手でもない」
山口の頭の中には、勝利のビジョンが見えていた。
***
――西園寺の言う通りここまで来てみたが……。
ダンジョン24階層。
Aランク以上の冒険者しか立ち入ることのできないような深い階層に、ウルフパックのSランク冒険者、一ノ瀬信長が立っていた。
次々と襲いかかってくる上級モンスター。
しかし、一ノ瀬にしてみれば、24階層のモンスターなど大した相手ではない。
彼に24階層へ行くよう指示を出したのは、ウルフパック社長の西園寺だ。
一ノ瀬は西園寺に対して猛烈なライバル心を抱いているものの、彼の大きな器と高い実力は誰よりも認めていた。
そのため、西園寺からの指示であれば、何か意味があるのだろうととりあえず従うことにしている。
――あいつが俺の期待に応えなかったことはない、か。
その細い糸目で周囲を警戒し、細かい変化に神経を尖らせる。
そして――。
「ついに来たか」
「こんにちは! あなたが一ノ瀬さんですね?」
視界の片隅からひょこっと現れたのは、明らかに纏うオーラが他とは違う少年だった。少なくとも、その幼い容姿からは少年だろうと予測できる。
身長は150センチほどで、まだ中学生くらいなのではないかと思われる。
「ウルフパックの壊滅が狙いか?」
「違いますよ、一ノ瀬さん! ぼくちゃんはただ、戦いを楽しみたい! でも、ゴミみたいに弱い冒険者を殺すのじゃダメなんです。それなりに強者じゃないと、ね?」
「強者との戦いが望みか」
「そうそう、話がわかる男ですね、一ノ瀬さーん」
少年は異質だ。
可視化できるほどの膨大な魔力を持っていて、満面の笑みで一ノ瀬に近付いてくる。
「サイコパスめ」
「えー酷いなー。ぼくちゃんなんかより、ぼくちゃんの雇い主の方がサイコですよー」
「雇い主……そいつが組織の頭か?」
「そういうことになるっすね」
顔の筋肉がすっかり凝り固まったような満面の笑みを見せる少年。
会話はこれで終了する。
次の瞬間には、少年は背後にいた。
「遅い!」
「――ッ」
「お?」
少年は確信していた。
一ノ瀬でさえも、自分の速すぎるスピードにはついていけない、と。
しかし一ノ瀬は少年の予測を超えてきた。
すぐさま背後に剣を向け、視界から外れた位置で攻撃を防いだのだ。それも、一切表情を変えずに。
「勘違いしてました。ぼくちゃんより、雇い主より、あなたの方がずっとサイコなんですね」
「黙れアホが」
悪態をつく一ノ瀬。
それもそのはず。
攻撃を防がれたことに対し、少年は本気で喜んでいた。
「さいっこうっすね! じゃあぼくちゃん、そろそろ本気出します!」




