表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高校生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~  作者: エース皇命
上司としての責務編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/142

第27話 主人公とヒロインが結ばれそうな雰囲気

 キングオーガは大きくて鋭い角を持った、鬼の最終形態だ。


 普通は10階層に出てくるモンスターじゃない。

 階層に適さないモンスターが出てくることは、ダンジョン3大悲劇の1つとして数えられている。


 ちなみに、残り2つは仲間を見殺しにすることと、半殺しにされて地上に帰還すること。


 楓香(ふうか)はこの3つをセットで一度に経験した。

 強烈なトラウマが残るには十分すぎるくらいだ。


才斗(さいと)くん、もしかしてここは……」


「まだダンジョン10階層だ」


 目の前で楓香が怯えたような声を上げる。


 彼女にとっては因縁とも呼べる場所、ダンジョン10階層。できるだけ近付きたくないのかもしれないが、ここを乗り越えられなければ次のレベルに進むことはできない。


「嫌です……地上に帰りたい……」


「楓香……」


「わたしは弱くてもいいから……お願いします、才斗くん。わたしを抱えて上の階層に……」


「悪いが、それはできない」


 俺がしていることは残酷なことだ。


 無理やり過去のトラウマと向き合わせようとしている。


 楓香が本気で恐れ、避けてきたものを差し向けようとしている。


「今からキングオーガに会いにいく。楓香はそのキングオーガを倒す必要がある」


「……お願いだからぁ……」


 ぽろぽろ、と。

 こぼれる涙。


 それは恐怖と絶望の涙だ。


「大丈夫だ。俺がいる限り、楓香が死ぬことはない。もちろん、俺が死ぬこともない。お前なら無傷でキングオーガを()れる」


 無表情のまま楓香を起こすと、グイッと階層の奥に引っ張っていく。目指すは11階層の入り口。

 そして11階層のボス部屋。


 白桃(しらもも)楓香は今日――進化する。




 ***(白桃楓香視点)




 全身が震え、力が入らない。

 わたしを引っ張る才斗くんの顔からは、何の感情も感じ取ることができなかった。


 ――怖い。


 才斗くんが怖い。


 彼は今、わたしを絶望に案内している。


 ずっと憧れ、目指してきた才斗くん。

 わたしもいつかAランク冒険者になって、お金だっていっぱい稼いで、ママにいい暮らしをしてもらうんだ。


 でも……あの時(・・・)からわたしの中の向上心はすっかり拡散してしまっていた。


 強くなることより、10階層を避けること。

 別に、9階層までしか行けなくても結構稼げるし。無理に下層に降りていって死んじゃったら、それこそ本末転倒。


 ――だからいいんだ、これで。


 わたしはCランク冒険者のままで、いいんだって。


「俺は楓香が今までどんな生き方をしてきたのか、どんな考えを持っているのか、そんなことは知らない」


 わたしを引っ張りながら、才斗くんが語りかけてくる。


「だが、少なくとも今の(・・)楓香は知ってる」


「――ッ」


「俺の知る楓香は、いつも元気で前向き。ふざけることも多いし、下ネタも平気で言うような奴だが、俺は結構好きだ」


「……」


 才斗くんがわたしを見つめてきた。


 好きだ、だってさ。

 そんな言葉、才斗くんにかけてもらえるなんて。


 嬉しくてたまらない。

 目の前の才斗くんに強いところを見せたいし、才斗くんに褒めてもらいたい。


 でも――。


「わたしは戦えません。こんな状態じゃ……キングオーガに殺されます……」


 ――なんて弱いんだろう、わたし。


「あれだけ濃厚なキスをしておいて、戦えないとはな」


「……え? キス……?」


「俺のファーストキスだったんだ。それをあんなに強引に奪った女には、もっと強くあってもらいたい」


「ファ、ファーストキス? え、わたしが?」


 ――どういうこと?


 わたし、才斗くんにキス、したの?


「まあ、キスしたのはお前のもう1つの人格だがな。見た目は楓香だったから、そう言っても間違いじゃない」


「もう1つの人格?」


 待って。

 才斗くんが何言ってるのか全然わからない。


 真剣な顔で言ってくるし、この状況だし。

 嘘ではないんだろうけど……そんなのって……。


「もう1人の楓香は、俺を殺そうとしてきた。だが、その猛烈な殺意の裏に、猛烈な()を隠してた」


「殺意? どうしてわたしが才斗くんを……?」


「第二の俺を期待され、俺の過去と比較され、ライバル心が芽生え、気付けば殺意に変わっていた、そんな感じか」


「わたしが……」


 自分でも不思議なことに、その説明をすんなりと受け入れてしまった。


 ダンジョンに潜った時、わたしは半分意識を失っている。

 ぼやぼやとしたまま、モンスターと戦っている感覚がある。そして気付けば戦いは終わっている。


 それが日常茶飯事だった。


 でも、もしそれが普通のことじゃなくて、別の人格が引き起こしてることだったら? わたしの体を使う、もう1人の人格があるとしたら?


「……」


「楓香」


 名前を呼ばれて、才斗くんの顔を見る。才斗くんは謙遜しているけど、整った顔立ち。

 わたしの好きな顔(タイプ)だ。


「話してるうちに、11階層に着いた。ボス部屋の前だ。10階層なんて、大したことなかっただろ?」


「え?」


 才斗くんがほんの少しだけ微笑んでくれたかと思ったら……いつの間に。


 あんなに怖いと思っていた10階層を、難なく突破。多分才斗くんが襲ってくるモンスターを蹴散らしてくれていたからだと思うけど。


 ――ああ、やっぱり。


 ――この気持ちは間違いじゃなかった。ただの憧れの延長なんかじゃなかった。


「才斗くん」


「ん?」


「わたしがキングオーガに勝ったら……その……わたしと……えっちしてくださいっ!」


「はぁ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ