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第1話 転校生の美少女に絡まれるアレ

白桃(しらもも)楓香(ふうか)です。この時期に転校してくるのは珍しいかもしれませんが、仲良くしてくれると嬉しいです」


 高校2年の9月。


 高校生としての日々も半分過ぎ去ったというところで、1人の転校生が俺たちの2年3組に入ってきた。


「白桃さんの席は黒瀬(くろせ)の隣に用意してあるから、そこに座って」


「はい」


 いろいろ大変だった夏休みが明け、なんか自分の隣に席が増えているなぁとは感じていた。それで転校生が来ることを予測していたわけだが、この転校生は普通(・・)じゃない。


 肩にかかりそうでかからないミディアムの髪。


 透き通った肌に、通った鼻筋。

 いわゆる美形の顔立ち。


 背が高いわけではないものの、スラっとしていてスタイル抜群だ。


 ――美少女転校生、か。


 滅多に起こらない美少女の転校に、男子の大半は鼻の下を伸ばしている。

 俺だって彼女の雰囲気からあるもの(・・・・)を感じていなければ、美少女来たぁぁぁあああとか叫んでいたのかもしれないな。




 ***




 休み時間になると白桃の周囲には大勢の生徒が集まった。


 これぞ転校生の宿命。

 男子だけじゃなく、女子もたくさんいる。


才斗(さいと)はあのレディとお近づきにならなくてもいいのかな?」


「俺は遠慮しとく」


 前の席の大輔(だいすけ)が話しかけてきた。

 大輔はオタク気質があり、奥手な一面が強い。だからか堂々と白桃にアタックできないんだろう。


「あの、黒瀬才斗くん……だよね?」


 トイレにでも行こうかと席を立ったところ、周囲に集まる生徒たちを押しのけた白桃が聞いてきた。


「どうして俺の名前を?」


「そんなこと言わないでよ! わたしだよ? 楓香だよ!」


 そう言って、いきなり俺に抱きついてくる。


 ここまで女子と密着したのは初めてだ。

 思っていたより柔らかいし、やっぱり桃の香りがする。意識してるのかな。


「おおおおおおおい! 才斗! どういうことだ!?」


「黒瀬君、白桃ちゃんと知り合い? え、恋人とか?」


「俺たちの姫に手を出すな黒瀬!」


 クラスメイトたちが勝手に喚き始めた。

 こっちだって好きでこんな状況を作ったんじゃない。


「久しぶりだね、才斗くん。最近なかなか連絡くれないから、寂しかったんだよ?」


 そして、自ら爆弾に火をつける白桃。


 言っておくが、俺と白桃は今日が初対面。

 今まで会ったこともなければ、名前だって聞いたことがない。


「久しぶりだな。半年ぶりくらいか?」


「だね。積もる話もあるだろうから、ちょっと別のところで話そうよ。2人きりで」


 白桃がやっと俺を解放した。


 俺があえて話を合わせたのは、こいつと2人きりになるため。

 白桃も同じことを狙っていたんだろうし、その積もる話(・・・・)とやらを他の連中に聞かれるわけにはいかない。


「2人きり!? 今2人きりって言ったぞ! イチャイチャする気だ!」


「ヒューヒュー」


 俺は白桃に袖を引っ張られて廊下に連行される。


 それをクラスの友達は冷やかすような、妬むような、面白がるような、様々な表情で見つめていた。




 ***




「やっと2人きりになれましたね、才斗くん」


「それで俺に話ってのは?」


「わざわざ説明する必要あります?」


 誰もいない階段の踊り場。

 人はたまに通るので、細心の注意を払うことは忘れない。


 白桃は相変わらずその綺麗な笑顔を崩さなかった。


「【ウルフパック】から送り込まれてきた、ってところか。冒険者仲間だろ?」


「正解、才斗先輩(・・)


 俺を先輩と呼んだ白桃は、左手首に装着している腕時計を見せてきた。


 俺が今している腕時計とまったく同じものだ。

 これは単なる偶然なんかじゃない。この腕時計をはめていたからこそ、俺は白桃を警戒した。


「わたしは今日より、才斗先輩の直属の部下になりました! 山口さんからは才斗先輩を師匠として頑張れって言われてるんです」


「直属の部下……」


 まさかとは思ったが、そのためにわざわざ転校生として白桃を送り込んだのか。


 相変わらずクレイジーな組織だ。


 ここで、軽く状況を説明しておこう。


 ――この世界とダンジョンの関係を。




 ***




 30年前。西暦2000年。

 俺や白桃が生まれるよりずっと前。


 ――全世界にダンジョンが出現した。


 日本では合計10ものダンジョンが分布し、そのうちの1つが東京。今俺が暮らしている、日本一のダンジョン・シティだ。


 ダンジョンには多くの謎があるが、その中でも人類はダンジョンから多くの資源が得られることに注目し、ダンジョン産業が活発になった。


 ――ダンジョンには資源だけでなく、モンスターも存在する。


 そんなモンスターと戦い、富をもたらす存在。

 それが冒険者だ。


 冒険者は現代のヒーローと言われ、政府が容認する職業としても脚光を浴びるようになった。


 そんな冒険者は基本、なんらかの企業が運営する組織に所属している。

 日本二大冒険者企業と言われるのが、俺の所属する【ウルフパック】と【バトルホークス】。


 俺はその【ウルフパック】の幹部の一員として、高校生と冒険者という2足のわらじを履いて日々を生き抜いてきた。




 ***




 休み時間は10分しかない。


 俺と白桃は泣く泣く教室に戻り、授業の準備を始めた。

 周囲のクラスメイトの視線は痛いが、ここは耐えるしかない。


「才斗先輩、これからよろしくお願いしますねっ」


「……」


 隣で無邪気な笑みを向けてくる美少女。


 そんな直属の部下に、俺は沈黙を返すことしかできなかった。






《キャラクター紹介》

・名前:黒瀬(くろせ)才斗(さいと)

・年齢:17歳

・職業:高校2年生、ダンジョン冒険者

・身長:171cm


 日本のトップ冒険者企業である【ウルフパック】に所属する、Aランク冒険者。

 高校生でありながら、ダンジョンに潜って冒険者業をしている。これまではソロで潜っていたが、今後は直属の部下である白桃とダンジョンに潜ることになった。

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