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※※※


「すみません、お手洗いへ行ってきます」


 アイリーンを一人にするのは不安だったが、さすがに手洗いまで着いていくわけにはいかない。近くで待つと告げてアイリーンの背中を見送る。

 昨晩、エドガーは心に秘めた想いを抑えきれず彼女へ愛を伝えた。彼女はエドガーの気持ちに応えてくれた。


「わたしもエドガー様が好きです」とアイリーンに言われた瞬間、喜びが全身に込み上げてきた。自分を好きだと言ってくれた彼女のすべてを引き受けて守り、慈しもうと心に固く誓う。恵まれぬ境遇で育った彼女が、心から笑顔でいられるように見守ろう。一生をかけて彼女を愛しぬくと決めた。

けれど、エドガーにはアイリーンに伝えていないことがあった。アイリーンの目元の傷に関する重大な秘密だ。もちろんこのまま秘密にしておくつもりはない。彼女には秘密事など作りたくない。けれど、すべてを話すならばきちんとタイミングを計る必要がある。伝え方によっては、誤解を招きかねない。この話は慎重に進める必要があった。

そのとき、鼻にかかる甘ったるい女の声がした。


相手に媚びるような口調に聞き覚えがあった。視線の先には、アイリーンの義妹のソニアがいた。爵位の高い男性貴族の腕にしなだれかかり、上目遣いで見上げている。男性貴族は「悪いけど、心に決めた女性がいるから」と困ったように彼女の腕を解いて、テーブルを離れた。


「チッ! なにが心に決めた女性よ。あんなブスじゃどうせ振られるわよ」


 近くに誰もいないのをいいことに、ソニアは口汚く吐き捨てた。彼女の言動は品性下劣で、まるで令嬢とは思えない。ましてや、義理だとしてもアイリーンの妹だと思いたくなかった。

 すると、ソニアはエドガーの存在に気が付いた。先程まで眉間に皺を寄せていた彼女はぱっと表情を明るくして、エドガーの前まで足取り軽くやってきた。


「エドガー様……じゃなくて、辺境伯様、お久しぶりです」

「ああ」


 ソニアは義姉であるアイリーンが傍にいないことに気付き、にやりと笑った。


「もしかして、お一人でいらしたのですかぁ? ふふっ、お義姉様とはやっぱりうまくいかなかったのね」


(この女は、またもアイリーンを侮辱するのか……) 


侮蔑を含んだ口調にこめかみがピクリと反応した。相手が男であれば、一発殴りつけてやりたいぐらいだ。アイリーンをソニアや継母から離して正解だった。あの家には二度と近付けない。今後は社交の場であっても、この義妹とアイリーンを接触させたくない。エドガーの心の中はソニアへの嫌悪感で満たされていた。

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