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復活の魔王

 辺境セイント・レブ山脈の地下に眠る広大なダンジョン。


 30年ぶりの魔王復活の兆候を察知した領主は次期勇者の呼び声の高い自らの娘に手勢と傭兵団を与えてダンジョン攻略を命じた。


 激闘の末、一行は魔王を追い詰めていた。既に30人を数えた攻略部隊は3人まで数を減らし、残った3人も立っているのがやっとと言った状態であった。


「ここまでよ、魔王」


「復活したばかりの我を数を頼んで押しつぶすとは。人間はいつからその様に卑怯な存在に成り下がった……」


「あなたを放置すれば領民が苦しむ。だからよ」


 魔王は満身創痍で、しゃべるだけでも死期を早めていた。しかし、相対する女もこれまでに受けた傷や呪い、魔術攻撃の反動で力の多くを縛られ止めを刺すことができなかった。


「分かっておらぬ。おらぬな小娘よ……」


 魔王が苦しそうに笑う。


「いや、そなたの父親は分かっていたのか……。領主に伝えよ。お前の勝ちだ」


「そんなもの、決まっているではないか……。お前は死ぬ」


「小娘。次の魔王の復活までに、なぜ魔王が復活するのかを、考えて……、おけ……」


 そうして、魔王は息絶えた。


 


 こうして、世界は魔王復活の恐怖から救われ魔王討伐パーティーは巨万の富と栄光を手に入れた。



 とは、ならなかった。



 まず、魔王が復活した直後であったことから魔王は富を蓄えていなかった。

 これで、討伐自体の収入は激減。


 魔王の危機が王国レベルに達していなかったことから王国からの報奨金が出なかった。

 さらに報酬激減。


 討伐を伝統的な勇者パーティーで行わず、傭兵団と職業兵との混成部隊で行った上にほぼ全滅といっていい損害を出してしまったことから遺族への保証金が膨大な額に登ってしまった。

 損失の拡大。



 極めつけに、討伐部隊の装備に最高級のものをそろえるために、領主は商人に莫大な借金をしていた。

 魔王討伐が従来通りの収益を上げていれば余裕で返済できた額であったが、収入激減と支出の増加によって返済が滞ってしまった。


 結局、領主は屋敷や収集品などの財産を売却した上に一部の領土を質に入れその他の領土に関しても今後10年の徴税権を商人に渡してしまった。


 没落である。


 魔王討伐を成功させた領主の娘にしても、自らにかけられた呪いを解く資金すら無く次期勇者としての道も途絶えてしまった。


 その後、領主の娘がどこで何をしているのか。

 様々な噂が飛び交ったものの真相を知るものはいない。

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