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あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません  作者: 真那月 凜


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3-1.嫁が来る(side:スターリング一家)

それは突然の事だった

帝王からの親書だと騎士団の者が封書を持ってきた

「あなた帝王は何と?」

当主のバックスに妻のオードリーはそわそわしながら訪ねる

側には長男のエイドリアンと次男のテオも控えている

そんな中、手紙に目を通したバックスは低い声で唸り出した


「父さん?」

テオが待ちきれないと言うよう声をかける

「…エイドリアンが婚姻したと」

「は?」

反射的にそう漏らしたのは当のエイドリアンだった

これまでに婚約しろという命は受けても、婚約も飛ばし、婚姻()()という報告は聞いたことが無い


「今日の舞踏会で何かあったらしい。30分程前にお前とアリシャナ・ブラックストーンの婚姻が成立したと」

バックスは手紙をエイドリアンに渡した

「ブラックストーンってアンジェラの家だよね?」

「そんな顔しないの」

イヤそうな顔をしたテオをオードリーが窘める


「アンジェラの妹…10歳で魔術師団に入った月の女神の異名を持つ娘だ」

「あなたお会いしたことが?」

「いや。遠くから見たくらいだ。魔術師団の棟はセキュリティが厳しく我々が踏み入れることは出来ないからな」

そうは言うがバックスは国務機関の長である


「アンジェラとそっくりな女だったら最悪だよ?あの女最初から兄さんを蔑ろにして、あろうことか俺に言い寄ってきたんだぞ?」

吐き捨てるように言うテオに夫妻は遠い目をする


アンジェラは帝王の命で寄越された婚約者だった

家に来るなりエイドリアンを見て悲鳴をあげ、思いつく限りの罵詈雑言を吐き続けた

そして1週間部屋に引きこもったと思ったら、突然テオの部屋に忍び込み夜這いを掛けようとしたのだ

テオが毅然とした態度で拒否し、部屋を追い出したところを屋敷中の者に目撃されると、あろうことか開き直って喚いた

化け物のいる家に嫁がされるのよ?せめて、子供くらい化け物じゃない相手と作らせて欲しいと思って何が悪いのよ?!…と

それをナイジェルがとがめ、これ以上勝手をするなら帝王に解消を申し出ると告げると再び部屋に閉じこもり、婚約からたった半月で精神を病んだと言って喚きながら出て行ったのだ


「…あれは強烈だったな」

バックスがため息交じりに言う


「…どうでもいい。どれだけ嫌だとしても帝王の命に逆らえるわけじゃないし…。俺は出来るだけ顔を合わさないようにするからフォローしてやってくれ。呪いを理由に悲鳴をあげられるのも恐れられるのももうたくさんだ」

エイドリアンはそれだけ言って自室に引き返していった

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