26-2.俺への裁き(side:ナイジェル)
帝王にディフェントヒールを掛けられた翌日牢の前が騒がしくなった
「来いナイジェル」
4人の騎士に周りを固められ訓練場まで連れてこられた
手は後ろで拘束され足は30センチほどしか開けない状態で拘束されている
魔封じの首輪まではめられている為魔術は使えない
それでも俺は何とかして逃げ出そうとたくらんでいた
「よしお前らこいつが的だ」
「え、でもそれじゃ死にませんか?」
「大丈夫だ。こいつにはディフェントヒールがかかってる。死ぬ前に全回復するから何度でも繰り返し練習できるぞ」
「でも…」
目の前の新人だろう騎士は戸惑っているようだ
これはチャンスだと俺は思った
皆の注意が今はあの騎士に向いている
俺は逃げるために走り出した
「おい、獲物が逃げ出してるぞ!」
「丁度いい、動かん標的より練習になるんじゃないか?」
何だと?!
予想もしなかった言葉に冷や汗が出る
「いい機会だ弓部隊!最初に仕留めた奴に飯をおごってやるぞ!」
その言葉に新人騎士どもが浮足立った
「やめ…やめてくれ!」
直後四方八方から飛んで切る矢が体中をかすめていく
「っ!!」
痛さと熱さが同時に襲う
「お前らしっかり魔術を纏わせろ!ただの矢は魔物相手じゃ何の役にも立たんぞ!」
煽る様に指示が飛ぶ
止まったら完全に仕留められる
そう悟ったら走り続ける以外の選択肢は浮かばなかった
でも、女を抱く以外の運動をしてこなかった俺が長時間逃げられるわけもなく息もすぐに苦しくなった
「ぐぁ…!」
火を纏った矢で内臓を撃ち抜かれた
「やめ…ぅあぁぁぁぁっ!!」
熱い、痛い、苦しい
それだけに支配された
そして意識を手放す直前に体が軽くなる
「すげぇ…一瞬で完治してますよ」
矢を放った当人が一番驚いていた
たとえ完治してもその前の痛みや苦しみを忘れるわけじゃない
俺はこれからずっとあんな思いをし続けるというのか?
そう恐怖を感じていると…
「いいかお前ら、この男は昨日の裁判で裁かれた男だ。お前らもよく知ってるアンジェラの父親でもある」
「あのクソアマの?」
「俺の友人は捕縛の魔術で拘束されて媚薬を盛られたと言ってたんだ。抵抗も出来ずあの女は自ら腰を振っていたと…そのせいであいつは婚約を破棄された」
何だと?
アンジェラがそんなことを…?
俺は信じられない言葉を耳にしていた
愛するアンジェラは男どもから愛でられて当然のはず
それがクソアマと呼ばれるような立場だったのか?
「この男に対する遠慮は必要ない。実験台として国の為に働くのがこの男の受けた裁きだからな」
「つまりこの男を的にして腕を磨けと?」
「そう言うことだ。動き回る上に何度倒しても回復されるこいつは、新人のお前らにとって魔術を纏わせた攻撃の練習をする格好の的だ」
人を的呼ばわりしやがって…
怒りをぶつけようとした瞬間さらなる言葉が飛んできた




