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あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません  作者: 真那月 凜


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25-3.お茶会

「…手放されたのはなぜですか?」

アリシャナは沈黙を破る様に尋ねた


「主人の手紙が出てきたの」

「手紙、ですか?」

「ええ。俺は幸せだった。この先は俺のこと思い出として覚えてくれてればいい。残りの人生は自分の為に生きて欲しいと」

「…」

「例の宝飾品は俺と同じ色を持つ者に譲って欲しい。時が来て解呪できればその連れ合いと共に幸せにしてくれるはずだからと」

アリシャナがエイドリアンを見ると優しい眼差しが返された


「おそらく主人は自分が生きているうちにその時が来たとしても解呪しなかったでしょう。もともと内臓を患っていたので数年の命だと言われていたの。自分が解呪すれば私が主人の面影に縋って生きていくと思ったんでしょうね」

「それも悪い生き方ではないと思いますけど…」

「そうね。そこまで愛せた証拠だものね。でもあの人はそれを望まない人だと私も知ってたわ」

少し寂しそうな笑みを浮かべてシャリラは言う


「素敵な宝飾品は身に着けた者を輝かせてくれるわ。それは自信となり幸せへとつながっていく。もし本当に解呪できる方がいるのならその方に譲りたいと私もそう思ったの」

「…幸せのおすそ分け」

「え…?」

アリシャナの言葉にシャリラもエイドランもアリシャナを見た


「幻影の術の中に偲ばされていたことばです。その言葉がカギになっていました」

「まぁ…」

「ご主人は本当に幸せだったんですね」

アリシャナがそう言った途端、シャリラの目から涙が零れ落ちた


「…だから会いたかったのか」

エイドリアンがどこか納得したようにつぶやいた

「おすそ分けするほど幸せな人が、こんな素敵な宝飾品をどうして手放したのか知りたかったの。今なら素直に受け取れるわ」

アリシャナはそう言って微笑んだ


「シャリラ様」

声をかけるとハンカチで涙を押さえながらシャリラが顔を上げた

「もし、ご主人との思い出に浸りたいときがあればご連絡ください。こんな素敵な仕掛けを施したご主人の事、私も知りたいです」

それはアリシャナの素直な気持ちだった

「時々懐かしむくらいなら思い出に縋ってることにはならないでしょう?」

「えぇ。そうね。ありがとう…」

嬉しそうに笑うシャリラにアリシャナもほほ笑んだ


「俺としてはご主人が夢中になってた魔術の方が気になるけどな」

「リアンー?」

「いいのよ。もしよければ主人のまとめていたノートをお持ちになる?」

「よろしいのですか?」

「ええ。私には何が書いてあるかさっぱりなのよ。でも分かる人に活用してもらえるなら主人がしてきたことも無駄にはならないでしょう?」

ちょっと待っててね

そう言って少し席をはずしたシャリラは20冊ほどのノートの束を持って戻ってきた


「すごい量…」

「こんなに沢山本当に…?」

「ええ。どうぞお持ちになって」

重ねて言われ有り難く貰うことにした


その後シャリラとは定期的に交流を持つことになった

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