15-2.真相
「帝王に面会した時に肯定されました。私が成人するまでの…国の平和のための最小限の犠牲だと…」
「アリ…シャナ…?」
そう言って再び涙を流すアリシャナにエイドリアンは怒りを忘れ戸惑っていた
「許せませんでした…あんなにやさしい人たちを、こんなに傷ついてるリアン様を…国の為に傷つけても仕方ないと言い切った帝王が…!」
その声は震えていた
「帝王は最初から私が成人すればリアン様に嫁がせる予定だったと思います」
「アリシャナの成人がどう関係する?」
「私たちは力の一部を封じられて生まれて来ます。先代の記憶は時を追うごとに膨大になり、幼いうちにはそれを受け止める前に気が狂ってしまうと…ただ、18になったら儀式をしなければならないと刷り込まれて育ちます」
「儀式?」
「自らの封印を解く儀式です。誰かに教わる必要もなく眠っている間に、意志とは無関係に実行されるようです。目が覚めたらそのことも全て記憶となり理解していました。そしてその時に知りました。祝福の封印を解くための条件と、その条件を揃えるための力を得たことを」
「条件…伴侶と決めた相手と魔力を交換することが出来ればというやつか?」
「…」
「違う…のか?」
「…大筋はその通りです。ただ、魔力交換するためにはリアン様が祝福を受け入れる意思と、カギとなる言葉が必要なんです。その言葉を引き出すための力を使うことを帝王は望んでいました」
過去形でアリシャナはそう言った
「断ったということか?そのために何かを約束したということか?」
本当に聡い人だと、アリシャナはその賢さを恨みたくなった
「私が国を守るために力を使うことでリアン様にはもう誰も仕向けないと誓っていただきました」
その言葉に帝王の残した言葉をかけ合わせれば勝手に様々なことが浮かんでくる
「俺の淀みを浄化するだけでなく…この国の負の影響を…?だから体調が…?」
答えにたどり着いてしまったエイドリアンを前にアリシャナは俯き目を閉じた
「教えてくれアリシャナ。俺の力が解放されたら何が起こるのか。何が出来るのか」
「…」
「アリシャナ?」
「…リアン様がいるだけで負の影響が浄化されます。豊かさも、天候もリアン様の望む通りに操ることが出来てしまう。助けたいと思ったものを助け、守りたいと思ったものを守ることも、もちろんその逆も…でもそれを知ったら周囲の人は最初は感謝しても、徐々にリアン様を利用しようとするでしょう。今以上の孤独を味わうことになるかもしれません。実際過去にはそれで苦しんだ方もおられます」
アリシャナがエイドリアンに隠したかったのはその部分だったのだろう
祝福の封印を解くことが出来ると言ったわりにそれを勧めてくることはなかった




