12-1.限界
アリシャナが嫁いでから1か月が過ぎると、浄化の影響もあり体調がすぐれない日が出てきていた
怠さと食欲不振のおかげですぐれない顔色をアリシャナは魔術で誤魔化していた
「大丈夫か?」
目を覚ますとエイドリアンが顔をのぞき込んでいた
「…おはようございます」
「もう少し寝るか?最近ずっと体調がよくないだろう?」
「大丈夫です」
アリシャナは答えながら思わず笑ってしまった
「何がおかしい?」
「リアン様は心配性だったのですね」
その言葉にエイドリアンは一瞬驚いた顔をする
「…俺も初めて知ったよ」
そう言って微笑むアリシャナに口づける
「リアン様?」
「俺はアリシャナに救われてる。この気持ちをどうやって返せばいい?」
「私は何も…」
「流石にそうじゃないことくらいは分かるよ」
「…」
帝王に面会した日から問い詰められることはなかった
でもエイドリアンなりに悩み、考えていたのだろう
その時執事がエイドリアンを呼びに来た
「…ちょっと行ってくる。ゆっくり休んでろ」
エイドリアンはそう言って準備を済ませて部屋を出た
アリシャナが嫁いできてからスターリング家の皆は使用人も含めアリシャナを気に入り大切にしていた
家族の温もりを初めて知ったというアリシャナは、日を追うごとに自然な笑みを零すようになっていた
エイドリアンはアリシャナが来てから全身のだるさが薄れることに疑問を持ちアリシャナに尋ねたことがある
その時に返ってきた答えは、これまで強すぎる魔力のよどみをエイドリアン自身の中にため込んでしまっていたからだというものだった
アリシャナはそれを浄化する力を持っているとその時に初めて知ったのだ
「どうかなさいましたか?」
一人考え込むエイドリアンに執事が尋ねる
「いや。何でもない」
そう返し応接室に入ったエイドリアンは中にいる人物を見て一瞬固まった
「そなたのそんな表情を見れるとは驚いた」
「帝王…」
エイドリアンは平静を装い向かいに座る
「一体どうなさったと?命じていただければ…」
「構わん。アリシャナの事が少し気になったのでな」
「アリシャナを?」
「そなたはアリシャナからどこまで聞いておる?」
「どこまで…とは?」
「祝福のことだ」
「!」
「誤解するなよ?我はアリシャナに聞いたわけではない。我が産まれた時より授かっているスキルのおかげだ」
「スキル…」
エイドリアンはそのまま何も言わなかった
「アリシャナはまだ寝ているそうだな?」
「はい。最近少し体調がおかしいのか弱ってきているようで…」
その答えに帝王は何かを考えている素振りを見せた




