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あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません  作者: 真那月 凜


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8.浄化

真夜中と呼ばれる時間帯にアリシャナはそっとベッドを抜け出した

テラスに出て祈るように手を胸の前で合わせる

何かを呟いたかと思うとアリシャナ自身を淡い光が包み込む

それは次第に広範囲に広がり、スターリング家の屋敷を覆い、次第にこの一帯を、最後には視界ではとらえきれない広い範囲を包み込み、やがて消えていく


1時間近くそうしていたアリシャナはやがて大きく息を吐きだした

「1週間続いただけでコレなのね…」

額から流れる汗を手で払い落す


封じられていた魔力は戻った

でもまだ体に馴染んではいない

それでもやらないという選択肢は持ちあわせていなかった

呼吸が整ってくると部屋の中に戻る

冷えた体を擦って暖を取りながらベッドに戻る


「…眠れないのか?」

薄く瞼を持ち上げたエイドリアンに抱き寄せられる

「冷えてるじゃないか…」

アリシャナは包み込むように抱きしめるエイドリアンの胸に顔を埋めた

「暖かい…」

「このままゆっくり眠れ」

寝ぼけたままそう言うエイドリアンはそのまままた寝息を立て始める

嫁いできたときは真っ黒だったエイドリアンを包む魔力が今は濃いグレーになっている

もっともその魔力の色を見る等アリシャナにしか出来ないことなのだが…


「あんな色になるまで…一体どれだけ苦しまれたのか…」

エイドリアンを包み込んでいたのは魔力の淀み

それも負の感情を媒介としたものだった

普通の人は無色か色があっても薄いベージュの温かみのある色をしている

ナイジェルやアンジェラのように心が歪み切った者は黒みがかった赤、病気などで弱った者は薄い黄色、そして自らの中に閉じこもった者は薄いグレーを纏う

それから考えればエイドリアンの纏う色の異常性は明らかだった


アリシャナが祈るのはあらゆる負の影響の浄化

エイドリアンが取り込む負の影響を減らすためのもの

同時にエイドリアンの纏うよどみも少しずつ浄化する

一気に浄化しないのは浄化した分だけまた取り込んでしまうから

負の影響とエイドリアンの淀みは一定の比重がたもたれていることに気付いたのは2日目だった

エイドリアンを浄化するためには取り込まれる負の影響も浄化しなければならい


最初に手掛けたのは国の外から守るための結界

それから少しずつ結界内の浄化を始めたのだ

ようやくまだ黒に程近いとは言え濃いグレーに変わった

でもこれをずっと続けるのは厳しい


アリシャナはそのことに気付かないふりをした

自らを偽り、消耗し続ける体力からも精神的な疲労からも目を反らし、自分の居場所を守ってくれているエイドリアンの為に浄化し続けることを選んだ

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