5-1.帝王との面会
朝食の後、エイドリアンとアリシャナは帝王の館を訪ねた
先ぶれを出していたのですぐに中に通されたが何やら騒がしい
「何かあったのでしょうか?いつもは怖いくらいに静かですのに」
「申し訳ありません。先客が少々…」
執事がそう言いながら部屋へ案内してくれようとした時ひと際大きな音がした
『バンッ!』
「信じられない!こんなことになるならまだ呪われてるあいつの方がましだったわ!」
扉が開け放たれた瞬間聞こえた声に背筋が凍りつく
思わずエイドリアンを見るがその表情は読めない
「全てお前の自業自得だ。マックスとの離縁はない。子を2人成すまでの外出も認めない」
「だからどうしてよ?!」
「お前を信用できないからだ。他所の子種を持ち込まれたらたまらんからな」
「な…っ…!」
「これは決定事項だ。エリナ、今すぐ連れ帰って例の部屋につないでおけ。見境なく男に手を出す女だ。世話をするのも側に置くのも女で固めろ」
「承知しました」
エリナと呼ばれた従者は即答していた
そして2人の足音がこちらに近づいてくる
「大丈夫だ」
エイドリアンは微かに震えているアリシャナの肩を抱き寄せる
その次の瞬間こちらの存在に気付いたようだ
「あんた!!」
「…おはようございます。お姉様」
「お姉さまなんて呼ばないで頂戴。あんたは昨日ブラックストーン家と縁を切ったんだから」
「申し訳ありません」
「…で、その呪われた化け物、あんたのことは気に入ったわけ?」
吐き捨てるようにアンジェラは言う
「ねぇ、こんな女でいいなら私でもいいんじゃない?あんな豚よりあんたのがましだわ。それがいいわ。アリシャナ、旦那の交換をしましょう」
アンジェラはエイドリアンとアリシャナに向かってそう言った
「俺の妻とあんたを同じ土俵に置かないでくれないか」
「は…?」
「その辺の子供でもあんたより礼儀正しく常識も持ち合わせてるだろうに…」
「何を…!?」
「その娼婦のような姿もあんた自身には似合ってるが帝王の館に訪れるにはいささか…」
「なっ…娼婦ですって?!」
「どこからどう見てもそう見えるな。なんにしてもそんな非常識な人間と関わるのは遠慮したい。もちろんあんたの旦那にされるなんて御免被る。二度と対面しないことを願うよ」
淡々とそう告げる
「行こうか。アリシャナ」
「はい」
エイドリアンはアリシャナを守るようにエスコートしながら執事について帝王のいる部屋に向かった
その背中をアンジェラが睨みつけているのに気付きながらそちらには何の反応も示さなかった




