花数え
サニツの頃
新月の大潮とともにあなたはやってくる
暗い海の星あかりに浮かぶあなたの影
密やかに輝く白い肌に浮かぶ真珠のうろこ
毎夜 夢にみる 黒い波のむこう
家の前の浜に出て
わたしは1人、波に遊ぶ
まだ水は冷たくて
ときどき全てが嫌になる
まだ会えない
今日は会えない
明日も会えない
サニツの頃
月桃の畑で花を摘み月を数える
黒々と星あかりを呑み込むどこか深い場所から
それとも陽の沈む果て、極楽浄土のむこうから
日が昇る 見果てぬ神の楽土 人の世のむこうから
月は隠れて星々またたく訪いの日を
わたしは今年も浜で待つ
浸した足は凍りつき
全ては夢だとわたしに囁く
まだ会えない
今日は会えない
明日も会えない
サニツまでは遠くて
あなたには一瞬でも
わたしには永遠のようで
このまま眠りにつきたくなる
いつか連れて行ってくれると約束したあの永遠の島へ
許されるその日まで
サニツの頃
子どもたちを連れた家族が浜で遊ぶ頃
うりずんの風吹く若夏の頃
わたしは1人、月が欠けるのを数える
月桃の花を摘みながら
今日も1人
明日も1人
月はまだ満ちたばかり……
〜タイトル変更のお詫び〜
当初タイトルを決めて書き始めたときは、恋愛ものの内容になる予定ではありませんでした。
いろいろ調べている中で「アカマター伝説」を読んだためと、他にもう一つ。
徳田様の今日投稿されたすごく素敵な恋愛詩を読んだ影響もあるだろうな、と思っています。
最初満月で書き出して、どうしても進まなくて、徳田様の詩を読んださいに浮かんだ「満月の海に人魚が跳ねる、月の光がいっぱいに輝く」という美しい映像から、満月じゃなくて新月なんだ!と気がつきました。
わたしの中にあったのは、仄暗い中に真珠のようなものが光るイメージだったのです。
書き上げてみて、詩、それ自体は満足しているのですが、当初のタイトル「サニツ浜」は違和感が拭えないため、いつかまた挑戦し直したいと思います。
お読みいただいた皆様にはタイトル変更についてお詫び申し上げます。
昼咲月見草