体感したことのないほどの魅了に襲われる
翌日になり、目覚めたのは6時前で随分と登校するのは余裕な時間に起きてしまった。
カーテンの隙間からこぼれ、射してきた陽光を身体に浴びようとシャーっとカーテンをスライドさせ開ける私。
不安感に支配されていたのが原因だろう、起床が随分と早くなった。
自宅付近を軽くジョギングをして、気分転換になるだろうと思考した私は着替えることなく、薄い上着を羽織って、自室を出て、階段を下りていく。
リビングの奥のキッチンから油がジュウジュウと熱せられ弾ける音がしていた。
自宅を出て、15分ほど自宅周りを軽くジョギングして戻ってくるとお母さんが玄関に佇んで歯科医院で治療をうけた患者のように片手を頬に当てている体勢でいた。
「どうしたの?」
「えっ、ううん......すずちゃん、出掛けてたの?一言くらい言っていってよ、もうぅ。朝食出来てるから食べる?」
「ごめん......なら、食べる」
二人でリビングに入り、ダイニングチェアに腰掛け、朝食を口に運んだ。
7時20分になり、自宅を出て登校する私。
8時前に中学校に到着して、駐輪場と校舎の間の距離は短く、グラウンドに視線を向けると長身の男子が走る姿が視界に入る。
男子の走るフォームがすごく綺麗で思わず足を止め、目の前の光景に釘付けになっていた。
体感では、一本の一時間半の映画が壮大な物語で瞬きを忘れてあっという間に観終わっていたほどの時間だった。
背後から肩をぶつけられ、痛みを体感して、意識がフッと戻ったくらいに彼の走るフォームに魅了された。
昇降口でスニーカーを脱ぎスリッパに履き替えていても、廊下を歩いている最中でも、教師が授業の説明をしていても脳内は彼の走る姿がちらついて集中が出来なかった。




