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第7話「アステロイドベルトを抜けると、そこはカーニバルだった」

モヨコ、爆散し、記号化され、再生される。


 アステロイドベルトを抜けると、遠くに恒星が見えた。

 その光の中に、紅い点滅光……連絡を取り合っている敵影が三、四、五……目視での確認は八機。後方から来る機体を合わせると、実に十二機の人型兵器……メタノイド・マシーン(MM)が俺を取り囲んでいた。

 うまくいかないものだな。俺は思う。俺の操る最新鋭機『ドグラマグラス』は、一般に配備されている量産機とは一線を画した性能を持つ。四機に追われ、数機に道を塞がれようと、問題なく逃げ切ることが出来るはずだった。


 しかし、流石にこの数は……キツいな。

 俺は振探知レーダーを確認する。十二の識別信号の内、十一は既知の物だ。帝国の傑作量産機『ミッシーマ』。彼の国が統合宇宙を支配するのに一役買った、主力機である。

 とはいえ、一機ずつなら敵ではない。所詮は一世代前の量産型。最新テクノロジーの塊である『ドグラマグラス』とは、二枚も三枚も役者は劣る。


 問題は、一機の未確認の反応だ。帝国から奪取した『ドグラマグラス』には、ほぼ全てのMMが登録されているはずだ。だから、恐らく新型。それも、ロールアウトされたばかりの。

 俺はコントロール・パネルに置いた手を、緊張させた。


『安心してください、モヨコさん』

 そのテンションを感じ取ったのか、『ドグラマグラス』に試験搭載されているメタ・ヒューマノイド・インターフェイス(MHI)、『K』が反応した。合成音とは思えない流暢な声が、コックピットに響く。

『あなたは非常にメンタルが弱く傲慢でロリコンのダサダサアルバイターですが、パイロットとしての腕は保証します。そして、なにより私の補佐があるのですから。どのような新型が来ても……敵ではありません』


 俺はKの声に頷いた。彼女が言うなら、確かなのだろう。MHIは嘘はつかない。そして、勝利のために的確な分析をパイロットにインプットしてくれる。後は、作家がアウトプットすればいい。それだけだ。


 と、前方の機体群から、一機が超高速で抜け駆けするのが見えた。カメラを最大までズームにして確認する。見知らぬ姿……やはり、新型だ。俺はパネルの指を稲妻のようにタイプし、こちらに向かってくる相手に対し迎撃態勢を取る。コンディションと武装の再確認を行い、精神を集中させた。


 ……来る!

 俺は大きく回避運動を行った。元居た位置の射線上を、一筋の光線が走る。その回避の隙を突いて、新型が目前まで突っ込んでくる。


『会いたかったよ、モヨコくぅぅぅぅん!!』

 近距離回線によって、コクピット内に相手の大声が届いた。聞き覚えのある声に俺は応える。


「武者小路先輩!?」

『そうだ!私だよ!君がMHIに唆されて私の元を去るのならぁぁぁ』

 新型のマニュピレイターが、レーザーソードを展開するのが見えた。

『この『サネアーツ』で呪縛から解き放とうかぁぁぁぁぁ!!』

「言うかよっっっ!!」


 俺はパネルを高速で打ち付ける。足裏、脚部、肩、バックパックのバーニアを時間差で噴射させ、相手の攻撃を潜るようにしてかわし、新型の腹に頭を密着させた。激しい振動が起きコクピットが揺れる。しかし、その間も俺はパネルを動かし、レーザーソードを展開しながら右腕を振り上げさせた。熱が文学合金を焼き切る感覚が伝わる。『サネアーツ』は股下から両断された。俺がその間を高速で抜けると、二つのボディは爆発を起こし、武者小路先輩は宇宙の花となった。


 その事態に反応したのか、残りの機体も攻撃陣形を展開してくる。

 だが、もう遅い。

 既にロックオンは完了している。

「K、頼むぞ」

『偉そうに命令しないでくださいねキモキモクソダサ文学原人さん』


 俺の命令と共に『ドグラマグラス』から、砲弾程度のサイズを持つ筒状のポッドが射出された。MHI式遠隔攻撃システム『ゴーストライター』。ポッドに装着されたスラスターを点火させた二十基の亜光速の殺意が、十一機の『ミッシーマ』に同時に襲いかかる。彼らは逃げ惑い、後を取られないように一塊になるが、それが仇となった。


 『ゴーストライター』が一斉に放った光弾は、敵MMを全て打ち抜き、その中になんか知らんけど居たらしい茶羅男も巻き込んで、宇宙の闇に十一の花火を上げた。

 その爆炎が、なにやら意味ありげな文字を形取っていく……


小 家 な

 説 に る だ !

      ん よ ?





「茶番に1800文字ってちょっと頭おかしいんじゃありませんか?」

 ケイちゃんは完全に呆れている。

「いつもの半分近く使ってますよ?しかも武者小路という方、死んでますし、私は人間ですらないですし。モヨコさん、いい歳なんですから夢小説はいい加減やめましょうよ。それも、その中でちゃっかり個人的恨み(茶羅男)を晴らそうなんて、クッソダサいですよ?ダサダサダサダサ」


「はい!字数も少ないからね!巻いていこうか!!」

 

 俺は彼女の罵倒を引き裂いて、強引に話を戻す。

「で、どうでしたか!?俺の小説は!!?」

 自分の声が必要以上に大きくなっているのを感じる。正直言って、緊張していた。無理もない。人に面と向かって作品の感想を言われることなんて、久方ぶりだからだ。実に高校時代の「太宰?大好き♡」以来のことと言っていい。あの記憶がフラッシュバックすれば、俺は十三機のリックドムのように三分で爆発四散してしまうだろう。インスタント爆散チーン。


「まあそうですね」

 ケイちゃんは腕を組んで唸る。

「私、ロボット物って小説もアニメも見たことないんで、よくわからないんですが……個人的な復讐に物語を使うというのはダッサイかな、と。せめてもう少し隠して欲しいですね。懲りずにまたSF?とも思いますし……」


「違う!そっちじゃない!『なるんだよ!?』に投稿したヤツね!!っていうかこれはただの導入、アニメで言うオープニング前の寸劇のような物で、本編の俺たちには干渉していないからね!俺が書いて見せてるとかそういう設定はないよ!?」

 俺が身振り手振りで必死に説明すると、ケイちゃんは白けた視線を向けてきた。


「うわ、この人怖いです。と、私は思いました。寸劇だとかアニメのOPだとか。まるで自分の世界がアニメーションの中の出来事みたいに。本編と言っている、ということは、少なくとも自分が主人公であるという物語的な妄想を……」

「何度そのネタ被せんねん!!」

 俺は思わずツッコミを入れてしまう。


「ケイちゃんは論破系美少女中学生なんだからボケボケにボケちゃいかんでしょ!それは俺の役目であってケイちゃんは俺を苛烈に罵倒してリビドーの高まりを感じさせてくれないといけないんだから」

 俺の言葉にケイちゃんの眉が大魔神のように吊り上がった。


「モヨコさんは人のことをなんだと思っているんですか?そもそも人にそんな属性を付けただけで描写できている気になっているとでも?鼻で笑いますね。論破系?美少女?女騎士??最強チーター???笑わせないでください。物語の中ならともかく、私は記号ではありません。モヨコさんが私に何を求めて属性付けしジャンル化しているのか分かりませんが、文学で語られるべきは『キャラクター』ではなく『人間』のはずです。記号化した存在にお遊戯をやらせて自己肯定感を高めても最後には何も残りませんよ?人間を消費物として捉える風潮がなくならない限りは小説は作品から商品に代わりそれ自体が意味の無い消費物として……」


「わーわー!ケイちゃん分かったから!もう後1000字しかないから!」

 俺は現在字数をケイちゃんに突きつけて説得する。

「そういう話はまた別に回そう!とりあえずもう地の文を書くスペースも無くなってきた!」


 そうだ、もうスペースが無い。スペースと言っても宇宙ではない。宇宙と言えば宇宙という言葉はスペースだとかユニバースとか色々あるが何故わざわざこんな色々な種類に分けてしまうのだろう?恐らく話す際のジャンルや属性と共に言葉が結びつけられているのだろう。同じように、人間の特性や人生も記号付けされているのかもしれないな。その人間の人生や物語を比喩的に表現するよりも記号的に一言で表す方が書く方も読む方も楽だから仕方が無い。ジャンルや記号をガツンと突きつけてしまえば相手は納得するし一方的に物語で殴るときは非常に有効な手段だ。ああ、こんなことを書いている間にもどんどん残りの字数が減ってしまう!余裕がない!と、いうのにこんな時に店の自動ドアが開いて神輿を背にしたよさこいダンサーズの団体さんが入店してきた。汗をまき散らしながらすさまじい熱気でゆっくりと近づいてくる。また、反対側にあるトイレからはリオのカーニバルの集団が次から次へと現れて、陣形を組んだ。よさこいの波とリオの嵐は徐々に近づいていき、その対流が衝突したときその摩擦から反物質が生成され宇宙は軋み世界は崩壊し文学的ビッグバンが起きてしまうだろう!そして宇宙は新たな物語の楽園として再生されるのだ!それはそれでいいけど、とりあえずこのお話が終わるまでは勘弁してもらいたいからとりあえず早く頼むぞ!


「ケイちゃん!」

 俺はよさこいの前に立ちはだかり、ケイちゃんに叫んだ!

「わかりました!」

 彼女は反対側のカーニバルへと対抗しながら、ようやっと説明を開始する!


「早口で言いますから段落変更なしになりますので読みにくいかと思いますから飛ばしてもらっても構いません!SFにおける原理の説明と同じで読まなくても物語の理解に支障は無いと思われます!安心して下さい!」

「説明はいいから早く!」

 ダンサーズの肉が俺を挟み込む!ぬるぬるするぞぉ!!


「というわけでいかせていただきます。モヨコさんの作品ですがまずタイトルが駄目です!『遊覧飛行』なんてジャンルの読み取りがまったく見えない上にとんでもなく古臭いです!大正?明治かな?というレベルなのでこんな物は古典文学に興味を持った一部の方の中でも物好きな方がようやっと手に取ってくれるようなレベルです!web小説では比喩的なタイトルは好まれる傾向にありません!ので、タイトルは見ただけで内容が想像できかつ分かりやすい物にしましょう!比喩的にするにしても古臭すぎるのでもっと現代的な語感を持たせるべきですね!次に文量です!一度の投稿で限界マックスまで詰め込んだら表示されている文字数を見ただけで私なら帰ります!せめて分割して投稿してください!次に内容です!文章が古古のお古です!文豪気取りのモヨコさんらしいと言えばらしいですが国語の教科書に載っている文章の劣化版なんて誰も読みたくありません!また内容も暗すぎます!またキャラクター性もありません!ただ自分の主張を叩きつけるのではなくてユーモアやキャラの楽しい掛け合いで読者にサービスしてください!本格ルポルタージュを書きたいのであれば媒体の選択ミスです!実績や人間的な魅力でモヨコさん自身に人気があるのならある程度受け入れてもらえるでしょうがあなたにはナニモナイのです!それをまず認めてください!読者層を考え、謙虚に人に見て貰えるようにする!それが出来ないと、誰もあなたのダサダ作品なんて見ようとはしないのですから!わかりましたか!?才能がある方なら何をしてもいいでしょう!ですがあなたはそうじゃない!自分は何か持っていると思い込んでいるだけです!理解していない言葉で自分を飾るのをやめてナニモナイことを認めてください!認めたならば真摯にweb小説に向き合い陳腐な文学論など脇に置いて学ぶのです!あなた自身を柔軟に変化させ進化させ破壊し再生するのです!そのためにはまず迎合して下さい!あなたにはナニモナイことを認めて迎合するのです!迎合して下さい迎合して下さい迎合して下さい迎合して下さいナニモナイことを認めて下さい!!」


 ケイちゃんが言い終わる頃には、二組のダンサーズが順々に店外へと出て行くところだった。

 俺たちは息も絶え絶え、といった体で、立っているのもやっとであった。

「はぁふぅ、だから……」

 その中でも、ケイちゃんは深呼吸を繰り返し、息を整えていく。そして、スマホに映るこんな画面を俺に見せてきた。


『ドゥ・イッター 何かしら言ってみよう!』


「SNSを、始めませんか?」






「記号化を 許さぬ彼女の お達しは

 また次々何かを やらせるんだよなあ」


モヨオ

ロボット物書くの楽しすぎる……

勢いって恐ろしいですね!

ではまた!

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