表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔法生物が世界を救うまで、あと  作者: カイザー
第一部 五章 〜虚の王〜
97/318

エピソード100 変貌

本日は二本立てで更新しております。前ページからの更新ですのでそこからの続きとなります。

 どうして、こうなってしまった。

 すでに冷たくなった体を抱え、滴る涙が彼女の頬を打って濡らす。


「貴様、何をしてる!」


 信徒の声を耳にして振り返ると、そこには鎧兜がベンテールを上げて緑色の火を見せていた。

 何をしているのかは、こっちが聞きたい──

 誰か、助けてくれ。

 彼女を、救ってくれ。

 そんな言葉が頭の中で渦巻くばかりで、状況は何も変わらない。


 自分に足りなかったものは何だ?


 答えは至極簡単だ。”力”だ。

 このどうしようもない状況を引っくり返す可能性──”力”が必要だった。


──”力”が欲しいか?


 誰だ。

 頭の中で声が響いた。


 その問い掛けに勿論、頷いた。

 魔法でも奇跡でも何でもいい。とにかく欲しった。


──目の前に”居る”だろう?


 声の先には、信徒に再度捕まった小さな鎧兜。

 アイツは魔女が産んだ魔法生物で、特別で、変な奴で、数々の危機を乗り越えた仲間で、相棒とまで思っていた存在。

 アイツなら、何とか出来るのだろうか。


──お前は、あんな小さな存在に願いを託すのか?


 いいや。俺は俺の力で成し遂げなければならない。

 先ずは、アイツ──虚の王(エルウィン)を、この手で!


──なら手を伸ばせ。欲望のまま、”貪欲”に!


「寄越せ──”力”を、俺に寄越せぇぇぇ!!」


「!」


 鎧兜(アイン)に向かって手を翳す。

 すると、灯火から一つの光が自分の手の中に収まっていった。

 魔法生物はショックで気を失ったのか、灯火が消え、ただの鎧兜になってカランと乾いた音を立てて床に転がった。


 奪い取った光が、胸に宿る。




【フラグメント解放:可能性】




「ぐっ──ああああああああ!!」


 脳裏に文字が過ぎり、意味を理解する前に身体中が軋む痛みを帯びた。

 襲い掛かる痛みに、耐えられず叫ぶ。


「オエっ」


 彼女の遺体を横に寝かせ、その隣で嘔吐する。

 吐かれたのは異物。大量の鉄の部品の数々だった。


 体の中が軋む。内臓のすべてを造り替えられる感覚。鉄が、ガラクタが己を造り替える。


 体外に異変が生じたのは、まず背中からだった。

 まるで羽化する事への悦びに感極まるように、皮膚を突き破る。鋼鉄のツバサ。


 次に右腕。血管から無数の鉄の管が突き破り、腕を覆い、あるカタチに変貌を遂げた。

 それはアディシェスが持っていた、筒状の武器。

 これの用途はすでに理解している。


「エルぅウィィィン!!」


 もう、痛みなどどうでもよくなった。

 己の中に渦巻くのは復讐。怒りと悲しみが『奴を探せ』と怒号の声を張り上げる。


 壇上から聖堂を見渡す。しかし、信徒が数人いるだけで本命が見当たらない。


「──この空間かッ」


 思えばこの”外殻”のせいでミラを失った。

 忌々しい空間に終わりを告げるべく、右腕を真上に掲げる。


「砕け散れぇぇぇ!!」


 張り上げる声に応じるように、胸に宿る光が輝きを増す。

 そして腕の筒から極太の閃光が一直線に走り、大聖堂の天井を穿つ。同時に、何かが割れる音が耳の端で拾う。

 だが右腕から放たれた閃光の轟音の方が勝った。絶大な威力の反動が風圧となって聖堂内を駆け巡り、荒らす。


「うぁ!」

「何だぁ!?」


 狼狽える信徒たちは吹き飛ばされ、壁に激突して、今度こそ意識を失う。


 空間は破壊した。奴は何処にいる──


「何が起こっているというのだ」


 いた。

 涼しげに壊れていない長椅子に身を潜ませていた。

 初めて狼狽える素振りを見せるが、それでも端麗な顔を崩さない。

 奴が睨む目に、豹変した自分の姿が映っている。

 殊勝な心がけだ。今すぐ壊してやる。


「エルウィィン!」


 腕を構えるが、放てと命じても反応しない。

 すぐに”力”が枯渇したと判断し、ツバサを広げた。


「お前を、殺す!!」


 確固たる意志が、(ガラクタ)を動かす。

 壇上を蹴って一直線にエルウィンの元まで飛ぶ。その最中にもう片方の腕が変化した。

 鉤爪。村にいた大鷹(タイヨウ)に模した形状の腕を突き出して突撃する。

 奴の体をこのまま引き裂いて──


「王子!」


 ならなかった。

 横からエルウィンを庇うように突き放し、間に割り込んだのはグルツ・アーバンハルト・シャルヴィだった。

 爪先の間に挟まる形で彼を捕らえ、そのまま壁に激突し、さらに壁が壊れて場外に。


「褒めて遣わすぞグルツ。貴様に掛けた呪いを解く。其奴との再戦、思う存分愉しむがよい!」


「感謝致します! 王子こそ、どうぞ御無事で!」


「しまっ──」


 聖堂内で奴の声が響くと同時に、指を弾く音が奴の姿を掻き消す。

 場外に逃げられてしまったら、見つけるのに時間が掛かってしまう。


「黒の理解よ──超高圧高速水(ビナー・ハイドロプレスカノン)!」


 追おうと地面に貼り付けていたグルツから目を離すと、鉤爪の間から腕が伸びて魔法が放たれた。


「ッ!」


「覚えているかよ、ヴァン・リール・ヴァルヴァレット。今度は俺様が相手になってやるぜ」


 瞬時に躱し、その場から一旦離れる。

 立ち上がる黒装束の男。虚ろな目は正気を取り戻しており、明確な敵意を向けてくる。

 かつての同僚、グルツが立ち憚かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ