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転生魔法生物が世界を救うまで、あと  作者: カイザー
第一部 五章 〜虚の王〜
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エピソード97 苦戦

 外殻が空間を支配する。経験した事がある僕やヴァンは驚愕し、他の信徒たちやミラは困惑を更に悪化させた。


「ようこそ、己の城へ」


 黒い空間が浸透し、景色が元の大聖堂に戻った。

 彼──エルウィンこと"ロキ"は頬杖をして足を組む。その姿勢はアドニスと同様だが、企む笑みがまるで違う。


 虚の王。彼が展開した空間には少なくとも十人は存在する。僕やヴァン、ミラのメンバー三人を含め、グルツや信徒7人が敵対チーム。

 そして玉座に座するロキを加えると十一人。先程彼が宣言した『ラムダ』という単位と同列に当たる。


「お前が何をしようが勝手だが──」


 ヴァンが動いた。

 グルツに一撃、強烈な斬撃を短剣に喰らわせて怯ませた後、隙を突いて跳び越える。

 向かう先は無論、ロキ。


「すでに攻略済みなんだよ!」


 アディシェス戦での功績は大きい。ヴァンは玉座に向かって折剣を逆手に振り下ろした。

 捉えたはずのロキに欠けた剣が差し込まれた、と思われた──


「なにっ!?」


 しかし、ロキの体は霧散した。

 虚空を斬って、ヴァンの背中が孤独に映る。


「どこを狙っている?」


「──ッ!」


 彼が混乱する中、ロキはすぐ横に忽然と現れて蹴りを放つ。

 顔面をモロに喰らい、ヴァンは壇上から蹴り落とされた。


「ヴァン!」


 ミラが悲痛の声をあげて床に叩き落とされた彼の元へ駆け寄る。

 頭を抱えて状態を起こし、ヴァンの安否を隈なく確認。彼女らしい、彼に対する想いが反映された行動であった。


「っ……今のは──」


「一瞬消えて、また別の場所から現れた……?」


 僕から見てもそう判断する他なかった。

 まるで霧のように奴の体は消えて、瞬く間に出現したのだ。

 手品でも見せられているのか。それとも、これが──


「これが、お前の”外殻(ちから)”ってわけか」


 ヴァンが起き上がって再び折剣を構えた。今度はミラの手を取って。

 対してロキはゲラゲラと嘲笑って答える。


「己の世界は意のままに惑わせる。創り上げた虚像の世界で、貴様らは無惨にも敗北するのみ。これ程つまらん歌劇など他にない」


 決して覆らないという自信。まさに”茶番”と呼ぶには相応しい能力だった。


「ふん、ならこれはどうかよ」


 ヴァンはミラの手を引いて逆走した。

 攻める方向は壇上に佇むロキとグルツなのだが、それとは真反対──つまり信徒たちに囚われている僕の方へ走ってきたのだ。


 なるほど。敵わないのであれば味方を増やすという手段。僕を解放すれば、解決策が生まれる可能性が上がる理に叶った一手だった。

 だが、ヴァンが僕の所にまで辿り着く事はなかった。


「────」


「なっ!?」


「えっ」


 目の前に、これまた忽然と現れた黒衣装。グルツがヴァンの体に蹴りを入れる。


「ぐぁっ──!」


「きゃ!」


 繋いだ手に引っ張られ、ミラもヴァンと同じ方向へ続くように吹き飛ばされる。

 手を手繰り寄せ、彼はミラを抱えるようにして庇い、長椅子に激突。粉々に砕け埃が舞う。


「ぐ……ぁ……」


 埃が晴れ、ささくれている木々が無数にヴァンの背中を痛々しく突き刺す光景が映った。

 腹に喰らった打撃は、思いのほか会心の一撃(クリティカルヒット)だったらしく、ヴァンの意識が飛んでいた。


 なんて厄介な能力だ。

 あらゆる行動を封殺してくるアディシェスとは違い、目に見えるものが真実とは限らないという”まやかし”。

 先程まで壇上に佇んでいたグルツの姿は霧散しているところから察するに、幻影を見せて本体は透明化。そしてヴァンの前に現れ、奇襲を可能にさせていたのだ。

 おそらく、常時発動可能なのだろう。これでは常に警戒していても奇襲を受けてしまう。


「ヴァン、ヴァン!」


 彼の腕の中で護られ無事だったミラが目に涙を浮かべながら揺り動かす。

 俯いた影で顔が見えない──


「ふむ……グルツ、貴様が相手をすると退屈だ」


 壇上ですでに飽いた様子で呟くロキ。

 称賛どころか文句を付けられたグルツは、無表情のままロキに向かって一礼をする。その反応に玉座の王は深く溜息をついた。


「はぁ──これでは前の道化を気取っていた頃の方がまだ退屈しのぎにはなったな。かの英雄の息子もアレでは肩透かしだ」


 英雄の息子。そう呼ばれて、俯くまま動かない彼が少し反応した。

 王は気付かずに煽り立てる。


「たとえこれが茶番だとは言え、少しは気概を見せたらどうだ。ノスタルジア国の護衛騎士よ。騎士の名が泣くぞ。それとも父の名が泣くか? ハハハハハ、いま父を呼べば助けに来てくれるやもしれんぞ?」


 ギリっと食い縛る歯を見せる。


「──まれ」


「……ヴァン?」


 一番近くにいたミラだけが、彼の豹変に気付く。


「折れた剣というのも呆れを通り越して笑えるぞ。グルツに代わって己が言ってやろう。『田舎者は剣の一本ですら新調できないのか』とな!」


 高々と嗤って仰反るロキに一言、


「──だまれ!!」


 と聖堂中に割れるように響いた。

 笑い声を遮られて口を閉じた王は、今度は「ほう」と値踏みするような視線を彼に向ける。


「この剣は、俺が俺である為の証──」


 傷だらけの体に鞭を打って、ヴァンは膝や手に力を込めた。


「捨てられるワケねぇだろ。ナメるなよ馬鹿王子!」


 鬼のような気迫を魅せて、騎士は立ち上がった。

エルウィンの外殻、アディシェスと比べてちょっと地味ですが、まだ未熟で未完成という点がありますのでご承知ください。

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