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転生魔法生物が世界を救うまで、あと  作者: カイザー
第一部 三章 〜漆黒の鎧〜
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エピソード27 テルル村


 早朝からの行軍が進み、日が暮れようとしたところで拠点(きょてん)となる村に辿(たど)()いた。

 途中、何度か休憩(きゅうけい)(はさ)んだのもあるが、それを差し引いてもほぼ半日かけての行軍。カナリアがお尻を(さす)っているほどだ。


 兵士たちは誰ひとりとして愚痴(ぐち)など(こぼ)さず、平然としていた。普段からの訓練の方がよっぽどだ、という声もあるぐらいである。

 ちなみにクリフトリーフは白馬(はくば)の上で器用に爆睡(ばくすい)していた。ある意味、乗馬(じょうば)スキルがほかの誰よりも(ひい)でているのかもしれない。


 村の名前は『テルル村』──人口(じんこう)およそ六百人と、部隊よりも少ないものであった。行軍中にいくつもの部隊が(わか)れていき、のこった僕たちの総勢(そうぜい)よりもだ。

 村の広さはそこそこあるが、ほとんどが畑であり、いわゆる田舎(いなか)そのもの。ノスタルジアといい勝負。


 アドニスは村人を集め、村長らしき人物と対話し始めた。


「まずは助けにくるのが大幅(おおはば)に遅れてしまったこと、謝罪させていただきたい」


「いえいえ滅相(めっそう)もない。(さいわ)い、こちらには怪我人もでておりませんし、なにより軍神さまが直々(じきじき)出向(でむ)いてくれようとは光栄(こうえい)(いた)りです」


 彼が、そう述べて深々と頭を下げる。これまた年季(ねんき)の入った御仁(ごじん)で、白髭を長く伸ばした小柄な男であった。

 感謝の言葉を耳にして、アドニスが眉をひそめる。


「怪我人がいないのか。報告を受けてから一週間だぞ?」


「え、ああ、はい……先月よりこの村に流れ着いた若者がセフィラ持ちでして、皆が助かっておりますゆえ」


「その者は。今ここにいるか」


「ええ、こちらに」


 そう言って村長が向ける視線の先に、ひとりの男が立っていた。

 村長が『若者』といっていたが、見た目は(よわい)三十後半の(いか)ついおっさんであった。そりゃ村長からしたら若者だろうけれども……

 おっさんは教会の司祭(しさい)が着るような白と赤の模様(もよう)が入ったローブを(まと)っており、目立っていた。頭もツルッツル。僧侶(そうりょ)と言って()(つか)えない。


「お初にお目にかかります。軍神殿」


 男が村人たちから一歩前に出ると、(ひざ)を地につけて(こうべ)()れた。

 その仰々(ぎょうぎょう)しい態度(たいど)に、彼女は顔色ひとつ変えず「名を聞こう」と問う。


「『アフェク・ベル・ダート』と申します」


「ではベル・ダート。貴殿(きでん)に問う。どうやって(しの)いだ」


 ”アフェク”と(みずか)ら名乗った彼が、頭を下げたまま答える。


「先手を取らせていただきました。(むか)()つのではなく、こちらから討ってでる戦法。少しでも相手戦力を()ごうかと──」


 アドニスが吟味(ぎんみ)するようにタバコを(くゆ)らせつつ、彼を見つめた。

 あの吸い込まれるような(あわ)翡翠(ひすい)の瞳を向けられれば、一般の人間でも物怖(ものお)じしてしまう。

 しかし、アフェクは淡々と続ける。


「わたしは、北大陸『フルバスタ王国』出身の教徒──”グラッド教”を広めくべく、この地に流れ着いたにすぎません」


 少しの間をおいて、彼女が目を()せた。


「なるほど。貴殿の言い分は理解した。今後は私の前でもラクにしてよい。さがれ」


「はっ」


 彼が(かしこ)まった姿勢のまま立ち上がり、村人たちの中へ戻る。


「村長、村人たちを彼の指揮下(しきか)に置く。その方が遅れてきた我々よりも迅速(じんそく)に動けるだろう。()いな?」


「ええ、こちらとしては何の問題もありません」


 それは遅れてきた軍人よりも信頼があるヒトに指揮を任せた方がいいという、彼女なりの采配(さいはい)だった。

 話はひと通り区切りがついた様子。アドニスが振り返って兵士たちへと顔を向けた。


「──これより作戦行動に移る。まずは村に入って防衛(ぼうえい)(きず)け。夜襲(やしゅう)の可能性もある。村からのもてなし(・・・・)など受け取るヒマなど皆無(かいむ)だ。気を引き締めてかかれ!」


──(おう)っ!


 兵士たちが声を張りあげたのち、これまた迅速に続々(ぞくぞく)と村の中へと入っていく。

 さすが、”軍神”の兵士と呼ぶべきだろう。各々(おのおの)が的確な行動をそつなく(こな)練兵(れんぺい)であった。


「あとで私のところへ来い。少し話がある」


 これからどう動けばいいか分からない僕たちに向かって、アドニスが指示をだす。

 こうして僕、ヴァン、カナリア、クリフトリーフのメンバーは彼女の後ろについていった。シエルは指揮を()るため、別行動だという。


 夕刻にわたる虫の鳴き声が、妙に大きく感じられた。

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