表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔法生物が世界を救うまで、あと  作者: カイザー
第二部 一章 〜東大陸〜
113/318

エピソード7 侍女に答えを


「……そんな気はしておりました」


 想定済み。

 僕の行動をちくいち把握いていたのだろう。そこから導く答えが、おのずと重ならせた。

 気づいていないのは、むしろ僕の方──


 はじめはただの親切心だと思っていた。”魔女様”呼ばれるヒトからの贈り物だからと大事にされているだけなのだと、自分に言い聞かせていた。

 心が通じ合ったあのとき、僕は『キミを助けにきた』と断言した。その気持ちにウソはない。他でもない僕自身の使命なのだと思っていた。

 しかし、カナリアと一緒にいるうちに、僕の中で彼女の存在が大きくなっていたのだ。

 彼女のことを想うと、灯火がドクンと熱を帯びる。彼女がいない世界を考えると、文字どおり”風前の灯火”になるぐらい小さくなる。


 この気持ち、僕は生前に覚えがある。

 たとえカナリアに危機が降ってきたら、あの追憶のように、身を(てい)して守るだろう。

 気づかされた想い。あのジンからっていうのは少し癪だけど、それでも感謝だ。自分の気持ちにウソはつきたくないし、気づかないままも嫌だった。


「しかし、だからと言って(とも)に歩みたいなどと、傲慢にも申すのでしょうか?」


 きた。

 エルドライトが言いたいこと。言わずもがな、僕に潜む『危険性』についてだ。

 シエルからは明確な答えはもらっていない。彼女からのアドバイスは『自分に自信を持て』。だから──


「傲慢でも何でもいいよ。僕はカナリアと一緒にいたいんだ」


 揺るがない決意をまずは全面に押しだす。

「だったら──」と侍女が反論しようとする言葉を遮って、堂々と告げた。


「降りかかってくる火の粉は、全部僕が何とかする」


「────」


「僕の問題は、僕のものだ。迷惑をかけるつもりはないよ」


 今までの僕では絶対口にしなかったことを、表にだして豪語する。

 こんな僕でも、積み上げてきたものがある。心を通じて光を灯し、その中で多少の力も得てきた実績。生まれたての鎧兜(なにもできないじぶん)は過去のもの。今の僕なら、ヒト並に会話も、走ることも、助けることだってできるんだ。


 自信を持つこと──シエルが言っていた意味がようやく実を結ぶ。残念ながら、危険な目にあわないっていう保証はできない。でも『絶対何とかする』という気概だけは揺るがない。揺るがせない。

 これが彼女から得た僕なりの答えだった。


「……ずいぶんと自信がお有りなのですね」


「好きなヒトを守りたいって気持ち、エルドライトにもわかると思うんだけど」


 豪語を耳にして、少し間を置いてからつぶやく。堅物シエルにも負けず劣らずの固い表情。シエルの場合は故意(こい)で感情を抑えているが、目の前の彼女は生まれつきである。そこにわずかながら憎らしい感情が見え隠れしていた。

 確証はないし、飛躍した考えかもしれない。だけど、彼女にも僕の気持ちと似た感情を抱えているのだと推測。冷たい態度を取るが、心の奥底では想いを募らせているはず。

 ヒントは、ジンが語ってくれていた。


「結局のところ、アナタはカナリア様と同行して何をなされるのですか。まさか添い遂げるとでも(おっしゃ)るおつもりで?」


 笑わせないでください。そんな意味合いを込めて言い放ってくる。

 徐々に剥がされる仮面。敵対する意思が(あら)わになり、容赦なく僕に叩きつけた。

 だが、その答えもすでに用意されている。


「僕は、これからも色んなヒトを救うよ──」


 そう切り出して、言葉を連ねる。


「手助けが要らないなら、それでいいんだ。でも、どうしようもない場面に直面して立ち止まったとき、やさしく手を差し伸べられる魔法生物(マナニア)でいたい」


 ヒトによっては、それこそ傲慢だと(ののし)るだろう。

 それでも構わない。だって僕は──


「知りたいんだ、この広い世界を」


 僕たちが立つ地上は広大で、知らないことだらけだ。

 生前でも、僕は自分の殻に閉じこもっていた。本当はもっと色んな世界があって、懸命に生きていくヒトたちがいる。その心を知りたいと気づいた。

 それが好きなヒト(カナリア)と一緒なら、どれだけ素晴らしいことだろうか。


『添い遂げたい』──エルドライトが聞いてきたが、たしかに捨てがたい未来だ。

 しかし、僕はもう人間じゃない。いつしかこの気持ちも封印して、離れ離れになる時がきっとくる。カナリアはひとりの女の子として、僕は世界を巡る魔法生物として、各々の道を歩むだろう。

 でも、それは決して今じゃない。今はまだ、そばにいたい。いてあげたいんだ。


「……はぁ」


 宣誓(せんせい)を受けとめ、侍女が吟味(ぎんみ)するかのように(まぶた)を閉じつつ溜息をついた。


「言いたいことの半分ぐらいしか理解できません──ですが、気概は認めます」


 わかりやすく肩を落とし、次第に目をあけて薄っすらと微笑みかけてきた。


「もし、ワタクシがどうしようもなく立ち止まったとき、アナタは手を差し伸べてくれますか?」


 何やら含みのある問いかけ。当然、答えは決まっている。


「もちろん。僕にできることなら」


 手を差しだした。

 友好の印。彼女も歩み寄り、僕の小さな手を繋いで握手を交わす。


「アナタやカナリア様の気概に免じて、ご同行に協力させていただきます」


「よろしくお願いします」


 船の汽笛(きてき)が鳴り響く。

 到着の合図だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ