Memory2 少年の過去
登場人物紹介!
★ザック・B・セントリー(46歳)
セントリーブラッド共和国の代理の王
(王の補佐)カインの父であり、妻を戦い
で失っている。剣の腕は共和国2位の実
力を持つ。階級は騎士王。普段
は穏やかだが、本気になった彼を止め
られる者は現在の王以外いない。
カインの事を心配している。
目は右が青、左が赤のオッドアイで、
髪は黒色で青い毛が少し混ざってい
る。彼は混血の星の民である。顔はカインをそのまま大人にした
感じである。
★レーク・S・ブラッド(過去16歳、現在18歳)
共和国の鍛冶屋の店主。カインが湖の
側で見つけた髪の長い少女。髪は赤
毛が少し混ざっている。鍛冶の腕が
とても高いらしい。目は赤色。
星の民と血の民の事について詳しく
知っている。とても美人。まだまだ
謎が多い少女である。
カインが目を覚ますと平和の城のセントリー家の間に寝かされていた。
「意識を失っていたのか‥‥‥?」
そう言うとカインはベッドから起き上がった。
その瞬間腹に激痛が走りベッドにうずくまってしまった。上級騎士の拳が只者ではないと
カインは実感した。
しばらくすると見慣れた顔が部屋に入って来た。それは現セントリーブラッド共和国の
代理の王また騎士王でもある
ザック・B・セントリーだった。
「カイン‥‥‥問題を起こしたようだな‥‥。」
悲しい目をしてザックはそう言うと部屋にあるソファーに腰掛けた。カインが成長していくにつれて他の者よりこの国や世界に疑問を持ち始めていることをザックは薄々感じていた。
また、そのことをとても心配していた。
「別に俺は間違った事は言ってない!」
カインは、そう怒鳴ると、さらに深く
ベッドにうずくまってしまった。
ザックはため息をつきソファーの上に置いてある七色に輝く花を見ながら
「落ち着いたら私の部屋に来なさい。」
と言いソファーから立ち上がりセントリーの間を出て行った。
カインは毎日の訓練で、疲れていたので、
ぐっすりと眠ってしまっていた。
‥‥‥少年は夢を見た‥‥‥忘れられない。
いや、忘れる事が出来ないそんな思い出を‥。
カインが5歳の時に父から剣を渡された。
この剣を極めることによって、この国を守る事が出来、
そして己の偉大なる活躍を人々の記憶に刻む事が出来る。
という事を聞かされた。
最初の頃は、カインは一生懸命に剣の訓練をしており、剣の模擬戦では負け知らずの生まれつき並外れた才能を持った子供だった。
10歳の時には、上級騎士の攻撃をギリギリ受け止められる様になっていた。
この頃からカインは疑問を持ち始める様になる。
この訓練に意味があるのか?
何故、父や皆は昔の事を教えてくれない?
という事を毎日の訓練で思うようになった。
14歳になった時には、中級騎士の実力が既についており、上級騎士とも剣の模擬戦が出来る程になっていた。カインの疑問はこの国、この世界への怒りと見下しに変わっていった。
何故‥‥何故‥‥‥こんな意味のない事を毎日毎日毎日
!やらないといけないんだ!!
何か巨大な敵が来るっていうのか?
そうだとしても自分は強いからいいじゃないか!!
この国が嫌いだ!この世界が嫌いだ!
外に出して、普通の人々のように生活をさせてくれない、この国を俺は見下す!
それは今のカインの心境とほぼ同じであった。
だが、14歳のある時、チャンスが訪れる。
それは、父からの依頼で、平和の城の外にある鍛冶屋から剣を持って来い、という事だった。
カインはこれまでにない喜びと期待を感じていた。
父は最後に、もし時間までに戻らなかったらペナルティーを課すと付け足したが、
やっと外に出られる!この城の外に!
何があるんだろう!
と外の世界の事で頭が一杯だったので、カインには
聞こえなかった。
依頼日、カインは剣と鎧を装備し、平和の城の門を生まれて初めてくぐった。
これが外の空気‥‥‥なんて美味しいんだ!!
空‥‥‥青い空!!とそれを彩る様に浮かんでいる真っ白い雲!!楽しそうに飛んでいる鳥!!
城の中からでも見えるのに、こんなにも新鮮に感じる。カインは今までで、一番感動していた。
鍛冶屋は市場にある、日が暮れる内に行かなければ、閉まってしまうので、カインは市場に向かった。
場所は父がくれた地図に書かれている。
市場はこんなに盛り上がっているのか!
色々な人の声が聞こえる。
レインボーフィッシュが旬だよ!とかナマケモノビーフが安いよ!とか、買ってみたかったが、金貨は渡されていなかった。
とても残念だったが市場の様子が見れただけで楽しかった。
よく見ると市場の中には騎士も結構いた事に気付いた。
カインも将来、市場を見回る騎士になりたいと思った。しかし、それも叶わぬ夢だろう‥‥なにせ自分は代理の王の一人息子であり、王候補の一人なのだから‥‥。そんな事を考えている内に鍛冶屋に着いた。
剣の扱い方は知っているが、剣の作り方は知らない、
色々な道具があるがどう剣を作るのだろう?
‥‥とカインは一人で剣の作り方を考えていると、ある重大な事に気付いた。
店主がいない!!鍛冶屋はカイン以外誰もいなかった。
とても静かで、少し気味が悪かった。
カインは仕方なく鍛冶屋をでて、少しブラブラしようとした。
日暮れまで時間はまだたっぷりある。
何処に行こうか考えていると、鍛冶屋の隣りに小さな小道がある事に気付いた。
カインは、その道を何か不思議な力に誘導されるように進んだ、鍛冶屋の後ろは木で囲まれていて、先が見えなかった。何があるんだろうと、しばらく木の間を進んで行くと、カインは目を見張った。
そこには小さな湖と草原が広がっていた。
今までで見てきた風景で一番美しく、そしてとても綺麗だ!すぐにそう思った。
‥‥‥あれは‥‥‥人がいるのか?よく見ると黒い長い髪の人が湖の水を飲んでいた。多分女の人だろう。
カインは勇気を出して近づいて
「あの!‥‥ここにはよく来るんですか?」
と、少し震え声で声をかけた。
すると、少女は驚いたのか、こっちを恐る恐る見て
「貴方は?」
と返事をした。自分とした事がなんたる失敗をしたんだ。騎士たる者が名前を名乗らず、いきなり話しかけるなんて、と後悔した後こう答えた。
「我が名はカイン・B・セントリー!共和国の訓練騎士です!」
元気な声で自分の名を名乗った。
少女はキョトンとした顔で、カインの顔を見て笑った。
「あはは!随分と威勢の良い騎士さんですわね!
貴方みたいな人は初めてですわ!」
少女は、とても可愛く美しかった。背はカインよりか頭一つ分違くて、綺麗な赤い目をしている。
髪の毛もよく見ると少し赤い毛が混じっていた。
「私の名前はレーク・S・ブラッド
名前からして貴方と私は混血同士ね!
しかもセントリー家とブラッド家同士だわ!
これも何かの縁かもね!」
カインは少女の名前をしっかり記憶し、質問をした。
「混血っていうのは?」
質問に対しレークは不思議そうな顔をした。
「あら?知らないの?貴方のお母さんは血の民の家系の筈よ。だから貴方の名前の中にB、ブラッドの頭文字が入っているのよ。逆に私はお母さんが星の民の家系だから名前にセントリーの頭文字が入っているのよ。つまり、男の人が種族の違う家系の女の人と結婚すると名前に互いの種族代表の家系の頭文字が付くわ。もちろんそれは子供にも引き継がれるわ。」
そうだったのか‥ブラッド家のBか‥‥まぁ薄々感じていたが‥‥自分の名前の意味を深く考えた事など、なかった。母は幼い時に亡くなっている。父から母の事はほとんど聞いていない。
母について知っている事は剣の達人だったって事ぐらいだ。
「でも混血の子供って左右の目が違ってたり、髪の毛が青と赤、混ざっていたりする確率が高いらしいけど、貴方と私は目が両方とも同じ色だから、混血の中でも純血に近いわね!」
少女が誇らしげに言った。純血と言うのは多分同じ人種、つまり同じ人種の家系同士の子供という事だろう。
そういえば、前に父に聞かされた事がある。
俺の本当の故郷は、この国の東にある偉大なる国だと、そこでは、昔からの伝統を守っているらしい。
おそらく純血で統治された国なのだろう。
また、ブラッド家の故郷は西北にある雪山地帯らしい。そこは、とても過酷な地域で強い者しか生き残れない正に弱肉強食の世界らしい。ここでも昔から続くブラッド家の伝統を守っているらしい。
カインは正直、ブラッド家の故郷はとても楽しそうだと思っていた。
「セントリー家とブラッド家‥‥何より星の民と血の民‥‥‥昔は‥‥‥だったのに‥‥‥本当に良い時代になったと思うわ。」
と少女はブツブツと言っていた。
カインは深く聞くのは止そうとした。
「その一ついいか?星の民と血の民の事は知っているんだが、頭文字を付けるって具体的にどんな感じなんだ?」
星の民と言うのは、青い目を持った、セントリー家を代表とする種族、家系である。俺の友達ギーガー=スターも星の民の家系である。また共和国の中でも少ない純血である。
血の民とは、赤い目を持った、ブラッド家を代表とする種族、家系である。上級騎士シーヴェンス=レッドキルが思い浮かぶ。彼もおそらく純血だろう。
そして、この世界には、星の民と血の民以外の種族、家系はない。
ちょっと前に本で読んだ事を思い出した。
突然質問したので、少女は少しビクッとしてから
「ええ‥‥そうね。例えば貴方と同じ種族の家系のナントカ=スターの男の人が私と同じ種族の家系のシカジカ=レッドキルの女の人と結婚するとするわ、
そうすると男の人はナントカ・B・スター、
女の人はシカジカ・S・レッドキル、
産まれた子供は男の人の家系と頭文字を引き継いで、
アレコレ・B・スターとなるわ。」
少し解り難い気もするが、カインは納得した。
「まぁ、でも混血の名前は結構曖昧だからねぇ。
頭文字を付けない混血も増えているし。」
レークは、そう付け足した。
「あ!そうだ!ここに来る小道の隣りにある鍛冶屋の店主を知らないか?」
カインは、すっかり忘れていた重要な事を言った。
すると、少女は、ニッコリして
「私が店主よ!」
と自信に満ちた笑みで答えた。
「本当なのか!?その様には全く見えないが。」
笑いを抑えてカインは言った。
レークは怒ったのか、頰を膨らめていた。
怒った姿も可愛い。
「失礼ね!これでも私は16歳なのよ!
今は一人であの鍛冶屋を切り盛りしてるわ!
ブラッド家の中で一番の武器を作れるんだから!」
少女は得意げに言った。
「俺より年上なのか!?
一応先輩って事なのか‥‥因みに言っとくが俺は14歳だ。」
カインは恥ずかしそうに小声で言った。
「へぇ〜14にしては、しっかりしているじゃない!
あ、騎士さんだったのか。それよりももっとお話ししましょう!まだ時間は、あるでしょう!?」
カインは少女いや、レークが自分に興味を持ってくれて、とても嬉しかった。
平和の城での生活や友達の事、好きな食べ物、その他色々な事を話した。こんなに、人と話したのは、初めてだった。気が付いたら日暮れになっていた。
レークは急いでカインに依頼の剣を渡し満面の笑みで、叫んだ。
「カイン!!いつか私と剣の模擬戦をしましょう!
私こう見えても結構強いのよ!あと、いつか街で一緒に遊びましょう!」
カインはレークが、他の何よりも美しく、自分は、この少女の為なら何でも出来る、と思った。
「あぁ‥‥もちろんだとも‥‥いつか必ず‥‥‥。」
これが恋という物なのだろうか?いや、それとは違う人の温もりを感じたというか‥‥もっとそう、優しさ、そんな物を彼女から貰った気がする。
カインの目には涙が溜まっていた。
泣いているところをレークには見せまいと、
すぐに前を向いて歩きだした。
‥‥‥そこで夢は途切れた。‥‥
もうあれから2年経った、時間が過ぎるのは速い。そう思いながら、この国、世界を見下している少年は、セントリーの間のベッドを起き出し、父の部屋へ向かうのだった。上級騎士の拳の痛みなど、とうに忘れていた。
補足!
よくわからない所があるので簡潔にまとめてみました。はじめにこの世界には、
2つの人種が世界を統治しています。
★星の民(青い目を持った人々。純潔は髪も青い場合が多い。)
代表の家系はセントリー家。頭文字S。
その他の家系にスター家などがある。
故郷は東の端にある。セントリー王国。
★血の民(赤い目を持った人々。純潔は髪も赤い場合が多い。)
代表の家系はブラッド家。頭文字B。
その他の家系にレッドキル家などがある。故郷は西北の雪山地帯の大集落
ノースブラッド。
セントリーブラッド共和国は、この2つの人種が互いに力を合わせ協力して暮らしています。異なる人種との結婚も可能です。
用語!
★純潔
星の民の血筋だけ、または血の民の血筋だけを引き継いだ者。
★混血
星の民の血筋と血の民の血筋両方を引き継いだ者。オッドアイになったり、髪の色が青と赤に混ざったりする確率が高い。
混血の子供は父の家系によって星の民か血の民かが決まる。
★例、純血同士の子供の場合
父、ナントカ・B・スター(純血の星の民)
と
母、シカジカ・S・レッドキル(純血の血の民)
の子供はアレコレ・B・スター(混血の星の民となる)
★例、混血同士の子供の場合
父、ナントカ・B・スター(混血の星の民)
と
母、シカジカ・S・レッドキル(混血の血の民)
の子供はアレコレ・B・スター(混血の星の民となる)
★例、同じ民の混血、純血の子供の場合
父、ナントカ・B・スター(混血の星の民)
と
母、シカジカ・B・セントリー(混血または純血の星の民)
の子供はアレコレ・B・スター(混血の星の民となる)
男性、ナントカ・B・スター(混血の星の民)が女性、アレコレ=セントリー(純血の星の民)と結婚する場合、女性は男性の頭文字を引き継ぎアレコレ・B・セントリー(純血の星の民)となる。こらは逆も同じで男性が頭文字を持ってない純血の場合、混血の女性の頭文字が男性に引き継がれる。
わかりにくくて本当にすいませんm(_ _)m