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夜の空から「ありがとう」

作者: 星

 敦也あつや志織しおりはいつも一緒。怒ってるときも泣いてるときも笑ってるときも。

 二人はいつも喧嘩する。僕からしてみれば、いつも悪いのは敦也。


 敦也は面倒くさがりや。やるときはやる男だけど、大抵のことは志織に甘えて志織任せ。


 志織は志織で世話焼き。敦也に文句を言いながらも殆どの事を手伝ってしまう。


 この二人だからこそうまくいくんだけど、この二人だからこそ喧嘩しちゃう。

 でもね、本当は僕は知ってるんだ。本人達も気づいてないけれど、ほんとはこの喧嘩してる時間も、二人にとっては幸せな時間なんだ。僕には二人が見えないけれど声を聞いてれば分かるんだ。二人とも、お互いが無意識のうちに傷付かないように気を配りながら慎重に言葉を選んで、言葉に気持ちを乗せて喧嘩してる。


 え?それ憎しみ込めちゃってるじゃん!だって?違う違う。二人ともちゃんと愛を乗せてるんだもん。直接聞いてる僕が言うんだから間違いないよ!

 それにね、絶対に最後は二人とも謝るんだ。そして、そっとキスをするんだ。


 もうね、みてるこっちがあつくなっちゃうよ!

 え?お前は目が見えないはずだろうだって?

 いやあ、細かいところによく気づいたね。確かに僕は目が見えないけどママ達が教えてくれるんだ!

 今、二人はキスをしているよ!とかご飯食べてるよ!とかこれから仕事行ってくるよ!とか愛してるよ!とか他にももっとたくさんあるんだけど有り過ぎるから後は内緒!!


 今日は敦也と志織は泣いてるみたい。昨日は二人で喧嘩してたみたい。昨日の喧嘩はいつもと少し違ったんだ。説明しにくいんだけど、二人で喧嘩してるんだけど、どっちも怒ってもないんだ。でもね、二人の声にはごめんね。っていう気持ちがいっぱい乗ってて…。

 すこし前はあんなに楽しそうだったのに…。僕も何でそうなったのかよくわからないんだけど、ママからもごめんね。としか言って貰えないんだ。

 僕がどんなに聞いてもごめんね。ごめんね。しか帰ってこなくて…。


 本当に謝らなくちゃいけないことがあるのは僕の方なんだ。僕ね、最初からいつかこうなるだろうなぁ…って知ってたんだと思うんだ。自分でも分からないけど、なんとなく心のどこかで気づいてたんだ。でもね、もしこのことがばれちゃったら僕がよ…いや、二人と一緒にいられる時間が短くなっちゃうんじゃないかと思って…。

 

 ごめんね。別に僕はパパとママを信じられなかったわけじゃないんだ。でもね…でもね…。

 あれ?なんだろう?この水は…?目から出てすぐに水と混ざってわからなくなっちゃうけど僕の目から何か出てるよ。

 あれ?一粒だけズーッと上に上っていくよ?あ、そうか!


 そろそろ時間みたい。

 パパ、ママあのね、僕パパとママと少ししか一緒にいられなかったけど、すっごく楽しかったよ!だから泣かないで!最後に、少し早めの誕生日プレゼントだと思って、僕に笑顔を頂戴!

 パパ、ママ、僕をいろんなところに連れて行ってくれてありがとう。いつも話しかけてくれてありがとう。そして、僕にこの「ありがとう」って気持ちを教えてくれてありがとう。


 そろそろ僕はいかなきゃ。ほんとはもっと一緒にいたかったんだけど、もう、僕の流した最後の涙がお空に上り始めたから。僕はもうここに入れないけど、ずっと一緒だよ?

        

         パパ、ママばいばい!


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