Prolog
『――…助けてください。』
そう言って逃げ込むように入った保健室。
普段なら慣れないこの匂いも今では関係無い。
心にぐるぐると何かが廻っている感覚に加えて頭がぐらぐらと揺れる感覚に襲われる。
振りきるようにして走って来たのは逆効果だったらしい。さっきより症状が酷い気がする。
保健室の先生は私に驚きながらも空いていた奥のベッドへ案内してくれた。
「何が、あったの?」
背中を優しく擦ってくれる先生。
そのゆっくりとした言葉の言い方からは、私を心配してくれている事が感じられた。
しかし、私の症状はそのまま。
頭はぐらぐら、心はぐるぐる。
さっきの事が頭に思い出されては、胸が苦しい。
心が、痛い。
私が口を開きたくない事が分かったのか、先生はベッドに寝るように言ってくれた。
座っていたシワ一つない白いシーツのベッドに倒れる。
保健室の時計に目をやれば、既に昼休みの時刻を過ぎていて五時間目の時刻を刻んでいた。
コチコチと秒針の音がやけに大きく聞こえる。
目を閉じても眠れる気がしない。
―――……さっきの事を忘れたい。
頭の中の出来事を別の事にしてしまいたい。
コマ送りのように思い出されるさっきの光景と感覚が、頭と体から離れないでいる。
本来なら入れない筈の屋上のコンクリート。
そこまで冷たくない風の異常な冷たさ。
悲しく微笑む親友の顔。
周りのどよめく声。
救急車のあの大きな音が耳から離れない。
また気分が悪くなってきた。
頭が、今さっきの光景を拒絶する。体が、震える。
あぁ、事を上書きしたい。
親友が、飛び降りた事何て、上書きしてしまいたい。




