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第41話:とりかえ2

漆黒を亜麻色に、かっちりとした侍女の服を動きやすい服装に換え、主の寝室にぽつりと自分だけいるのは妙に落ち着かない。

何度時計を見ても、針は遅々として進まず、やっと一時間ほどが過ぎた頃には、もう半日以上こうしているような気がしていた。

今までも身代わりになったことはあるが、絶対に安心な場所にいると確信があった。

ジニスでは、全てが味方だった。

ここでは、完全に味方だと思えるものは、ごく僅かだ。

しかも、今回はその僅かな人の目すら掻い潜って動いているのだから、心配は一秒ごとに大きくなっていく。

見張りはうまくかわして行ったものの、無事に目的地まで辿り着けただろうかと幾度と無くため息を零した。

現在のハナは一応、セイラと同じ格好をしているが、ジョゼやケイトが入ってくればバレてしまう。

それは外に出て行ったセイラにも言えることだった。


「気づかれる前に戻ってこられると良いですけれど」


万が一に備えて、ハナは寝室に篭っている。

よほどの礼儀知らずか緊急事態でもない限り、誰かが押し入ってくることはないからだ。


「……大丈夫ですわ」


ハナは寝室のドアを見つめながら祈った。

決して、嫌な知らせを届けるために、ドアが開くことがないように。

セイラが早く、ただいまとドアを開けてくれるように。

大丈夫の言葉は自分を鼓舞するためだったか、さほどの意味を持たずに消えていった。

何もする気が起きず、ドアを睨み付けたまま微動だにせずに居ると、頬を冷たい風が撫でた。

冷気の侵入場所を探すと、窓が僅かばかり開いている。

まさか、セイラが窓から戻ってくるなどありえない。

けれど、見張り役がケイトに代わっていたら……何らかのトラブルが発生したとしたら……

ハナはゆっくりと慎重に窓に近づいた。

隙間から下が覗けるほど近づいても、セイラの顔は見えない。もう一歩近づいても、それは変わらなかった。

そもそも、いくらセイラとて体を支えるものが無いのに、ここまで上がってこれるはずなどないのだ。

警戒して後ずさろうとした瞬間に、窓は勢いよく開けられ、冷気が全身を打った。

悲鳴を上げる前に、視界が真っ暗になり、急速に体から力が抜けていく。

完全に意識が遠のく前に、ハナの耳に冷たい声が振ってきた。


「一緒に来てもらいますよ。セイラ王女」


零れ落ちそうだった主の名を、ハナはぐっと飲み込んだ。


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