第23話:歌2
『お城には美しい人がいる
髪の色はアリオスの初雪の色
冬の女神が祝福に雪の色を与えたの
その美しさに微笑んで月が瞳に千の色を与えたの
満月の日には紫水晶の色
その美しさに春雷が喜んで知恵を与えたの
上弦の月の日には金の色
その美しさに暁が哄笑して力を与えたの
三日月の日には紅玉の色
その美しさに炎が激励に厳しさを与えたの
新月の日には黒曜石の色
その美しさに夜が感嘆し優しさを与えたの
泣かないでおくれ美しい人
その色を曇らさないで笑っておくれ
太陽よりも輝かしく
泣いておくれ美しい人
その暖かい慈雨を降り注いでおくれ
月よりも麗しく』
零れ落ちる言葉は音に乗り、優しく人の間を渡っていく。
子どもたちが高らかに吟遊詩人が緩やかに。
母親は子守唄代わりに歌い父親は仕事の合間に鼻歌を。
『お城には美しい人がいる
他国の神々までもが称賛した美しい人が
お城には美しい人がいる
全てのものが色を無くすほど美しい人が
さぁその美しさを讃えに行こう』
ついには街を包む壁を越え、街道を滑っていく。
その音を他国の商人が拾って口ずさみ、踊り子が歌にあわせて衣を翻す。
絵描きも詩人のその姿を思い描こうと頭を働かす。
『行こう
行こうアリオスへ』
けれども
まだ誰も知らない。
その美しい人物の名前を。
『行こう
行こうタナトスへ』