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第12話:部屋

 セイラ王女のために整えられた部屋は田舎町のジニスに構えられた部屋に比べようもないほど広く豪華な造りだった。

 至る所にレースがあしらわれ、白を基調とし全体に淡い色調で纏められている。

 いかにも良家のお嬢様が好みそうな部屋である。

 しかし例外はいるようで、部屋に入った瞬間、こっそりとレースを外してしまおうとセイラは思った。

 セイラがジニスから持ち込んだものはこの可愛らしい部屋に合いそうもない。


「全くなんて方ですの!」


 予想通りハナは烈火のごとく怒り出す。

 顔見せに来ないことに始まり、今では花瓶の置き方にまで文句を付けている。


「ハナ落ち着きなよ」


 セイラは踝まで沈むふかふかの絨毯の上に持参した本を広げながら苦笑した。


「これが落ち着いてなどいられますか!だいたい国王もそれを許すなんて!」


 ハナが地団駄を踏むが、衝撃はやんわりと絨毯に吸収されてしまう。

 絨毯の上でも安眠できそうだ。


「式には会えるさ」


「式まで何日あると思ってるの!」


 式までは一ヶ月とちょっとの間がある。

 それまでにこの国に慣れて欲しいという心遣いなのだがハナの怒りには逆効果かもしれない。


「ハナ!見てみなよ」


 セイラは丸テーブルの上に置かれた皿を指差した。

 その上には可愛らしい焼き菓子が並んでいる。


「向こうでは見ないお菓子だね」


「そうですね。この白いのは粉砂糖かしら」


 ハナはお菓子作りがうまいのだ。

 セイラのおやつは専らハナが作っていた。

 ハナの気を引くならお菓子の話だということを十分に理解していた。

 研究したくてうずうずしているハナに手を付けていいと言うとさっそく解体に取り掛かった。

 怒りはすっかり何処かへと追いやられてしまったようだ。


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