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最後の一人も登場

 最後の一人は、決して会いたくもない。

 最後にあった途端、様々なイベントが始まり、フラグが立ち始めるはずです。

 いじめや、陰謀や、ラッキースケベまで・・・って、最後のは特にいらない!



 きつい……。

 帰りの馬車の中で、思わず、深いため息をついてしまっていました。


 「お嬢様、ご心配ならば、次からは、私がエスコートいたしますが…」

 ブライアンが、心配そうに顔を覗き込んできてくれます。

 お願いしたい。

 というか、きつくなくても、ブライアンのエスコートは魅力的です。

 そのたくましい腕につかまらせて欲しい。


だけど、次の攻略対象は、下手すれば、不敬罪と言われても、男爵程度じゃ文句も言えない。

さっきの様な態度を取って、罰せられるのは、ブライアン一人です。

今のは、夫人が助けてくれたけれど、護衛ごときが、話しかけている令嬢との間に入るなど、あり得ない話なのです。

 出会いイベントは、迎えたくない。

 迎えないように、全力で避けていくけれど、避けきれなかったら?

 ブライアンは、私を守るために・・・こんなくだらないことから守るために、悪ければ、投獄されてしまう。

 こうなる前が良かった。

 最後の一人が出てくる前に、社交界から身を引きたかった。


 けれど、ここまで避けきれずに来てしまったのなら、悩んでいても仕方がないのです。

 一息ついて、勢いをつけます。

「大丈夫!私、頑張ります」



「…やはり、そうですよね」

ブライアンの、つぶやきは、私の耳には入っていなかった。




 私は、元平民。

 父に認められていなかった(となっている)子供です。

 貴族社会の風当たりは強く、結構陰口など叩かれている立場です。


 そんな陰口をきいて、中庭で一人涙する場面で、イベントが起こります。

 グラニール皇太子殿下との出会いイベント。


 私は泣いていません。

 中庭にも近づきません。

 今日は、会場から出ません。

 そうしたら、皇太子なんてたいそうな方とお知り合いになるなんて事態はないのです。


 …………ないはずなのですが。


 「あなたが、レティシア=シープリズイ令嬢ですか?」

 にこにこと、キラキラさんが微笑んでいます。

 髪も瞳も金の色彩、王家の色彩を持つ、皇太子殿下、その人でございます。

 「はい」

 声を掛けられた瞬間から、私は礼をとった姿勢で微動だにできません。

 どうして、この溢れるほどの人の中から、男爵令嬢などに声をおかけするのでしょう。

 私は寄っていきませんよ。放っておいていただいて良いのですが。

 「楽にしてください。あなたの、治癒魔術に興味があるのです。しかし、わざわざ、王宮にお呼び立てするわけにも行かずに」

 またもや、治癒魔術か。

 眉間にしわが寄った気がするが、すぐに無表情の中に押し隠します。

 顔を上げると、エヴァン様とセオドア様が、皇太子殿下の後ろに控えておりました。

 卑怯な。皇太子を連れてくるなど。

 治癒魔術など、披露しなければ良かったなと思うけれど、そうでなければ、ブライアンはそばに来なかった。


 治癒魔術は、神殿の管轄です。

 皇家は、多くの魔術師を揃えておりますが、その中で治癒を使えるものは、ほぼいないと言っていいでしょう。

 治癒を使えるものは、神殿にて、その才能を開花させねばならないのです。

 身体能力などと違い、魔力は、持って生まれたもの。

 後付けはできないのです。

 神殿は、治癒魔力が秀でたものを探し集め、治癒能力を育てていきます。

 どうやって見つけ出すのかは分かりません。

 けれど、治癒魔力を持ちながらも、幼い頃に見つけ出されない者は、ごくわずかです。


 私は、そのごくわずかな中の一人。

 特異な治癒魔術。

 私の才能は、育てることも、乱発することもできません。

 だからこそ、稀少で、出家する予定もない男爵令嬢を神殿に引き取ることもできぬ為、ブライアンが派遣されたのです。


 神殿に絡め取られていない、稀少な治癒能力者に、皇家の者が近づかないわけがなかったのです。


 「中庭に、美しい庭があるのですよ。そこで、お話しさせていただけませんか?」

 絶対に嫌です。



 …皇太子相手に断ることなど、できましょうか。



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