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舞踏会に行きます

 ブライアンを口説き落とせなかったので、今夜も舞踏会です。

 恨めしそうに見ても、素知らぬ顔で立っています。

 せめて、エスコートをしてほしいとお願いしても、

 「恐れ多い」

 一言で切って捨てられました。



 仕方なしに父にエスコートされ、今夜も夜会です。

 「お父様。気分が悪いです」

 「そんな不満そうな娘を連れていく父も気分が悪いよ」

 睨まれました。

 気分悪いは仮病ですよ?機嫌が悪いわけではありません。

 本当なら、母をエスコートしたかったらしいのですが、断られたそうです。

 多分、「え~、めんど~い」とか言われたのです。

 その鬱憤をぶつけられても困ります。


 こんなふうに喧嘩しながらも、私と父は、それなりに仲良しです。

 母とも仲良しだし、妹も生まれたし、家族仲は良好です。


 ゲームでは、ヒロインは魔力が発現しない自分が本当に父の娘かどうか悩みます。

 実際は、チートな能力を持っているのですが。


 私には、そんな悩みはありません。

 父の娘じゃなくとも、父が、私を私と認めているのです。

 それ以上も以下もないでしょう。

 これも、私が成熟した人間の感覚を持っているためでしょうか?

 父の愛情も、母の愛情も感じることができるのです。

 けれど、

 「はあぁ、クレナと腕組んで歩きたかった」

 まあ、うざいものはうざいので、無視はしますが。


 会場につき、主催者の方が、入口で挨拶をしています。

 ここは、トレコモール伯爵家です。

 由緒正しき、トレコモール伯爵家は、家系図をたどれば、王家以上の歴史を持つのではないかとさえ言われる、古い家なのです。

 屋敷も、数百年の歴史を持つと聞きます。

 素晴らしい建築技術で建てられた屋敷は、あちらこちらに興味を惹かれる造りがあり、後からじっくりと案内していただけないかと考えていました。

 ……案内?

 キョロキョロと建物に目を奪われていた私を笑顔で迎えたのは、攻略対象の一人でした。


 伯爵家長男、キュース=トレコモール。

 優しい性格と、穏やかな雰囲気。金髪碧眼の美男子が、そこに立っていました。


 「初めまして。麗しのレディ。屋敷はお気に召していただけましたか?」


 やばい。あんなに警戒していたのに、さっぱり忘れていました。

 こいつ、チョロQだ。

 『初めましてで、目を見ながら微笑むだけで一目ぼれされちゃうのよ!ちょろいわ!』

 記憶の中で高笑いするな。

ちょろいキュースで、チョロQとあだ名されていました。


 でも、対策は分かりました。

 目を合わさないで笑わなければいいのです。

 「失礼いたしました。お招きありがとうございます。

 レティシア=シープリズイでございます」


 淑女の挨拶をしながらも、顔をうつむけて、目を合わさない。

 父の方は、並んで立っていたトレコモール伯爵と挨拶を交わしていました。

 早く終わらせてくれないかなと思いながら、顔をうつむけながら、父を気にしていると、

 「あの、レティシア様?ご気分でもお悪いのですか?」

 心配そうに声をかけられてしまいました。

 本当ならば、よくぞ言ってくださいましたとばかりに、そうなんですの!と返事をするところですが、チョロQ相手では、話は違うのです。


 「いいえ。何でもありませんわ。お気になさらないでください」


 ・・・まずい。突き放すような言い方になってしまいました。

 「レティ・・・?」

 父が不審気にこちらに意識を向けるのがわかります。

 こちらは男爵。向こうは由緒正しき伯爵様。


 失礼な態度をとっていいはずがないのです。

 「申し訳ありません、失礼な態度を取ってしまいました。少々、緊張してしまって…」

 微笑むのはダメだ。

 だから、こわばった顔で見上げれば……。


 真っ赤に染まる顔、後に嬉しそうに笑う、チョロQ。



 ……チョロQ、攻略しないでいくのって、この顔でいる限り無理じゃね?

 


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