巫女
ブライアンが最初から婚約者?そしたら、いままでの努力は何だったのですか。
何故私は婚約者を探しに、嫌で嫌でたまらなかった夜会に参加したんですか。
「そして、巫女だ」
……。私をつかんでいる気がするのは気のせいですか。きっと気のせいです。そう考えて、はっと我に返りました。
「神使だったら、ブライアン、巫女様と結婚するんじゃない!」
気がついて叫ぶと、頬を押しつぶされました。あにをふゆのえす!
「お前が巫女だ」
不愉快そうな顔で覗き込まれるのは、思った以上に怖いです。
「私と結婚すると言うことは、あなたは巫女になるということだ。それに、反対する者たちがいた」
者たち?複数形で言われて驚きました。
え、ブライアンと私の結婚がそんなにたくさんの人に認める認めないのと議論されるような状態だったの?
「その時の世で、最も治癒術が優れている者が巫女になる。だが、今回は、意見が割れた。力が、強すぎて、世に出していいものかどうかが決まらなかった」
力が強すぎて?
最も優れている者と、力が強いとは別物のような話し方をするブライアンに首を傾げました。
「強すぎる。神殿に力が集まりすぎるのは本意ではない」
神殿に恩を売っておけば、何かあったとき、奇跡の治癒術が待っている。今までの治癒術とは比較にならない、完璧すぎる治癒。その事実は、神殿に必要以上に権力を集めると言うのです。
均衡を保った王家と神殿の力に別の力が加わることで、国が傾くと言うのです。
なんだか大事になりました!
「それで、婚約が正式なものとは成り得なかった。・・・分かっていると思うが、男爵も反対派だ。理由は少々異なるが、娘が巫女になるなんて嫌だと、あなたが巫女になってしまう前にどうにか結婚相手を探させようとしていた」
デビュタントの年にいきなり結婚相手探してこいは無理矢理だなと思っていたんですよ!
そんな理由があって、焦っていたんですね。
「だが、思った以上に噂は真実味を帯びていてな。セオドア様の様な興味本位な者から、真面目に真実を突き止めようとする者まで出てきた。だから、その噂に噂を追加することにした」
噂噂とよく分からなくなってきました。
「この治癒には、一つだけ、外せない条件があると。術者が、強く願わなければならないこと。願えなければ、術は発動しない。平穏の中で、術氏が愛する者だけを癒すことができる・・・とした」
微妙に脚色していますね。私は小鳥さんでも癒せます。
強い願いが必要なのはあっているのですが、私は、結構誰でも死にそうだったら願える自信があります。
「その愛する者は神使たる、私・・・」
うひゃああぁぁ!
その甘い声はなんとかなりませんかね!違う人みたいです!
あごを持ち上げないでください。なんかもう、いろいろ一杯です。
「と、親友たるアルベティーヌ=ディフォンティー公爵令嬢」
アルディ?
思わぬところに名前が出てきてびっくりしました。
「これで、神殿、王家双方に、巫女に繋ぎを取れる人間がいることになる」
なるほど!すごいです!アルディを親友だと言って回るのは照れくさいですが、とてもいいです。嬉しいです。
思考がアルディのもとへ向かったことに気がついたのか、顔をつかまれて、ブライアンに無理矢理目を合わせるようにされました。
前々から思っていましたが、ブライアン、私の扱いが雑です。
「ということで、レティ、私と結婚するぞ」
「は、はひ・・・」
ほんと、もういっぱいいっぱいなのですが、とりあえず、結婚できることは確定させておきました。