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神殿到着

 神官の中の、中心にいた人が前に出てきて、頭を下げました。

 「無事のお帰り、嬉しく思います」

 「ああ、部屋に行く。今日はもう用事はない」

 「かしこまりました」

 ブライアン、偉そうですね。というか、偉い人っぽいですね。偉い人なんですか?


 当然のように抱えられたまま歩かれるので、途中暴れてみると、冷たい目で見降ろされたので、おとなしくしています。

 なんですか。恥ずかしいのに、私の意見は聞かない気ですね!


 そうして、一つの部屋に辿り着きました。

 私の部屋よりもずっと大きいです。

 神殿の中って、初めて入りました。なんだか、こんな立派な部屋もあるんだなあと思います。


 ずっと不思議そうにする私に、嫌そうな視線を送ってから、ブライアンは軽く言いました。


 「オレは、神使だ」


 神使。それは、神殿の最高権力者では・・・なかったでしょうか?あれ、覚え間違いでしょうか。

 今は神使も、その伴侶たる巫女も不在だと、そんなことを、ブライアンから教えてもらったと思います。

 ですよねえ!?

 「今はここにいるから、神殿には不在だ」

 屁理屈っていうんですよ、そういうの!

 え、じゃあ、ブライアンは神殿で一番偉い人ですか。

 それって、この国では陛下の次に偉い人ってことですよね。

 さらに、結婚相手は、巫女って決まって・・・巫女は不在だと聞きましたが、いつかは、巫女が立てられるのは決まっているのです。

 なんだ・・・・・・。

 男爵位を継げなんて言っておいて、爵位なんて全く必要のないほど地位が高い方だったんじゃないですか。

 「魔力が高い上に、治癒術が使えるから、持ち上げられただけなんだがな」

 そんなふうに簡単に言いますが、高い能力を持ち、高い地位にあることは確かなのです。

 なんだ・・・なんだあ・・・・・・。

 諦めていたはずなのに、諦めてなかったのだと思います。またもや涙が出てきました。

 さすがは、隠しキャラですね。

 見た目はそんなによくないくせに、やっぱりハイスペックなんですね。ふーんだ!


 私を抱き上げたままのブライアンが、そのままの格好で寝室に入り、ベッドに座りました。

 さっき眠りかけたから、寝てもいいということでしょうか。

 今はあまり眠くないのですが、寝てもいいなら寝ましょう。


 「で?お前は何を一人で背負っている気なんだ」

 たくさん走り回ったから。疲れました。話したくありません。

 自分が暴走したのは分かっているのです。

 アルディも、ブライアンの声にも耳を貸さず、突っ走りました。


 折角、攻略対象者が周りにいなくなれば、死亡フラグが立ち上がって、回避が隠しキャラとの結婚だなんて、ひどいです!

 ブライアン結婚してくれないのに!なにこのイベント、叩きつぶしてやると・・・・・・なんとなく、現実が見えていませんでした。

 この世界で生まれ育っているのだから、しっかりと感じている現実感が、空想のものと混ざって、どうしていいか分からなくなりました。


 「ブライアンが結婚してくれないから」

 「意味が分からん」

 間髪入れずに帰ってきた返事に、少しだけ安堵する自分を感じました。

 おかしいけれど、断れないような立場にいるのではないのだと分かって、嬉しかったのです。

 ・・・・・・まあ、求婚を断られて拗ねてしまうのは仕方がありません。

 そんな私に気がつかず・・・気づいていても?ブライアンが私をひょいと立たせてから、一つのドアを指さして言います。

 「泥だらけだ。風呂に入ってこい」

 確かに、元々抜け出したし、働いたし、こけたりして、ベッドに入る格好ではなかったですね。

 さすがブライアン。乙女に汚いと堂々と言うところがデリカシーが足りません。そこは、『疲れただろう?湯につかってゆっくり休め』など、言いようはあるのですよ。

 ですが、言っても無駄なので、

 「はい」

 返事をしたものの・・・

 「ブライアンは、ここにいるのですか?」

 「ああ、私もこの部屋だ」

 当然のようにベッドの上に座ってくつろぐブライアンに首を傾げます。

 「……も?」

 「レティシア様も、この部屋だ」

 ・・・・・・。何故に同室?

 「逃げださないようにだ」

 考えを読みましたね!?

 「そうだ、トイレもあるぞ。もうわざわざ一階まで行かなくていい。よかったな?」

 「わ、・・・わあい?」

 根に持ってますね!

 怖いので、お風呂場に逃げ込みました。


 「手伝いは、いるか?私が洗ってやろうか?」

 脱衣所の向こう側、思った以上に近い場所から声がしました。

 「結構です!向こうに行っていてください!」

 慌てて、返事をしました。ブライアンが、馬車を降りるときから?ちょっと変です。


 さて、・・・・・・返事をしましたが、これ、どうやって着るのでしょう。

 四角い、大きな布が一枚。

 多分、これを体に巻いて、腰に巻いて。あれ?おや?・・・むむ?ま、まあ、巻けばいいのでしょう。よしよし。

 「ミノムシか」

 「着方が分からないんだもん」

 きれいになって出てきた女の子に言う言葉ではないですよ。ベッドに座ったままだったブライアンに文句を言えば、手招きされました。

 「だから手伝うと言っているのに」

 ため息を吐きながらなにをしていらっしゃるのでしょうね?ちょっと、脱がさないでください。

 「これでいいの!もう!」

するすると脱がされそうになった服を、もう一度体に巻き付けて、ブライアンの隣に座ります。

 全く、意地悪にもほどがあります!


 赤くなった顔を落ち着けようとしている私を、ブライアンが抱き寄せました。

 あれ、今はちょっと待ってください。とっても心もとない格好しているので。



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