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参上

 あっという間にブライアンが先生の手を払って、私を胸の中へしまい込んでくれました。

 「ぶら、いあ・・・ごめ・・・」

 「謝罪は後から聞きます。今は、彼らに手をかざす仕草をしてください」

 助かったと思ったら、くるりと方向を変えられて、小さな声で言われました。

 彼らと言われた白い服を着た神官たちが、一斉に私に向かって頭を下げました。

 手をかざすって、ええ?

 言われたとおり手のひらを神官様たちに向けると、手から金色の光が出てきました。

 驚いて手を引っ込めそうになると肩をぐっと押さえつけられました。

 「じっとしていてください。驚いた顔もしないように。できるなら、笑って」

 んな無茶な。

 何が起こるか分からないのに、無表情って。あなたじゃないんですよ。

 私の手から出る金色の光を、みんなが惚けたように眺めているのが横目に見えました。

 これって、ブライアンの魔術のはずです。

 魔術の才能がないと分かった後、魔術の勉強の時間に時々見せてもらいました。

 私の手から出るように演出できるとは知りませんでしたが。

 しばらくして、ゆっくりとその光が収まっていきます。

 「ありがとうございます。レティシア様」

 よく分かりませんが、とりあえず、笑みを浮かべてブライアンへ頷いておきます。

 引きつった笑顔に気に入らなそうなブライアンの視線が痛いです。自然な笑顔とか無茶振りしないでくださいよ。

 「ど、どういうことですか?」

 先生から疑問の声が上がりました。奇遇ですね。私も同じことが聞きたくて仕方がなかったところです。

 「レティシア様の奇跡の力は、お一人だけに与えれば、数日間、他の誰もその恩恵に預かることはできません」

 ブライアンの冷静な声が響きます。

 驚いた声を上げる人々の中で、私が治癒術発動後眠ってしまうことを知っている先生は黙りました。それを伏せて、順番を決めるなどと言って一番にアリムを治癒してもらう気だったのでしょうか。

 「ですが、今、その奇跡の力は、この治癒術士たちに分け与えられました」

 はあ?・・・って顔をしてはだめですね。わかります。ブライアン、顔が怖いですよ。

 「大勢に力を使うため、効力自体は弱まりますが、助かる人間は劇的に増えるでしょう。その担い手として、神殿の治癒術士が奇跡の力を届けに参りましょう」

 その言葉にあわせるように、神官たちが前へ進み出て、頭を下げました。

 「ほ、本当に・・・?娘は、助かりますか?」

 「力を尽くします。奇跡の力が皆様に届きますように」

 わっと、その場が沸き、嬉しそうにする人も、ほっとした顔をする人も、私に、申し訳なさそうな視線を送る人も、神官様たちと一緒に治療院へ引き返していきました。

 私が気が抜けて、座り込みそうになると、ブライアンの腕が私を支えてくれました。

 「あ、ありが・・・・・・ご、ごめんなさいが先かしら」

 ブライアンの視線の鋭さにびっくりです。困りました。すごくほっとしたのに、すごく怖いです。さっきの追いかけられていたのとは、また別の怖さです。


 「帰ります」

 「はい・・・・・・」

 迎えに来たのは、神殿の馬車でした。

 「今の説明でも納得できない人が押しかけてこないように、男爵家ではなく神殿に戻ります」

 馬車を見て驚いていた私に手を貸しながら、ブライアンが説明をします。

 神殿の馬車は背が高くて少々乗りにくいですよ。

 「神殿で、魔力切れの治癒術士に力を与えているという体裁を整えます」

 もたもたと足を上げる私を、ブライアンがひょいと抱えて馬車に乗り込みました。

 すみませんね、鈍くさくて。

 御者に合図をすると、馬車がゆっくりと動き出しました。

 正面に座るブライアンは、神官の服を着て、そういえば、神殿から派遣されてたなあと再認識するような神々しさです。

 まあ、無骨な顔と、鍛えた体つきと、恐ろしい表情を見てそう感じるのは多分、私だけでしょうが。


 うんうんと、ブライアンの格好良さを再確認していたところで、私の頭が掴まれました。

 頭を片手でつかんで持ち上げようとしているのはブライアンです。

 うん、言わなくてもわかっていましたよね。

 「まだ理解が足りないようだな。このアホな脳みそは」

 なんという言い草でしょう!仮にも(?)雇い主の娘に言う言葉ではありません!

 まあ、ここまでのことをしでかしてしまったので、アホであることを否定はしませんが。

 


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