停戦
だけど、利用はします。
「高位貴族の方と仲良くしていたと、意地悪をされたのです!私、もう、嫌ですわ!」
泣き崩れてみました。
「どうして、そういうのだけ上手くなっているんだ」
練習したからです。
私の顔はとてもかわいいので、何しても似合うなあと思って、いろいろ研究した成果です。
父がため息を吐いていますが、まあ、いいです。
父をだませるとは思っておりません。
あわよくば、くらいです。
「まあ、いい」
けれど、父があっさりと了解してくれました!
どういった風の吹き回しでしょう。
それでは、アルディのところに遊びに行ったりしましょうか。
なんて考えていたときに、門から、馬車が入ってくるのが見えました。
……珍しい。お客様のようです。
大きな、華美な馬車…嫌な予感がします。
「……お父様?」
「うむ」
なんてことをしてくれるのですかあ!
だから、嫌だと言っていたでしょう!?
なんだか・・・記憶にあります。
そう、これは・・・お宅訪問イベント!?
回避成功したと思ったら、目白押しですよ!
や~め~て~っ!
「やあ!レティシア様!」
何故、ここに現れるのでしょうか。
屋敷の一番良い部屋に通され、のんびり茶をすすっているのは、エヴァン様と、セオドア様、そして、スティールンス様でした。
一人用ソファにそれぞれ、一人ずつ座っていらっしゃいます。
それに囲まれるようにある長ソファが私の居場所ですか?
「レティ、わざわざお越しくださったんだ。失礼の無いようにね」
父が私に釘を刺します。
お父様、そんなに厳しく、釘を刺したら、吐血しそうです。
諦めて、向かいのソファに体を沈めると、スティールンス様が、にこやかに聞いてきました。
「エヴァとセオが呼んでいるんだ。私もレティシアと呼ばせていただいても?」
「いいえ…」
「もちろんですよ。なんとでも」
お父様、今、私は接客中です。出て行ってください。
「では、私のことは、アーネストとお呼びください」
彼がにっこりと笑えば、父が満面の笑みで、勝手に返事をしてしまいます。
「なんと光栄な。ありがとうございます」
だったら、お父様が呼んでいたらいいじゃない!
思いっきり、嫌ですと表情に出していたら、笑顔で睨まれました。
くっ!なんて器用な!
それだけ了承して、父はさっさと出て行きました。
むすっとして座っていると、笑い声がした。
「随分と嫌われてしまった」
スティールンス様…改め、アーネスト様が、嘲るでもなく、普通に笑っています。
「それは、私が、ではないのですか?そういう態度をとったと記憶しております」
「いや、なかなか好ましかったよ」
………。
聞こえなかったことにしましょう。精神衛生上良くありません。
「私の態度が良くなかったのは自覚している。それに対して、あなたの凛とした姿は美しかった」
無視することはできないのでしょうか。
大きなため息をついて、仕方がないので返事をします。
「私に嗜虐趣味の方をいたぶる趣味は…」
「いやいやいやいや。違うから」
慌てたように身を乗り出してくるアーネスト様を抑えて、エヴァ様が話し始めました。
「私は、求婚者として、今回訪問したんだ」
無駄な色気を振りまいて、いきなり求婚を始めたエヴァ様。
とりあえず、
「お断りします」
「早っ!ほら、これからお互いを知っていこう?」
「いえ、見た目で判断させていただきました。申し訳ありません」
「オレの見た目って、そんな駄目!?」