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シーン4!

「そういわれたらいますけど」

「よし! そうだろ、そうだろ。じゃあ、早速……」

 ピンポーン。

 俺が最後の一文を終える前に、シンプルなドアベルが家じゅうに鳴り響いた。愚民は「そうだ、うっかりしてた」 と言い残してから俺に 「失礼しますね」、や 「すぐ戻りますから」 などの社交辞令の一言も皆無のまま、すぐさま階段を駆け下りて行く。誰か大事な客でも来たのだろうか、階段から転げ散るような音が聞こえた。俺もこの部屋にいると飾ってある写真がとことん目についてとてもじゃないが落ち着かないので、愚民についていく事にしよう。別に誰が来たとしても俺は見えないんだし、迷惑なんてかけるわけないだろ。な?

 俺が階段を下りている最中に何やら声が聞こえる。

「お兄ちゃん、ただいま」

「拓兄、帰ったわよ」

「うん、愛莉あいりれい、お帰り」

「家の鍵、渡し忘れるなんて酷いわ」

「ごめん! 怜! 本当にごめん! 今回は許して! この通り……」

 今にでも首が切られるのではないかというほどの懺悔の嘆きだった。

 正真正銘のチキンだった。

「で、でもお兄ちゃんが家にいたから、良しにしてあげようよ、ね? お姉ちゃん」

 どうやらデータに乗っていた妹が二人、同時の帰宅のようだ。最早太陽が眠そうにオレンジ色になっている時刻に帰ってくるとは、部活でもしていたのだろうか。しかしながら、ホワイトデーの的となる美少女には興味津々にならざるを得ない。

 そう考えながら俺が階段から下りて玄関の方向に振り向くと……

 いたのだ。

 そう、写真で見たあの絶景の美女と美少女が。

 しかも生制服姿!

 そう。

 俺は飛んださ。

 羽も持たずまま、足の筋肉に身を任せてピョーンと。

「あれ? 今揺たわよ」

「うん? そう? 怜お姉ちゃん」

「地震かしら? でも 『ドスッ』 って聞こえたような」

「多分気のせいじゃない、お姉ちゃん」

 愚民は油が足りないロボットのように首を 『ギギギ……』 とでも鳴らすかのように俺の方に向けた。

 鼻の下を思いっきり伸ばした俺の満面の笑みを見た愚民は引きつった顔のまま俺にゆっくり駆け寄った。

 そして俺の耳に囁くようにする。

「やあ! 愚民」

「『やあ!』 じゃないですよ! 部屋に戻ってて下さい!」

「いいじゃないか、愚民。別にやましいもの見てるわけじゃないんだし」

「やましいもなにも鼻の下伸ばした顔でそんなこと言われても説得力ありませんよ!」

「俺も一応健全な男子だぞ? ピチピチの美少女二人を目の前に鼻の下を伸ばすのが常識だろう。違うか?」

「僕に同意を求めないでください。大体アモルさんキューピッドじゃないですか!」

「おお、我が愚民よ、短い間で口が達者になったな、褒めてつかわすぞ。がっはっは!」

「どこかの大名みたいに褒めなくていいから、部屋に戻って下さい!」

「わかった、わかったから、押すな」

 愚民が俺を階段の上へ押し上げようとした時、靴を履き替え終えたらしいキュートで可愛い方の美少女が俺たち…… もとい愚民に声をかけた。

 愚民は 「しまった」 と小言で呟いたが、この愛莉という美少女は続ける。

「お兄ちゃん…… 大丈夫?」

 この儚いツインテールの美少女に上目づかいで 「大丈夫?」 だと! くそ、羨ましい! 愚民ごときにこんな顔を見せるなんて、羨ましすぎるぞ、愚民!

 しかし、愚民は不思議そうなツラ構えだ、今にでも頭の上に無数のはてなマークが出てきそうだな。このアホな面構えが愚民に一番フィットしている。笑えるな。

「え?」

「どこか具合悪いの?」

「い、いや、別に悪くは無いけど……」

「じゃあ、階段に手を当てて何やってるの?」

「いや、その、え?」

 怜は人差し指を額に押しつけながら、それは長い溜息をついた。

「愛莉、お兄ちゃんは変人だから考えなくてもいいわ」

「そう? わかったよ、お姉ちゃん!」

 愚民の俺を押す力が弱まっていた。何やら空気が重いぞ。それほどまでにこの美少女姉妹の言葉が愚民のミジンコ級に貧弱な心を切りさいたのだろうか。

 俺は振り返り、出来る限り透き通った目で愚民を見つめながら、肩に手をポン、と置いた。

「愚民、堪忍な」

「…………」

「俺もな、お前の気持ちがよくわかるよ」

「アモルさん……」

「こんな美少女達にふんどし一枚で町を 『ウンババ、ウンババ』 叫びながら一周する変態呼ばわりされたら、例えお前じゃなくても傷ついたさ」

「……アモルさんの方が酷いです……」

「いや、大丈夫だ。言わなくてもわかっているぞ、愚民」

「別に何か言おうとした訳じゃ……」

「お前がどんなに人間の道を外れようと! お前がこの美少女達に見放されて、誰にも話し相手になってもらえず、最終的にウーパールーパーと話すために日夜研究を続けるような人間になったとしても! この偉大なるキューピッドである俺が、せめてお前の人生で唯一名を刻むことが出来るであろう彼女を探してやる。安心しろ」

「……なんか心に引っ掛かりますけど、有難うございます! 僕、頑張ります!」

 愛莉は一人で勝手に階段へ向かって感謝激励している兄を見て「お姉ちゃん、怖いよ……」と呟いていた。そして、そのお姉ちゃん、怜は自分より格段に背が低い妹の目を、両手で覆うようにしてから「愛莉、見ちゃだめよ!」と、あたかも自分の子どもを呪いのビデオテープをセットした時にテレビから出てくる長髪の女性から守ろうとする母親、的なオーラを醸し出していた。

「そうだ! ポジティブに行かなきゃだめだ!」

「そ、そうですよね!」

「そうだ、愚民!」

「うん、ポジティブです!」

「ああ、すまん、説明し忘れたが、俺はお前にしか見えない」

「それをまず言ってくれ―――――――!」

 一部始終を見ていた美少女姉妹は突然叫び出した愚民を見て、仲良く廊下の隅でひっそりと泣いていた。愛莉にいたっては 「拓哉お兄ちゃんはもう愛莉たちの知っているお兄ちゃんじゃ、無くなっちゃったんだね……」 と哀愁を込めた一句を呟やき、それに答えるように怜が 「拓兄は今まで良くやってくれたわ、愛莉。もうこれで十分……」 とささやいた後に清々しいほどの目で何やら遠いものを見つめていた。

 本庄家族が崩壊した瞬間だった。

どーも、はるまきです!

新しいキャラも出てきて、物語も少しづつ進行していることを実感してたりしている今日この頃。皆様から読んでいただいているんだなあということをアクセス数と共にしみじみと噛みしめています。

よろしければ感想と評価を置いて行っていただければ幸いです!

これからもぜひ読んでいってくださいね!

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