シーン24!
天井を見上げていた俺は知る由もなかった。
しかし、俺はこの質問に対する答えを持っている。
悩む必要はない。
もったいぶった理屈を並べる必要もない。
「……分からない」
今の俺にはそう答えるしかない。
逃げているといわれたらそこまでだろう。
これはバックログあり、セーブあり、ロードありのゲームじゃない。リアルの恋愛だ。
人の心を操ることを軽率に決定することは。
俺にはまだ無理だ。
「そっか」
あっけのない返答だった。
もう予想していたかのように。
「あーあ! やっぱり、アモルちゃんは優しいや!」
愛莉も床に大の字で横たわる。
いきなり寝転がったので、バタン、と音が鳴ってしまい、そして、まだ掃除されていないのでほこりが舞ってしまったが、誰も気に掛けなかった。
「お姉ちゃんも遠山さんにも矢を撃ちたくないんだもんね! 絶対手っ取り早いのに」
「…………」
返す言葉がなかった。
それは裏を返せば、俺が優柔不断ということなのだから。
それは裏を返せば、俺が責任から逃れている、ということなのだから。
「じゃあ、愛莉そろそろ、おねむの時間だから、部屋に戻るね!」
「……ああ」
床の振動から愛莉が遠ざかって歩いていくのが分かる。
見て確認することもできただろうが、何故かその気がしなかった。
愛莉の背中を見るのが怖かったのかもしれない。
なぜなら、実の姉の人生に関わる決断から逃れたという、嫌悪感が間違いなく俺の中にあったからだ。
「でも、最後にこんな優しいキューピッドさんに、愛莉、一つだけいいこと教えてあげる!」
「何だ?」
床の振動から、愛莉ちゃんが止まったことが分かった。
だが、俺は依然として天井を見上げたままだ。
「優しいおじさんから聞いた話。明日、遠山さん、怜お姉ちゃんに全部話すつもりらしいよ。結婚のこととか、クリスタルチルドレンとか、全部」
だからさ、愛莉はそう前置きをしてから続ける。
「タイムリミットは明日だよ、アモルちゃん。じゃあね! お休み!」
そして、屋根裏は俺のプライベートスペースに元通り。
しかし、俺は元通りになれなかった。
タイムリミットは明日。
俺は無意識のうちにさっきの質問の答えを模索していた。
『遠山一途を鉛の矢で撃つか、撃たないか』




